ライフタイム
耀が倒れてから三日。
九十九学園の近くにある大病院の一室にて。
「……原因は超活性、ですか?」
一人呼び出された剛羽は腑に落ちない様子でそう返した。
「そう、砕球やってる子なら聞いたことくらいはあるかな?」
白髪の好好爺然とした医者は、落ち着いた声音で告げる。
超活性。《心力》に秀でた者が力を解放したときの身体的変化を指す言葉だ。
耀の髪が金茶色から紅色に変化したり、剛羽の目の瞳孔が十時に開いたりするのがそれである――が。
「その自分で言うのもアレですけど、超活性って要は才能の一つみたいなものですよね?」
「そうだね。君の言うとおり、超活性は「ゾーンに入る」とも言い換えられるよ。一時的に体内の《心力》を普段以上に引き出せるってことだね」
「だったら、今回神動が倒れたこととどんな関係が……?」
「普通は関係ないね。初めて超活性を体験した選手が興奮状態になるっていうのは、僕も聞いたことがあるけど」
思い当たる節があるのか、剛羽は視線を泳がせる。
「でも、耀ちゃんの場合は少し話が違うみたいなんだ。簡単に言うなら自分の《心力》に蝕まれている感じかな」
「それって、神動が未熟ってことですか?」
「君はそう思うかい?」
「……思いません」
一ヶ月以上にも渡って行われた基礎練習の反復。
訓練用人形との実践練習。
大会での優勝。
彼女はこの数カ月で十分過ぎるくらい積み上げてきた。文句なしの出来だ。
「そうだね。今回のケースは耀ちゃんの未熟さのせいじゃない。問題なのは彼女の中にある《心力》の方だ。彼女のそれ、強過ぎるんだよ」
「普通じゃ考えられないくらいってことですか?」
「天才を基準にしても考えられないくらいだ。力が強過ぎて器が壊れるなんてあり得ない。それくらい耀ちゃんの中で暴れている《心力》は――危険だ」
危険。それは砕球というスポーツから遠く、関係のない言葉のはずだ。
「それで、神動の容体は?」
「こういうことは普通、本人とか家族にしか言わないんだけどね。君には……うん」
そこで老人は一瞬間を置いてから辛そうに、しかし淡々と続ける。
「残念ながら回復の見込みはない。もってあと一ヶ月だ」
ガタンと椅子を倒すほどの勢いで立ち上がる剛羽。
目を見開き、爪が食い込んでぶるぶると震えるほど拳を握り締める。
「《心力》を消したり食ったりする人たちに治療してもらったんだ……多少荒いやつね。途中で僕、ゲロっちゃったよ」
老人はコップを口元に運び、それからふうと深呼吸してから続ける。
「耀ちゃん、意識はもう戻ってるんだ。話相手になってあげなさい」




