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 言った。言ってしまった。

 ノエリア様への片思い歴苦節十数年、とうとう俺の気持ちをノエリア様に伝えてしまった。こんな筈じゃなかった。もっとロマンチックに告白する予定だったのに。


 だが封印は解けてしまった。一度言葉にしてしまうともう駄目で、俺の口からは勝手にノエリア様への恋慕が溢れ続ける。


「俺はずっと、それこそノエリア様がお生まれになった時から貴女の事だけを愛しています!一度も脇目を振ったことはありません!それなのに、何故よりによって、俺があのスノウ王女なんかを好きだと?さっき貴女は俺を馬鹿呼ばわりしましたが、馬鹿は貴女の方です!ノエリア様は鈍感勘違い馬鹿ですよ!」

「な、貴方、失礼ね!」

「俺は事実を述べただけです!これだけ歴然と態度に差をつけているのに、俺の気持ちに気づかないばかりか、あんな我儘女を好いていると思われてるなんて!あれと縁談が上がっただけでも人生の汚点なのに!」

「ちょっ、そこまで言わなくても……」

「この位はっきり言わないと理解出来ないんでしょう、貴女は馬鹿だから!」


 感情の昂ぶるままに怒鳴り散らすと、ノエリア様は唇をワナワナと震わせながら涙目で俺を睨んでくる。可愛い。いやそうじゃない、怖がらせた上に泣かせてしまった。ノエリア様は絶対に人前で涙は見せないのに。幼い頃でさえ、いつも泣くのを我慢していたのに。


 思えばノエリア様は、生まれた時からあまり泣かない赤ん坊だった。起きている時は機嫌よく、よく眠り、夜泣きもあまりしなかったそうだ。いわゆる育てやすい子で、放っておいても大丈夫な子だった。


 だからといって放置して良い訳ではない。けれどスノウ王女の方は手の掛かる赤ん坊だったので、側妃はスノウ王女に掛かり切りだった。普通王族の子女は乳母に育てられるのだが、元々平民だった側妃は子どもを自分の手で育てると言い張ったのだ。

 そのため乳母も付かなかったノエリア様は、いつもベビーベッドに1人寝かされていた。スノウ王女はいつも側妃に抱っこされ、連れ歩かれていたのに。


 王太子殿下はそんなノエリア様を不憫に思い、よく様子を見に立ち寄っていた。俺も殿下に付いて、ノエリア様に会いに行っていた。そして1人寂しく部屋に放置されているノエリア様を見る度に、この子を守らなくてはと強く思った。それが愛情に変わるのに、たいして時間は掛からなかった。


「ウィリアム、公爵家なら王女が降嫁するのに十分な家格だよな」


 いたずらっぽく言われた時には、王太子殿下には俺の恋心は知られていたのだろう。自分の家ならノエリア様に嫁いで来てもらえると聞き、俺は小躍りした。

 その日から以前にも増して勉学に武術にと精進し、暇を作ってはノエリア様に面会して刷り込みを行った。この国では15歳を過ぎるまで、婚約者を決められない。だからノエリア様にはゆっくり俺を好きになってもらい、ノエリア様の15歳の誕生日にプロポーズするつもりだった。


 それなのに!隣国では婚約に年齢制限が無いのを失念していたせいで、キール王子なんかに出し抜かれた!おまけに長女が片付いたからと、スノウ王女なんかと婚約させられそうになって──あ。もしかして、スノウ王女との婚約話は俺の希望だったと思われてたのか?


「その、怒鳴ったりして申し訳ありません。ですが本当に、俺はスノウ王女が嫌いです。神に誓ってもいい。そして貴女とは神の前で永遠の愛を誓いたい。今から教会に行きませんか?」

「……貴方、ウィリアム本人?」

「本人ですよ。偽者でも影武者でもドッペルゲンガーでもありません。証拠が必要ですか?内腿にホクロが3つ並んでるの見ます?」

「な、何でそれが証拠になるのよ!」

「子どもの頃一緒に水遊びしましたよね?その時ノエリア様が俺のホクロを見つけて、王太子殿下とノエリア様と俺みたいだって仰いましたよね?お忘れですか?」


 ついでに俺の股間にも興味津々でしたよね?お忘れですか?


「そんな昔のこと覚えてないわ。それに覚えてたとしても、そんな場所にあるんじゃ見られないわよ」

「いいえ、どうぞご覧ください。ノエリア様のお部屋に行きましょうか」

「ななな何言ってるの!?」

「じっくり見せて差し上げますよ。触るのも良いですね。俺もノエリア様に触りたいです。どこまでなら許可して頂けますか?」

「え、ちょっと何を、キャーッ!」


 初恋の封印が解けた俺は、まるっきりタガが外れていた。自分でも暴走し過ぎたと思うが後悔はしていない。むしろ良くやった俺。


 ノエリア様を抱えて王宮を爆走した俺は、ノエリア様のお部屋に着くなり侍女を追い出して鍵を掛けた。翌朝までノエリア様と二人きりで寝室に篭もり、宣言通りホクロを見せながら、どれほどノエリア様を愛しているか囁き続けた。そこはちょっとだけ反省している。冷静になって考えると、あれは変態行為だとしか言いようが無い。


 翌朝、羞恥で顔を出せないノエリア様の分も国王陛下に怒られ、父公爵に呆れられ、王太子殿下に苦笑された。だが、事前の根回しが効果を発揮して、俺は異例の短期間でノエリア様と結婚し、ノエリア様の夫となれたのだった。


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