第99話 リューキ王国
ケトウ大陸北部の国、デンオー帝国の北に位置するリューキ王国と呼ばれる国がある。
デンオー帝国との間には、とてつもなく険しい山脈によって隔たれており、ケトウ大陸で現在起こる統一戦争において全く関わりのない状態にある。
この山脈を越えて攻め込むメリットは、デンオー帝国側には全く無い。
山脈を越える為には、どれ程の兵士を無駄になるか分からない為である。
そんなリューキ王国では、現在ある問題が起きていた。
「居たか?」
「いいえ、こちらには見つかりません!」
沢山の王国兵が、場内を慌てた様子で動き回っていた。
「くそっ!! あの野郎一体どこに行きやがった!!」
どうやら、ある人物を探して動き回っているらしい。
「何としても探せ!! 奴から研究資料を取り返せ!!」
「はいっ!!」
そのような会話の後、また兵士達は探索に動き回り出した。
『…………何が有ったんだ?』
ティノは、そのような慌ただしい城内に潜入していた。
何故リューキ王国に来ているかと言うと、この国はケトウ大陸の北部を統一してから、あるおかしな研究に力を入れていたのを知っていた為で、その研究の動きが気になり、ちょくちょく潜入していたのだが、久々来た城内で現在兵士達が慌てている状態に巡り会った。
ケトウ大陸北部のリューキ王国は、国土の北半分は冬になると豪雪地帯の為、人が住むには険しい。
領土的には現在最大ながら半分程しか人が住めない為、苦しい財政状況が続いている。
山脈を越えて南のデンオー帝国へ進軍しようにも数が揃わず、海から攻めようにもデンオー帝国の海岸は潜入しずらい地形の為、ある考えを研究するに至った。
〔人造魔物製造研究〕
魔石の内包された魔力を暴発させ、その魔力によって人を変態させ、破壊を尽くす化け物を造り出そうとする研究である。
『……まさか、研究が盗まれたのか?』
リューキ王国は多くの奴隷に魔石を持たせ、険しいとは言え海岸から進入させ、魔物化させてデンオー帝国の破壊を計画していた。
小さい魔石を使って魔力の暴発をさせる魔法に成功し、奴隷を送る算段と暴発させる魔法を使わせる魔法使いの選抜が進み、そろそろ計画の実行に移そうといった状況で現在の研究資料の盗難が起きていた。
『一体誰が……』
心の中でこのような大事件を起こした犯人を想像しつつ、このまま城内に留まる事を危険に思ったティノは、城内から脱出した。
ティノ自身この研究が広がればケトウ大陸だけでなく、世界に被害をもたらすと可能性がある為、犯人の行方を探し回ったのだが、見つけることは出来ずトウダイに戻っていった。
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「……私も本気を出さなきゃならないみたいね」
そう呟くと、マルチェッラはマルコに向けた両手に魔力を練り始めた。
“タンッ!”
マルチェッラの魔力が溜まるまでの隙に、マルコは攻撃を加えようと一足飛びで距離を積めていった。
「ハーッ!!」
しかしマルコが木剣を振りかぶった瞬間、マルチェッラは溜まった魔力を使ってマルコに魔法を放って来た。
「!!?」
火の玉、水球、光線、電撃、風刃、岩石弾と全属性の攻撃魔法が、無数にマルコに向かって襲いかかった。
因みに、闇魔法は戦闘においての攻撃魔法が存在しないため、他の6種類の魔法で全属性である。
「くっ!?」
マルコにこの大会始まって、初の焦りが生まれた。
身体強化で加速した状態でも躱しきれない数の魔法が向かって来た為、木剣で弾かなくてはならない状態だった。
「すごい! これだけの数を防ぐだなんて……」
今までとは違い多少威力を抑えた魔法とは言え、連射速度に絶対の自身があったマルチェッラは、その攻撃に対応しているマルコに感嘆の声をあげた。
「……でも、ここまでよ! ハッ!」
マルチェッラの連射の速度が、気合いと共に僅かに早まり、マルコはギリギリの回避と防御になっていった。
「……このままじゃ駄目だな」
とうとう服をかすめるようになり、マルコは呟いた。
「氷壁!!」
“パキパキッ!!”
マルコに飛んできた魔法の全てを弾き飛ばす、強固な氷の壁が出現した。
「……えっ!!?」
氷壁によって防がれたマルチェッラは、驚きで魔法を放つのを止め、固まっていた。
「……すごいのぉ、水魔法上級の氷魔法を初等部の学生、しかも1年生が放つとは……」
審判を務める校長も、この事態に驚きで声が出てしまった。
「……そんな、でもまだ!」
意識を戦闘に戻したマルチェッラは、諦めまいと魔法の連射を再開した。
「残念ですが僕の勝ちです!」
マルチェッラは氷壁に向かって魔法を放ったが、マルコは氷壁の裏から気配を消して、高速移動でマルチェッラの左背後から剣を振り、首元で止めた状態になった。
「……勝者マルコ!!」
“ワアアアーーー!!!”
校長の言葉が響き渡り、会場の観客は割れんばかりの歓声を上げた。
「……負けたわ。決勝も頑張りなさいよ!」
「はい。ありがとうございました」
短いながらもマルコにエールを送って、マルチェッラは歩いていった。
それに対して、マルコも久々に本気を出せた礼を、背中を向けて歩いていくマルチェッラに告げたのだった。




