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砕球!!  作者: 河越横町
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17/54

その駆り手、全てを走破する

 試合開始から4分経過。

 戦死者9名、残り11名。


『おおっと! ここでチーム駿牙がキャプテン、駿牙轟するが ごう選手も参戦だぁ!』


『九十九学園のランキング3位と4位が集結か。面白いね』


『ていうか、3ケツ! 外でやったらお縄に掛かるぞ! 《悪質運転ホットライダー》の名は伊達じゃなぁい! そして忘れてはいけません! 去年の秋から風紀部も兼任することになった砕球部期待の高一、猪勢雄大いせ ゆうだい選手。ラストイヤーに燃える木礎激破きそ げきは選手もいます! フィールド中央は大混戦だ!』


 実際のところ、剛羽の読みは決して外れていなかった。

 この場合、密林という劣悪な走路を、整備された道路のように駆け抜けてきた駿牙のドライブテクニックを褒めるべきだ。

《悪質運転》などという二つ名で呼び慕われているが、その運転技術は正確にして緻密である。


「お前が蓮剛羽か! 俺とサシでやろうぜ!」


「待て、駿牙。そいつは俺の――」


「早い者勝ちだっての、はっはっあ!」


 駿牙は味方二人を下ろしたことで軽くなったバイクをさらに加速させ、一直線で剛羽に突進する。しかし。


「――四倍削速(ディスクレスト=スクエア)」


 突如、バイクが壁にでもぶつかったかのように急減速。

 慣性が働いてドライバーである駿牙だけは前方に投げ出された。


「なっにぃいいいいい!?」


 剛羽はすれ違いざまに駿牙を腹から斬り裂き、乗り手を失ったバイクを奪取する。


「え……?」「あの阿呆め。蓮剛羽の個心技を知らないとは、準備不足が過ぎるぞ」


 あまりのあっけなさに瞠目する剛羽と、戦死した同輩をバッサリと斬り捨てる砂刀。

 いずれにせよ、九十九学園学内ランキング第4位の駿牙は文字通り出落ちした。


『すごい、強いぞ蓮選手!』


『こ、これは……コメントは控えさせてもらうよ』


『九十九先輩も思わず言葉を失ってしまっています! 恐るべし、闘王学園からの編入生!』


 駿牙を難無く撃破した剛羽はバイクを駆り、前進するように念じるとその通りに動き出した。

 何分自動二輪車になど乗ったことがなかったため上手く動かせるか不安だったが、動力は予め積んであった駿牙の《心力》で事足り、操作面では一応アクセルやブレーキなどは付いているが基本的には頭の中で思い描くだけという簡単なものだった。


「――じゃあ、続きといきますか」


「あの戯け者のようにはいかんぞ」


 キャプテンの戦死に動きが止まった猪勢たちを置き去りにして砂刀へ突進する。

 イメージ通りにバイクが動き、あっという間に距離が詰まった。

 そして、砂刀の居合い斬りを車体もろとも跳躍して回避し、空中から圧倒的質量を伴って襲い掛かる。


「俺の居合いは空にも撃てる!」


 砂刀は身体を上向けて二撃目を放つ。わずかに剣速は落ちるが、それでも目で追うだけで精一杯だ。

 耳をつんざくような爆発音。

 しかし、スポーツバイクが破壊されて発生した煙の中から、剛羽が飛び出してくる。

 目で追うことさえできれば、彼にとって回避することは不可能ではないのだ。


「来ると思ったぞ、蓮剛羽!」


 流石というべきか、砂刀は剛羽がまだ生きていること予想していたため、柄に手を添えて今か今かと待ち構えていた。

 彼我の距離十メートル弱。三十メートル以上の射程をもつ砂刀の居合い斬りにとって問題にならない間合いだ。


「準備してると思いましたよ。でもこの距離は――俺の間合いです」


 対して、急加速して落下する剛羽は、個心技を使ってさらに速く接近する――しかし、それだけでは砂刀に届かない。


「一歩及ばなかったな……斬り捨て御免!」


 万事休す。砂刀は赤型の特性を活かした渾身の居合い斬りで迎え撃つ――ことができない!?


「二倍削速(ディスクレスト=ダブル)」


 柄を握った手が、全身が、命令した通りに動いてくれないのだ。

 まったく動かないわけではない。が、一瞬の遅れが命取りになる戦闘で、今の砂刀の動作は亀如き歩みである。

 

 そして、まるで水の中で居合い斬りをするような感覚に囚われていた砂刀の目の前に剛羽が現れ、砂刀の柄に添えた右手を斬り飛ばした。

 

 一方で、利き手の肘から先を切断された砂刀は、闘王から来た少年の行動に疑問を持つ。

 何故、自分を仕留めなかったのかと。

 その無言の問いに対する答えは、倒大木でてきた檻のすぐ側から上がった発砲音。

 直後、砂刀の右脇腹が飛来した弾丸に抉り抜かれる。撃ったのは誠人だ。

 剛羽に仕留められたスナイパーの一人がドロップした長銃を使ったのだ。

 そう、剛羽の狙いは砂刀を戦死させることではなく、砂刀の動きを止めて味方に取らせることだった――しかし。


(っ、浅いか!?)


 剛羽は、目の前の剣士が利き手ではない左手で抜刀しようとしている様に目を剥く。

 先程使った相手を減速させる個心技の効果時間はたった今切れた。

 そして、何が何でも敵を斬るという相手の迫力に戦慄が走る。

 誠人の次弾を待っている余裕はない。


(許せよ、達花)


 結果、誠人の狙撃が終わるや否や、剛羽は砂刀の左手を押さえた自分の右手を支点に身体を跳ね上げ。


「これ、お返しです」


 砂刀に斬り落とされた右足の先――義足剣で、相手の首を刎ね飛ばす。


「無念」


 そして小規模な爆発とともにまた一人、戦士が退場した。


『すごいぞ、蓮選手! 駿牙選手に続き、砂刀選手も撃破だ! もう誰にも止められなぁい!』


『……惚れ惚れするね、おっと失礼』


「おいマジか、砂刀先輩まで……」


「馬鹿野郎。怯んでんじゃねえよ、猪勢」


 自分よりも個人ランキングが高い先輩二人が立て続けに撃破された。

 それを目の当たりにして怯む猪勢を、隣に立つ木礎が叱咤する。

 編入生は強い。が、やるしかない。

 二人の戦士は覚悟を決めて剛羽の前に立つ。


「逃げないんですか? みたいな顔してるな一年坊。舐めてんじゃねえぞ。手前を倒したら合格間違いなしなんだ。逃げるわけねえだろ……猪勢、雑魚は任せた」


「うっす。達花なんて速攻で片付けてすぐに援護にきますから。美味しいところ残しといてくださいよ」


 そう言って猪勢は木の檻から飛び出し、慌てて逃げ出した誠人を追い掛ける。

 第三ラウンドが始まった。


各チーム獲得点数、途中経過

 1位チーム閑花6点(内訳:敵選手6人撃破=1点×6)

 2位チーム砂刀4点(内訳:敵選手4人撃破=1点×4)

 3位チーム山伏1点(内訳:敵選手1人撃=1点×1)

 4位チーム駿牙0点


駿牙轟するが ごう

性別:男

誕生日:10月26日

年齢:16(高校2年生)

身長:170cm

ポジション:動手

好きなもの:男らしいもの、ドライブ(《闘技場》の中で)


作者コメント:仲のいい相手以外にはコミュ障になる内弁慶男子……という初期設定を持っていました。猪勢とキャラが被りますかね。ただ作者的には駿牙は明るいバカな子で、猪勢はバカに見えるけど案外キレる子です……こう書くと駿牙に同情してしまう笑



木礎撃破きそ げきは

性別:男

誕生日:9月15日

年齢:17(高校3年生)

身長:180cm

ポジション:球砕手

好きなもの:挑戦、練習、後輩


作者コメント:入部試験ではチーム事情で本職ではない球操手を任された頼れる高校3年生! 口が悪いので入部したばかりの後輩たちから恐れられる存在。しかし、後輩たちも直に慣れます。そう、木礎先輩は実はいい人なのだ! ……慣れって怖い

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