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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第7章
211/260

第211話 自腹

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 セコンドの言ったように、ミョーワの兵達は最後の意地を見せミョーワ市民がルディチに避難し終えるまで帝国の攻撃に対してしのぎ切ってみせた。

 ティノの誘導によってルディチの領内に入った市民達は、以前リンカン王国が支配していた時はイチュウの南にミリキャンピという比較的大きな町が存在していた場所に集められていた。

 色々な国同士の争いの戦地になる事が多かった為、今では荒廃した状態になっており町と呼べる状態ではない。

 しかし、この町がルディチにとって一番ミョーワに近い領土になっている。

 ミョーワの地に近い方が、避難してきたミョーワ市民にとって気分的にも気候的にも望ましいという事からこの場所を提供する事になったのである。

 帝国兵によって多くの市民が殺された為、大きめの町一つ分ぐらいの人間しか残っていなかったので、ここの広さが適しているのではないかと言う理由もあった。

 ルディチ王国の宰相をしているアドリアーノに会って、報告だけ取り敢えずしておいた。


「ここは以前町があった場所だ。取り敢えず人が住めるように幾つかの建物を作って置いた」


 ティノは避難してきたミョーワ市民の代表者の男に対して説明をした。

 ミョーワの市民たちの希望に合わせたこの場所に市民たちを住まわせる事にしたティノは、魔法によって集団で住める幾つかの建物を作っておいた。


「住む場所は問題無いようですが、食事に関してはどうしたら良いのでしょうか?」


 人数が少し多いので若干スペース的に狭いようだが、何とか市民達が全員建物に入る事が出来た。

 近くの森に行けば木が手に入るので、少しずつ家族ごとの家を建てて行くように言っておいた。

 ルディチの国には、この大陸の他国とは違い獣人族や魔人族が他の大陸から住む場所を求めて来るので、ここの場所にも労働者として送る事は伝えてある。

 ミョーワの市民は人族至上主義という考えがそれ程強くないのか、その事を伝えても別段反対するような事は無かった。

 もしかしたらわがままが言える立場にないと思っているのかもしれない。

 町づくりに関しては、ミョーワ市民の意見を受けて代表者が指示を出すように言っておいた。

 建物の事は一応問題無いようになったが、代表者が言ったように食べ物に関してはまだ解決していない。


「その事に関してだが、冒険者ギルドに食材の運搬を頼んでおくつもりだ」


「食材の運搬ですか?」


「あぁ、魔物の肉などを運んでもらえるように手配しておいた」


 食事の事もすぐに思いついていたティノは、ルディチ王都にあるギルドのマスターであるブルーノに依頼をしておいたのだった。


「しかし、我々は依頼に対しての報酬を支払う事が出来ないのですが……」


「その事なら心配するな。報酬はルディチの国が払う。宰相からの了承も得ている」


 逃走に必死で、必要最低限の衣装しか持って来ていなかったミョーワの市民たちは報酬を支払う事など出来ない。

 その事も分かっていたので、報酬の支払いに関しても手配しておいたことを代表者に告げた。


「この国はどうしてここまで我々にしてくれるのですか?」


「ここの国王はお人好しだからだよ。国が請け負ってくれるって言うんだから、お前たちは気にせずここを良い町にして行く事を考えたらいい」


「……ありがたい。ここをミョーワ以上に出来るように頑張ります」


 言ってみればよそ者の自分達を、予想以上に手厚く受け入れてくれるこの国に対して代表者の男は感激をしているように話した。

 この男も昔は兵として勤めていたが片足を失い、義足で生活をする事を余儀なくされた。

 この逃走した市民の中で数少ない若い男だという事で代表者に選ばれたが、この事で足を失ってから何となく生きて来たような気持ちから、新しく目標が出来たようである。


「あぁ、皆と相談してがんばってくれ」


 やる気が出たような男に声をかけて、ティノは一旦王都に転移していった。






◆◆◆◆◆


「おう! 来たか、ティノ……」


 王都のギルドに来たティノは、約束通りギルマスのブルーノに話しておいた依頼の実行を頼みに来た。


「昨日言っておいた件だが、予定通り始めてくれるか?」


「あぁ、分かった」


 昨日の内に話していたので、簡単な言葉を交わしただけでブルーノは了承したのだった。


「それよりも良いのか?」


「何がだ?」


 ティノはブルーノからの問いかけの意味が分からず、質問し返した。


「態々自腹(・・)切って依頼するなんてお前に何の得があるんだ?」


 そう、ブルーノが言ったように代表の男に言ったのは一部事実とは違う。

 ギルドへの依頼は国が支払うのではなく、実際はティノが支払う事になっていた。


「この国も今回のハンソーの援軍で結構な資金が出て行っている。町一つ分の人数をいきなり養うなんて資金は出せないだろ?」


「確かにそうだが、受け入れなければ良いんじゃねえか?」


「それは勿体ない」


「勿体ない?」


「この国はいずれ帝国と大陸の覇権を争う事になるだろう……。その時少しでもこの国を守るために戦う人間がいた方が良い。だからミョーワの市民は手に入れておくんだ」


 今回の戦いで大量の人間を強制的に奴隷にして喪失した帝国は、恐らくしばらくの間は大人しくなるだろう。

 しかし、野心あふれる皇帝ヴィーゴは、その内ルディチを相手に戦いを挑んでくるのは明白である。

 その時の為に、ティノは今から少しでもルディチに有利になるように行動しておこうと考えているのである。


「一応結構な金は持っている。1年程度なら何とか支払えるさ。……てな訳で依頼の方は頼んだ」


「あぁ、分ったよ」


 話がまとまったところで、ティノはギルドから出て久々に家に帰って行った。


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