第20話 依頼
巨大ミミズをあっさりと倒したティノは、2人に挨拶をして通り過ぎようと思い、歩き出した。
「……それで「すごい!!」は?」
ティノが、「それでは」の1言を言い切る前に、貴族と思われる少年が、ティノに近寄りキラキラした目で見上げてきた。
「あのAランク魔物を一瞬で倒すなんて、すごいよ!!」
「え!? いや、どうも……」
ティノが先へ進もうとする前に立ちはだかり、少年は怪我から治ったばかりなのに大はしゃぎした。
「ありがとうございました! さぞかし名のある冒険者なのでしょう?」
「え!? いや、その……」
少年だけでなく、配下の騎士らしき男性もティノの前に来て話してきた。
「貴殿のような方に申し訳ないのだが、我々の護衛についてきて貰えないだろうか?」
「いや、その……」
カルロが待つトウダイ村に、急いで帰りたいティノはさっさと断って行こうとした。
しかし、次の少年の言葉に足が止まった。
「私はハンソー王国の国王、フランコ・ディ・ハンソーの3男、アルミロ・ディ・ハンソーと申します。是非私を王都まで護衛して頂きたい!」
貴族だとは思ったが、まさか王族だとは思わなかった。
「護衛についてきて頂けるのであれば、王国最高の再生魔法使いにより、貴殿の手足の再生を無償で行わせて頂きます」
この発言を聞いてティノは迷った。
カルロのもとに帰りたいが、手足を無償で治せるのはありがたい。
ティノはまあまあ資金があるが、全財産使っても膝から下が無いティノでは、脛あたり迄しか治せないだろう。
資金を稼ぐのにも苦労するし、自分で治すにもとんでもない時間が掛かる。
それを考えたら、一国の王族が所有する再生魔法使いによる治療は、喉から手が出るほど望ましい。
「……わかりました。王都までお付き合い致します」
そもそも他国とは言え、王族の依頼を断ると後で面倒な事になりそうなので、ティノは受け入れることにした。
決して無償治療に引かれたわけではない。
もう一度言う、決して無償治療に引かれたわけではない。
「ところで王子、私はリンカン王国の者なので分からないのですが、王都まではどれくらい掛かりますか?」
依頼を受けるにしても、そもそも他国は初めてのティノは、この国の王都までの距離が分からなかった。
「リンカン王国の方でしたか……、王都チョーヒヤまでは1ヶ月位だと思います」
ティノの質問に答えたのは、王子の護衛騎士のリヴィオである。
リヴィオも所々怪我をしていたので、ティノの魔法の指輪から回復薬を渡したので回復している。
「1ヶ月ですか……」
ティノが思っていたより遠かった。
往復でも2ヶ月、更に手足再生に1ヶ月位見積もって、早くても3ヶ月はトウダイ村に帰れそうにない。
カルロはまだ5才、これまで5日以上離れた事はない。
依頼を取り消し、戻りたい気持ちになって来たが、この体を治してから帰った方が、カルロを守り続けるには良いと思い、2人を連れて王都を目指し歩き始めた。
1日野宿をして翌朝、ティノを助けてくれたヴィットリオの住む町、ジョセンに戻ってきた。
「おっ!? ティノじゃねえか!? もう戻ってきたのか? もしかしてその子がお前の子か!?」
ジョセンに着いて、すぐにヴィットリオに会いに行ったら、当然の質問攻めにあうティノだった。
流れで書いていたら2章がティノの過去になっていた。
まっいっか・・・




