71:女子の苦労
「最後に、こちらのサニタリー用品をどうぞ」
「まあ!助かります!」
立ち寄った村や町の孤児院へは、お金や食料の他、ショーツと布ナプキン、ナプキンカバーを多数量寄付している。
ショーツは色々考えて、紐パンにした。いや、セクシーなものじゃないからね?!
中世ヨーロッパには下着はなかったと言われているが、五百年前の物っていうブラとパンツが見付かっている。それが、紐パンと褌を合わせたみたいなデザインなんだ。
シュシェーナ王国でも女性のパンツは紐パンに変わりつつあるので、それも紐パンにした大きな理由だ。
後、サニタリーショーツという、生理の時専用の下着を買う余裕のあるご家庭は少ないから、ショーツがそのままサニタリーショーツとして使えるようにしたのっ。
サイズが変わった時も、すぐ買い換えられるご家庭も少ないからさ。紐で調整して使えるようにしたら、セクシーじゃない紐パンになったんだよ。
「ショーツのループに、ナプキンカバーにあるボタンを通して固定するとズレ難くなります。
布ナプキンも洗って繰り返し使えますが、しっかり洗って清潔に保つようにして下さいね」
「はい、それは勿論です!これで一人一人、専用のカバーが出来ます。本当に、ありがとうございます」
「えっ、一人一人専用の物がなかったの?!
孤児院で必要なサニタリー用品は、私名義で申請してくれれば買えるようにしてあるよ?!」
「田舎なので、縫製は手縫いなのです。そのため、なかなか枚数が出回らず……」
「なるほど……」
柔らかな革のカバーのお陰で、服などを汚さなくなった。だが、使い捨てではないので、どうしても枚数が必要になる。
足踏みミシンがまだ普及していないので、そうなると手縫いだ。手縫いとなると、量産にはやはり時間がかかるからな……。
「大丈夫ですよ。共有とはいえ、この『なぷきんカバー』と『布なぷきん』のお陰で、どれだけ助かっておりますか!」
ボロ布を当てておくだけとか、衛生的ではない物を詰めるより、かなり衛生的で勝手は良いだろう。
貴族でさえ、そんなに良いサニタリー用品はない時代なんだからね……。
……。一箇所だけの事じゃないから、私も調達は厳しい……。一日でも早い普及を待つかな。
「必要な枚数が揃うまで、遠慮なさらず申請して下さいね?」
「はい。ありがとうございます」
「で、こちらがブラジャーです」
「ブラジャーまで?!本当に、ありがとうございます」
ブラジャーも、フロントの編み上げ紐で調整できるスポーツブラを作った。
胸の形がとかは後!伸縮性のある生地がないから、普通のスポーツブラが作れなかったんだよ。
かといって、普通のブラで細かくサイズを作ると、高くて買えた物ではなくなる。
綿は栽培に成功はしているが、栽培に適した土地も少なく、まだそんなに出回っていない。
なので、亜麻の糸で織られた生地で作っているが、新しい物でも付け心地はそこまで不快じゃない。
日本でも、亜麻の製品が人気になっていたよね?あそこまでツルツルはしていないけど、肌触りはかなり良いよ。
亜麻の生地は庶民の服にも多く使われているから、そんなに高くないしね。
これでも色んな事を見聞きして、色んな事を知って作ったんだ。
「優さまが転移して来て下さって、本当に良かったです。
男性には不浄だ、穢らわしいと理解のない事が、こうして過ごしやすくなるお品を作って下さったのですから」
確かにお父さんでも、流石に女性用下着やサニタリー用品の分野は厳しかっただろう。
作れたとしても、それをこうして寄付するとなると、受け取る孤児院の方たちも困っただろうしね……。
私の感覚じゃ、男性が靴下留として、普通にガーターを使っているのが不思議なんだが……。
格式の高い舞踏会では、靴下がずり下がらない様、ガーターを使うのが正装の一部だからね。
ゴムがないから、ずり下がり難い靴下がないからみたいだけどさ……。
変わった物だと、百年くらい前までは『コッドピース』が流行っていたそうだ……。
これが流行ったのはズボンがなくって、片足ずつに別れたタイツがズボン代わりだったからじゃないかと言われているそうだ。
じゃあ、なんで鎧にもあるんだ?!っていう疑問があるぞ。
ん?コッドピースが何かって?
……。…………。男性の股間を保護したり、大きく見せる装飾だよ……。前が繋がった形の着衣ではないから、『事故』があった時の為でもあるそうな……。
だが、転移者のお陰でズボンが知られるようになり、急速にズボンが広がった。そしてコッドピースは姿を消したそうだ。
消えてくれていて良かったよ。
注文生産で店頭にはなかったけど、ファスナーもあったよ。それもあって、ズボンの人気に火が着いたみたい。
ファスナーがあれば、ズボンの着脱は楽だもんね。
女性が使う物に戻ろう。女性に必要といえば化粧品。これは、庶民が日常的に使えるような代物ではない。
大きな町の、大きなお祭り。又は村でも、近隣から人が詰めかける程の大きなお祭り。その時、役に当たっている方が教会で化粧を施して頂いてするくらい。
お金持ちの女性は、普段からしているけどね。
庶民が使うのは、冬、乾燥からくる酷い肌荒れに、ちょっと余裕のあるご家庭でクリームを使うくらいなんだ。
化粧品は化粧品でも、基礎化粧品だね。
「これ、蜜蝋クリームです。冬の肌荒れに使って下さい」
「蜜蝋クリーム?」
シスターさんに蜜蝋クリームの説明と、使い方をレクチャーする。
「材料が手に入れば、自分でも作れます。レシピはギルドにありますから」
蜜蝋クリームは蜜蝋と、ホホバオイルなどのキャリアオイルを混ぜて作るクリームになる。
このキャリアオイルを探すのに時間がかかった。
ホホバはないし、バラとかは高い。安価で入手が簡単な、肌に優しいものがなかなか見付けられなかったんだ。
色々試して、植物の魔物に良い物があった。土地枯らしと言われる、繁殖力の強い植物の魔物なんだけどさ。実は良く燃える燃料として、昔から利用されていたそうだ。
試しにそれをキャリアオイルにしたら、とても良い蜜蝋クリームが作れた。
蜜蝋も、普通の生物の物は、そこまで高くもないが安くもない。
だが、魔物の物は安い。見付けたら駆除しないと、大繁殖して大変な事になるんだ。だから、魔物の蜂の蜂蜜も蜜蝋も良く出回っている。
「お化粧まで手が回らなくても、肌荒れは気になるでしょ?
孤児院の子どもたちも、肌が荒れそうならお風呂上がりに付けてあげて下さい」
「子どもたちにまで?!本当に、本当にありがとうございます」
「子どもは大人より肌が弱いですから」
こうして、男子立ち入り禁止の寄付は終わった。
私はどっちでも良いけど、私以外の方たちが気まずいだろうから、男子は立ち入り禁止なんだ。
◇
「ユリシーズさん、クー、ルー、シルバー、フィリベールくん、お待たせ」
「お疲れさま」
〘優!〙
〘終わった?〙
〘行こう行こう!〙
「フィリ、待ってるの」
「うん、終わったよ。散歩行こう。
フィリベールくんは迎えに来るから、それまで待っていてね」
「ん!」
さて。それじゃあ散歩という名の、ハードなランニングへ行きますか。
次からは、アイルに乗って行こう。私は軽いんで助かるが、大きくなったクーとルーの運動量に、もう付いて行けないからさ。
お読み下さって有難うございます。
お楽しみ頂けましたら幸いです。
面白かった、良かったなど、お気楽に下の
☆☆☆☆☆
にて、★1から★5で評価して下さいね。
いいね!も、宜しくお願いします。
続きが気になった方は、ブックマークして下さるとすっごく嬉しいです!
感想や応援メッセージもお待ちしています。