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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第4章
100/260

第100話 メモ

 翌日もティノは、リューキ王国内の研究資料の盗難事件の犯人の手がかりを探しに、リューキ王城内に潜入していた。


『せめて犯人の名前くらい分かればな……』


 犯人の捜索を続けている兵士達もこの極秘研究の全貌は知らされていないらしく、犯人の顔は分かっていても、名前までは知らされていないようだ。

 城内を気配を消して影から影に移動し、ティノは研究を行っていたであろう地下施設に足を踏み入れた。


「くっ!? ひどいな……」


 その地下施設は様々な生物で実験をしたらしく、魔石の暴発によって生まれた膨大な魔力に肉体が耐えられなかったのか、惨たらしい姿の生物の死骸が大量に転がっていて、その死骸の血や腐臭でものすごい惨状になっていた。

 更にその中には、この研究を行っていたであろう研究者達の死体も、血の海の中に転がった状態で見つかった。

 どうやら犯人が研究資料が完成したのを確認した後、殺害したのだろう。


「……これは?」


 地下施設は幾つかの部屋に別れており、ティノがその施設内を歩き回っていると、書類らしき物が乱雑に置かれた机が見つかった。

 その中の書類のメモ書きに、幾つかの言葉が書かれていた。


「……!? 何でこんなメモが!?」


 書かれていた単語に覚えがあるティノは、犯人の事がますます分からなくなっていた。

 しかし、犯人の行き先が分かっただけでも良しとして、ティノは城内から脱出し、犯人が向かったと思われる町に転移して行った。






────────────────────


 今日は校内戦の決勝戦の日、前日は早めに睡眠に入ったマルコはぐっすりと眠れた為、朝早めに目が覚めた。


「ふぁ~……、早いな?」


 マルコが寮の裏庭で軽く体を動かしていたら、ロメオが欠伸をしつつ現れた。


「今日は決勝戦だからね。気合い入れて挑まないと……」


 眠そうな顔のロメオに、マルコは少し苦笑しながら言葉を返した。


「……気合い入れすぎて相手を殺すなよ」


 ロメオはマルコの実力なら決勝戦も余裕だと思っていて、そんなマルコが気合い入れて戦うなんて、相手が可哀想だと思いつつ助言した。


「当たり前だろ」


 マルコはそれがロメオのジョークだと思い、笑顔で返した。


「ほどほどに頑張れよ。客席で見てるから……」


 そう言ってロメオは寮の中に戻っていった。


「うん、頑張るよ」


 ロメオの背中に向かって、マルコは呟いた。


◆◆◆◆◆


“ワアアアーーー!!!”


 会場は満員で、立ち見客までいる状態だった。

 会場に来た市民は、お祭り騒ぎも今日が最後と言わんばかりに、テンションがかなり高い様子だ。


【只今より、ジョセン学校初等部の校内戦の決勝戦を行います!】


 会場が騒がしいまま、司会の選手紹介が始まった。


【東口から登場したのはマルコ選手です! 何と1年生! 魔法も剣術も武術も素晴らしい今回優勝候補筆頭と言われていたマルチェッラ選手を破っての決勝になります!】


“ワアアアーーー!!!”


 例年にない新入生の決勝進出に、観客達は歓声でマルコを迎え入れた。


【続きまして西口から登場……】


 司会がマルコの対戦相手を紹介しようとするが、西口から出てこない為、言葉が止まってしまった。


【……カルミネ選手? カルミネ選手はいませんか?】


 少ししても現れない相手に、とうとう司会は会場内に呼び掛け始めた。


「…………?」


 マルコもこの状況が分からず、ただ黙って西口を見つめていた。


“ズドンッ!!”


「!!?」


 マルコが見つめていた先が、突如として爆発を起こした。


「何事……」


“ドゴンッ!!”


 審判を務める校長が、その爆発の原因を確認しようと近寄った矢先、言葉の途中で強力な衝撃を受けて吹き飛ばされた。


「校長!!? 大丈夫ですか!!?」


「グッ!? 油断したわい……」


 マルコは吹き飛ばされて倒れている校長に近寄り、上半身を抱き起こした。

 校長はとっさに両腕で攻撃を防いだようだが、強力な衝撃によって両手の骨がグチャグチャになっていた。


「………………!!? 何だ!!? あれは……」


 爆発によって起きた煙が収まり、爆発を起こした原因が姿を表し、その姿にマルコは驚愕の表情になった。


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