52:収穫とハンドメイド
「じゃあ切るよ」
「んっ」
パチンっ。
フィリベールくんがお手伝いしてくれると言う。そこでフィリベールくんの手に手を添えて、現在、瓜の収穫の真っ最中である。
お邪魔している畑は、町に来た時に買い物をした八百屋さんの畑だ。
何年か前から変わった瓜が採れるとの事で、畑にお邪魔させて頂いた。
「瓜にしては、本当に皮が硬いな。しかも中はベタベタしてて、生で食べられないんですよね?」
「そうだよ。油の代わりに使えるが、瓜としては無価値だな」
不思議な物が出来やすい土地だ。瓜が変質したのだろう。
私も作りたい物があって、その材料を探している。それは寒い土地にはないので、代わりに使える物を探しているのだ。
瓜が変化して油みたいになった物で作れるのかは分からない。まあ、出来たらラッキーって事で。
「結構収穫出来たな」
「もう要らないかい?今から抜いてほうれん草の種を蒔けば、ほうれん草の収穫は限限出来るんでな。家で使う分を残して、後は抜いちまうぞ」
「抜くのをニ、三日だけ待って頂くのは無理ですか?
思う物が出来るか、何か利用方法が思い付けばもっと買い取らせて欲しいです」
「ああ、そんくらいなら待てるよ」
「ご無理言ってすみません。帰って早速作ってみますから」
「おう。作りたい物が出来るよう祈ってるよ!」
八百屋さん、ドニさんに揚げピザをお礼に差上げ、お礼も伝えてコンテナハウスに向かう。
「これで作れたら良いなー」
「そんなに欲しいの?今の歯磨き粉じゃ駄目なの?」
「牛骨粉入りの歯磨き粉は、歯にダメージ与えそうで怖いんだよね」
牛骨粉入りなのは許そう。日本ならカルシウム剤とかにも入っている物で、体内に取り入れる事もある物だから。
それで歯を磨くとなると、話はまた別だ。歯のエナメル層まで削らないか心配。
エナメル層が削れるのも、歯に傷が付くのも御免被りたいのだ。
そんな私が目下欲しているのは、安心して使える歯磨き粉。今は粗塩で歯磨きしている。
地球では、フッ素入り歯磨き粉を愛用していた。
歯ブラシを濡したり、うがいをしてから歯磨きをすると、薬効が薄まるのだとか。歯磨き粉たっぷりも、歯磨きした心算になれるので宜しくないそうだ。
なので、歯ブラシも口内も濡らさず、適量の歯磨き粉でしっかり歯を磨いていた。
最後の漱ぎも、ペットボトルのキャップ一杯くらいの水分量が適量との事で、これも守っていた。
大量の水分で口を漱ぐと、定着させたい薬効が洗い流されるんだって。
色んな考えや方法があるが、私にはこのやり方が合っていたのだろう。この方法にしてから、虫歯は出来なくなっていた。
こうして考えると、使い方に気を付けるだけで良かった歯ブラシと歯磨き粉の有り難みが良く分かる。
「歯もね、どんな物ででもゴシゴシ洗えば良いって訳じゃないから」
虫歯になっても治療方法がないのだ。いや…。あるけど…。ペンチで抜く以外の治療方法はない。
だからなるべく、虫歯にならないように心掛けたい。
麻酔無しでペンチで抜く虫歯治療なんて、絶対にしたくないもん!
◇
「んーん…???ちょっと青臭い、かな?ま、でもこれくらいなら許容範囲内か」
コンテナハウスに戻り、早速瓜を一つ割ってみた。香りはちょっと青臭い。まだ熟れていない実だし、しょうがないか。
油そのものは、ココナツッツオイルっぽいかも…!!
これは当たりかも知れない!
何となく見た、ココナツッツオイルで作る、手作りの歯磨き粉の動画の記憶を手繰り寄せる。
元々しっかり見ていなかったし、時間が経って記憶もかなり朧気になっているなぁ。
「割れば良い?」
「ありがとう。うん、一つ割って、中の油の部分を掻き出してくれる?」
「分かった」
瓜から油部分を搔き出し、油4:粗塩1くらいの比率で混ぜてみる。
ある程度混ざったら、細かく砕いた炭を少量と、ミントの精油を五滴入れて更に混ぜる。
あれば良いんだけど、残念ながら重曹はない。重曹があれば、それだけで歯磨き粉として使えるんだけど。
あ、フィリベールくんの分を分けてない…。後で作ろう。
練って柔らかくなった瓜の油は、丁度歯磨き粉くらいの柔らかさのペーストになった。
「良い感じ。もう一つ作ったら、早速磨いてみようかな」
「…。これ、炭で黒いよ?」
「大丈夫だよ。見た目は黒いけど、炭は汚れを吸収してくれる性質があるんだ。
そう言えば、冷蔵庫とか下駄箱に入れると、匂いも軽減してくれる効果もあったっけ」
「炭に色んな効果があるもんなんだな」
そんな話をしながらいそいそと洗面所へ向かい、スプーンで歯磨き粉を掬って歯ブラシに垂らす。
しゃこしゃこしゃこ…。
んー!日本の歯磨き粉とは違うけど、こちらの歯磨き粉より格段に良いかも!ミントの香りも爽やか!粗塩の粒つぶも程よく感じれて良いぞ!
ただ、青臭さが気になるなぁ…。完熟した瓜を使ったら、もうちょっと青臭さは抜けるのかな?そうだと良いな。
そんな事を考えながら歯磨きをしつつ、ユリシーズさんの様子を伺えば…。
ミントの清涼感が初体験なのか、目を白黒させている。
だが、前に教えた通り、小さな動きで一本ずつ歯を磨く事は忘れていないようだ。
「どうかな?かなりさっぱりしたでしょ?」
「スースーするのに驚いたけど、歯がつるつるして気持ち良い」
「フィリも、フィリも!」
「フィリベールくんのはこっちね。ラベンダーのオイルのだよ」
「フィリ、ちがうの?どうして?」
「ミントはとてもスースーするから、フィリベールくん驚いちゃうと思う。さっき、ユリシーズさんもとても驚いていたでしょ?
だから、これで馴れてから同じのにしようね」
「ほんと?」
「うん、本当だよ」
今日はデジレさんは部屋に籠もっておられ、ミラさんはカーニバルの皆さんと朝から狩りへ行かれている。
フィリベールくんは眠くなると愚図るくらいで、普段はとても良い子だ。しかも人懐っこい。
お母さんが恋しいのか、女性には特に懐くらしい。私も女性と認識してもらえたらしく、この数日でとても懐いてくれた。
後で用意しているプレゼントを渡そう。気に入ってくれたら良いな。
フィリベールくんが自分でする歯磨きを終えると、歯ブラシを受け取って洗い上げをしてあげる。
「はい、終わりだよ。お口漱ごうね」
ラベンダーの精油の方を使ったので、フィリベールくんは驚く事もなく歯磨きは終わった。
夜、皆に出来立ての歯磨き粉を渡してみる。ユリシーズさんの反応から、ラベンダーの方にしたよ。
これは皆に大好評だった。良かった。皆やはり、「虫歯治療は嫌だから」と。使いやすい歯磨き粉が喜ばれたんだ。
その夜。三階へ向かうフィリベールくんにプレゼンを渡す。
「フィリベールくん。これ、くまさんの縫いぐるみって言う玩具なんだ。
一緒に眠ってあげてくれるかな?」
一人で眠るのが怖くて寂しいのだろう。そのせいでまあり熟睡できてないっぽいのだ。
そこで、テディベ○みたいな縫いぐるみでも抱いて眠れば、もしかしたら少しは眠れるようにならないかと考えたのだ。
足踏みミシンを持ってきていて良かった。
昨日の土曜日はユリシーズさんとフィリベールくんと別行動し、作った物だ。綿が足りず、昨日渡せなかったんだけどさ。
「くまさん、かわいい」
ふわふわしていて、触り心地の良い生地を選んで作ったくまの縫いぐるみ。フィリベールくんは気に入ってくれた様子。
「まあ、本当に可愛いくまの玩具ね」
「うん。いっしょにねるの」
この日からフィリベールくんは少しずつ眠れるようになり、睡眠不足で愚図る事がなくなった。
ほ。良かった。これで小さな体での行軍が少しでも楽になると思うと、本当にほっとした。
【重曹歯磨きについて】
重曹で歯磨きは可能ですが、歯に与えるダメージ、塩分摂取などの心配があります。
家にあるからと、お試しになりませんようお願い致します。
◇◇◇
お読み下さって有難うございます。
お楽しみ頂けましたら幸いです。
面白かった、良かったなど、お気楽に下の
☆☆☆☆☆
にて★1から★5で評価して下さいね。
いいね!も、宜しくお願いします。
続きが気になった方は、ブックマークして下さるとすっごく嬉しいです!
感想や応援メッセージもお待ちしてます。




