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『本日もメニュー開発(デスゲーム)のち、大バズり。』  作者: ののん


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第9話:『異世界からの刺客!? 激辛デスソース vs 伝説のバニラアイス』

前回の「おままごと二郎系ラーメン」の動画は、美咲の狙い通り世界中で大バズりした。再生回数は瞬く間に400万回を超え、コメント欄は「おもちゃの泡立て器を壊す新人アシスタント」「現代の錬金術師・設楽」の文字で埋め尽くされていた。

しかし、そのバズりが新たなる災厄を引き寄せる。

「……美咲さん。この、真っ赤に燃え盛るようなパッケージのボトル群は一体何ですか?」

膳治は、腰にコルセットをがっちりと巻きながら、スタジオの作業台に並べられた不穏な調味料の瓶を指差した。ボトルにはどれも、泣き叫ぶドクロのマークが描かれている。

「見ての通りよ、膳治」

美咲は冷徹な笑みを浮かべ、タブレットをタップする。

「激辛ブームの最先端を行く海外のソースメーカー『ヘル・ファイヤー社』からの挑戦状タイアップよ。彼らの新作デスソース『ジ・エンド・オブ・エゴ(自己の終焉)』のプロモーション。条件は一つ。『辛いものが絶対に食べられない人でも、スプーン一杯を一滴も残さず完食できる、超激辛スイーツ』を開発すること」

「スイーツに激辛ソース!? しかも完食させるって、矛盾の塊じゃないですか!」

膳治は悲鳴をあげた。

「この『ジ・エンド・オブ・エゴ』、スコヴィル値(辛さの単位)が通常のタバスコの500倍ですよ!? 触っただけで皮膚がただれるレベルの劇物をスイーツにするなんて、それはもう料理ではなく兵器開発です!」

「つべこべ言わないの。今回はライブ配信(生放送)での一発勝負よ。失敗したら、あなたのYouTubeチャンネル、1ヶ月間『激辛ソース一気飲みチャンネル』に変えるから」

「狂ってる! あなたの脳内は再生回数という名のドラッグに侵されている!」

膳治がスタジオの床に膝をついたその時、背後から凄まじい風圧が吹いた。

「膳治さん! 辛み成分のカプサイシンは、脂質と糖分で中和可能ですッ!!」

新人アシスタントの乾舞(22歳)が、冷凍庫から巨大な業務用バニラアイスのバケツ(4リットル)を両腕で抱えて登場した。その大腿四頭筋は、重さでパツパツに張っている。

「舞ちゃん……でも、ただのアイスじゃこの地獄の辛さには勝てないよ」

「いいえ! 普通に混ぜるだけではダメです。バニラアイスの脂肪分を『超微粒子化』させて、カプサイシンを完全に包み込む(カプセル化する)んです! 職人の空気含有量オーバーランコントロールと、私の大胸筋の出番です!」

「なるほど……!」

膳治の脳内(バグ回路)が閃いた。

「激辛ソースの辛みを消すんじゃない。人間の舌の『味覚受容体』にカプサイシンが触れる前に、冷たさと脂肪分の膜でベロをコーティングするんだ! 舞ちゃん、そのアイスを常温のボウルに移し、マイナス5度の状態で1秒間に20回叩きつけてくれ!」

「お任せください! どすこいマッスル・ホイップ!!」

舞が巨大な泡立て器を両手で握り、プロのパティシエも驚愕する速度でアイスを猛烈に攪拌し始めた。スタジオ内に「ドゴゴゴゴ」と地響きが鳴り響く。

膳治も負けじと、科学的なアプローチでソースの改造に挑む。

「ソースの酸味と痛みをマスキングするために、カカオ99%のビターチョコレートを湯煎で溶かし、そこに『ペパーミントのエキス』と『パチパチキャンディ』を投入する! ミントの冷感シグナルで脳の痛覚をマヒさせ、キャンディの炭酸ガスで舌の神経をバグらせるんだ!」

二人の狂気的な共同作業により、漆黒の激辛チョコソースと、舞の筋肉によって極限まで滑らかになった「防護壁プロテクトバニラアイス」が融合していく。

完成したのは、見た目は美しい大人のチョコレートパフェ。しかし、その内部には総計数百万スコヴィルのマグマが秘められている。

「名付けて……『冷徹と情熱のデス・アフォガート』だ!」

「さあ、ライブ配信(生放送)が始まるわよ」

美咲が冷酷にカウントダウンを始める。画面の向こうでは、3万人以上の視聴者が「設楽の処刑」を今か今かと待っていた。

膳治はカメラの前に立ち、覚悟を決めてスプーンをパフェに突き刺した。

「……いただきます」

漆黒のソースが絡んだアイスを、一口で頬張る。

その瞬間、膳治の脳内に、爆発する火山と、それを凍らせる絶対零度の吹雪が同時に押し寄せた。舌の上でパチパチキャンディが弾け、ミントの冷気が脳を突き抜ける。辛い。痛い。いや、美味い……!? 脳のドーパミンが限界突破する。

「お、美味しい……! 辛さが、圧倒的な旨味の波になって押し寄せてくる……!!」

膳治の目は血走り、顔からは滝のような汗が流れ落ちるが、スプーンの手は止まらない。完全にトリップした状態で、一気にパフェを完食してしまった。

ライブ配信のコメント欄は、大熱狂の渦に包まれる。

『設楽が覚醒したwww』『美味そうだけど絶対ヤバい』『舞ちゃんの腕の筋肉どうなってんだ』

同時間帯の視聴者数は一気に10万人を突破。画面には高額のスパチャが飛び交った。

「ふん、合格よ」

配信終了後、美咲はタブレットで売上グラフが垂直に跳ね上がるのを見ながら、満足げに微笑んだ。

「ヘル・ファイヤー社から、次の独占契約のオファーが届いたわ。次は『世界一辛いデス・デス・マヨネーズ』の開発よ」

「もう嫌だぁぁぁ! 胃壁が、僕の胃壁が限界です!!」

膳治の絶叫がスタジオに響き渡る。その横で、舞は「良いパンプアップになりました!」とプロテインをゴクゴクと飲み干すのだった。

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