意地
試合開始から6分経過。
戦死者11名、残り9名。
(まずい……まずいまずいまずい!)
第三位にダメージを与えたことに歓喜し気が緩んでしまった誠人は、狙撃地点で固まっていた。それ故に、避難が遅れる。
(砂刀先輩狩り損ねたし、まだろくに活躍してないぞ僕!)
一世一代の大チャンスを逃してしまったように思えた。が、まだ戦死するわけにはいかない。
誠人は苔生した倒木や木の根を跳び越えながら、目の前に垂れる蔓の根を払いのけながら、必死に足を回していた。
数メートル後ろには猛追する猪勢の姿が。
「ええい、こっちに来るな、猪勢! 僕にはまだやることがあるんだ!」
「それはこっちも同じなんだよ! だから逃げ回んじゃねえ、腰抜け達花!」
そんなことを言い合いながら、二人は密林を駆け抜ける。
「ちっ、ちょこまかと……これでも食らえ、チキン眼鏡!」「ぐはっ!?」
跳躍した猪勢は手にした大鎚を振り下ろした。するとたちまち、打点を中心に大爆発が起こり、その余波を背中に受けた誠人は近くを流れていた川に落ちる。
「銃が……銃がない!」
四つん這いになって川底を探していると、それを無様と見下ろすように猪勢が現れた。
「驚いたろ、データ男。この試験のためにずっと磨いてきたんだ。つまり、これが初お披露目ってことだな、喜べ」
猪勢は何度も大鎚を振り下ろし、その爆撃をもって誠人を追い詰めていく。
舞い上がった水を浴びた眼鏡な少年はずぶ濡れだ。
「しぶてえな。いい加減落ちろよ」
なおも逃げようとする誠人に、溜息をもらす猪勢。
とはいえ、狩る側と狩られる側の構図は完全に出来上がっている。後は時間の問題だ。
「ほら、今度は避けるなよ!」
「――避けるか! キミはここで止める」
そこで突然、また逃げると思われていた誠人は、相手の予測を裏切るように切り返し、猪勢の下半身に肩からぶつかっていく。
逃走するだろうという相手の予測を裏切る反撃。
加えて、力ではなく技術のあるタックルにより、自分よりも大きな相手の体勢を崩す。
しかし、そこは流石期待の一年生。
よろめきはしたが、猪勢はギリギリで踏ん張り転倒は免れる。
「くそ……へ、でも、止めてどうすんだよ? 雑魚すけのお前にここからなにができるん――ぐッ!?」
瞬間、猪勢の左肩のあたりに何かが着弾、爆発する。
撃ったのは、剛羽の投剣から生き延びた砂刀チームのロケットランチャー使いだ。
剛羽の攻撃を受けて右脚が付け根からなくなっている。が、それを隣の球操手の選手が支えることで、照準の問題をクリアしている。
目下ランチャー使いの戦用複体からはそれを構成する黄光が止めどなく溢れ出し、戦死は免れられないだろう。それでも、最期に一矢報いることはできた。
チームとして敗戦しても個人の成績は考慮される。
剛羽から致命傷を受けたことにより生き延びることが不可能であることも手伝って、残りの力を使って相手選手を倒すというのは懸命な判断だ。
砂刀チームの球操手を務める選手としても、味方唯一の生き残りであるランチャー使いが戦死するまでに、少しでも敵を減らしておきたい。
「僕にだけ気を取られているからだ……戦場には四チームいるんだぞ、馬鹿め」
猪勢と戦っている最中に砂刀チームの選手たちの存在に気付いていたことが、今回の逆襲に繋がったのだ。
しかしもちろん、誠人にもリスクはある。
つまり、狙われているのは猪勢だけではないということだ。
「くそ、死に損ないの狙撃手風情が!」「させるか!」
猪勢は手にした大槌をスナップだけでチーム砂刀の球操手に向けて放り投げ、大槌を自爆させることで相手の球を三個破壊する。
球操手を狙った攻撃だったが、誠人に直前で邪魔されたため照準がずれてしまった。
「蓮、神動、ごめん……約束、守れそうにない」
スナイパーが残りの《心力》を弾丸に変えて放つと同時に、三人の戦士が退場した。
各チーム獲得点数、途中経過
1位チーム閑花7点(内訳:敵選手7人撃破=1点×7)
*チーム砂刀のランチャーさんは剛羽から受けたダメージが原因で戦死
2位チーム駿牙6点(内訳:敵球3個破壊=2点×3)
3位チーム砂刀6点(内訳:敵選手6人撃破=1点×6)
4位チーム山伏1点(内訳:敵選手1人撃=1点×1)




