光と影
決闘翌日、土曜日。
耀や誠人たち四軍は、九十九学園の第三闘技場で試合形式の練習をしていた。
四軍は基本的に二週間に一回のペースで三軍と合同練習をするが、今回は一軍が遠征に出ているため、特別に四軍だけでの使用が許されたのだ。
「ちょっと、もう少し粘ってもらわないと練習になりません」
「キミ、今のはもっと早くカバーに回らないと」
次々と注文を出す耀と誠人。
普段から剛羽や優那と練習しているため、他の四軍の選手たちとは数段レベルが違う。
誠人を見下していた選手たちが、彼の言葉に耳を傾けているほどだ。
と、そんなとき。
「――全員注目」
四軍の集まる第三闘技場に現れたのは、本来ここにいないはずの人物だった。
耀たちの前に意外な人物がやってきた頃。
剛羽たち九十九チームの一軍は、遠征用の大型バスで東卿都に来ていた。
「うぇ……」
「閑花、大丈夫か?」
対戦校に到着しバスから降りたところで、剛羽は顔色が悪く今にも嘔吐しそうな閑花の背中を擦る。
九十九のチームに入ってから県外遠征には何度も行っているが、彼女の世話をするのはチーム内ではお馴染みの光景となっていた。
「なんだなんだあ、和姫、まだ乗り物酔い治らねえの?」
「まだ、って……乗り物酔いが簡単に治ったら苦労しませんよ!」
後輩をからかいにきた《道交無視》駿牙轟に、閑花は手をぶんぶん振りながら抗議する。
「にしても、蓮もたいへんだなあ」
「毎度ありがとね」
「吐かれて自分に掛かったら嫌なだけだ」
「ぶははは、確かにそうだな!」「ヒドい!」
と、談笑していたところで、副主将の《不撓不屈》山伏弁慶から召集が掛かった。
今日の予定を確認した後、それぞれが荷物をもって相手の試合用闘技場に向かって敷地内を進む。
「そう言えば、九十九先輩がいないな」
「義経先輩なら二試合目から合流するって聞いたよ……って、蓮くん、あからさまにイラ付いた顔しないで! 怖いから!」
とそこで、剛羽はエナメルバッグに突っ込んでおいた《IKUSA》が振動したことに気付き、徐に端末を取り出して確認し――急にUターンして走り出した!?
「あのヘタレ野郎、なに考えてんだ……」
「ちょ、え、蓮くん!? どこ行くの!?」
「九十九学園に戻る! 先輩たちに伝えといてくれ!」
「戻るって、試合は!? っておい!」
早くも背中が小さく見えるほど遠くに走り去ってしまった剛羽。
閑花は唖然とした表情でそれを見送ることしかできなかった。
剛羽が遠征先から飛び出したその頃。
九十九学園、第三闘技場にて。
九十九義経は、眼前で伏臥する耀と誠人を嘲笑う。
「さっきの威勢はどこにいったんだい? このままじゃ君たち――退学だよ?」




