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砕球!!  作者: 河越横町
34/54

どれだけ無様でも――

寝るまでが20日だ!

33話、少し書き直しました汗


 時間は遡って、入部試験後のある日。


「達花、お前には動手があってると思う」


 練習が一段落付いたところで、剛羽は空き地の脇で盛大にリバースしている誠人にそう言った。


「僕が……ぅおえ……動手?」


「ああ、そうだ。入部試験のとき、砂刀チームの選手使って猪勢を戦死させただろ? あれは回りがよく見えてないとできない。他のバックナンバー観たけど、達花はどんな状況でも視野を広く保ててると思う」


「っ~~~~~~。ふ、そうさ! 僕は状況判断能力が群を抜いて――」


「つーか、なんで今まで球砕手とか守手やってたんだよ」


 元闘王学園の選手に褒められて興奮してきた誠人の言葉を遮り。

 剛羽は純粋な疑問をぶつけてみる。


「それはもちろん……球砕手が一番かっこいいからだ。点取り屋は目立つしな」


「達花、単純な戦闘力は平均以下なんだから、個人能力がモノ言うポジションはきついただろ。自分の長所を活かしたポジションで戦うほうが活躍できるぞ」


「それで動手か……よし、やってやろうじゃないか!」


「よし、そうと決まれば今日から体力づくりの強度を上げるぞ」


「え、いや、ちょっと待ってくれ、蓮。だって今でも十分、そう毎日フルマラソン以上の距離を――」


「動手ってのは社畜だ。チームの誰よりも戦場を駆け回る、頭を回す……ハードワークが基本。できて当然。完遂してこそ評価される世界だ。途中でガス欠しようものなら各方面から罵声を浴びせられる」


「…………やっぱり、僕、他のポジションに――」


「さあ、休んでなんかいられないぞ、達花! 大丈夫だ、俺もできる限り付き合うからさ」


「だ、誰か助けてぇえええええ!」


「まあ待て。ちょっと待って。逃げるな逃げるな」


 逃走を企てる誠人だが、剛羽にがしっと肩を掴まれる。

 足の裏から根が生えたかのように動けない。もう逃げられない。


「もうなるようになれえ!」


「その意気だ。日本一の動手目指そうぜ」


 と、キメ顔でぐっと親指だけ立てる剛羽に。


「こうなったら世界一の動手になってやるう!」


 誠人はやけくそ気味に叫んで答えた……《征維義衛隊》の夢はどうした。


 ――――――


 耀に襲われている味方の球操手のもとへ急行しようとした守手の少年――コスチュームはゴーレム――は、突如視界が強く揺さぶられた。

 半壊した家の影から絶妙なタイミングで飛び出してきた誠人が、不意打ちでタックルを決めたのだ。


(入部試験のときよりキレが上がってる……ちゃんと練習してるんだな)


 ラグビー選手のようなタックルで相手を転倒させた誠人に、剛羽は内心で賛辞を述べる。

 相手の守手を足止めし、球砕手――耀を援護するのも数ある動手の役割のうちの一つだ。


「くっ、しつこい!」


「それで結構! 動手にとってはこの上ない褒め言葉さ!」


 相手の守手は全力で走って振り切ろうとするが、誠人がぴたりと張り付いてマークしてくる。

 その間に、耀がまたも相手の球を粉砕し二点を追加した。これは誠人のプレーが生んだ得点だ。

 そして遂に、業を煮やした相手の守手が強引な正面突破を敢行する。相手側としては無駄な戦闘は避けたかったが、そうこう言っていられない。

 誠人と相手の守手の近接戦が始まった。


「おい、剛羽、アレって……」


 炎児は誠人の手に収まる細長い物体を凝視する。


「ああ、そうだ。達花が使ってるのは補助武器庫マルチホルダーだ。市販の一番安いやつな」


 補助武器庫。設計者によって予め登録されている剣や盾、銃などの武器を、使用者の《心力》を勝手に引き出して錬成してくれる代物だ。

 使用者本人の意思命令が下されると同時に、ある程度の技術が要求される武器錬成をサポートしてくれる。

 小学生ぐらいだと《心力》で武器をつくったりするのは簡単なことではないので、特に武器錬成に向いている系統――緑型――の子どもはこの補助武器庫を愛用するのだ。


「でもホルダーって小学生で卒業するやつだろ? なんでそんなもん……」


 そう、《心力》の練度が未熟な小学生たちをサポートする上で補助武器庫は欠かせないものだが、ある程度のレベルになってくると物足りなさを感じてしまうのだ。


 その具体的な理由の一つは、補助武器庫が錬成する得物の耐久度。

 使用者の《心力》を勝手に引き出す構造状、安全面を考慮して引き出す《心力》の量はあまり多くない。それはつまり、得物の威力が抑制されるということと同義だ。そんな鈍らでは上位陣に到底太刀打ちできない。

 そして二つ目は、補助武器庫の錬成速度。

 遅くはないが速くもなく、自分で武器を錬成できるような――補助武器庫を必要としない相手には、どうしても遅れを取ってしまう。戦闘中では、一瞬の遅れが命取りだ。


 以上の理由により「補助武器庫は初心者の道具」という認識が一般的である。

 それに関しては、剛羽にも異論はない。が、あくまで一般的であって、誰にも当てはまるとは思わない。

 

 観客席向けの定点カメラに映る誠人の姿に、炎児だけでなく他の観客たちもざわめき出した。そのほとんどが、「何故、高校生が補助武器庫を使うのか?」という疑問・嘲りを含んだ言葉を口にしている。


(体裁とか格好とか、そんなものは試合じゃ役に立たない。使えるものなら小石でもなんでも使う)


 それは誠人も同じ気持ちだ。剛羽に補助武器庫を奨められた当初は、それを使うことで周りにどんな反応をされるかと気にしてしまった。


「なんだよ、小学生かよ!」


 が、今はそんな迷いはない。この小学生向けの道具を使ってでも、どんなに格好悪くても強くなると決めたのだから。


「――そうさ、これが僕のスタイルだ!」


 猛練習をしているのは耀だけではない。

 自分だって動けなくなるまで鍛錬を積んできたのだ。


 自分と耀とでは、才能の差があることは知っている。

 それがどうした。だからどうした。それくらいの理由ではあきらめられない。

 同じ四軍でしかも普段からすぐ近くで練習している耀には負けられない、負けたくない!


 その道のりが例えどれだけ無様でも。


「蓮、神動、キミたちには負けないからな!」


 誠人は手にした補助武器庫を剣に変化させ、打って出た。


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