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57.闘技大会・本選④

この土日、投稿できず申し訳ありませんでした……。

体調不良と変な方向へ向いた妄想から、筆が一向に進まず……あはは。


などという事がありながらユニークPVが一万を超え、ブックマークも300件越えと常日頃からありがとうございます。

二章のほうももう少しで終わりますので、気長にお待ちいただければと思います。



「お疲れ様、いい試合だったよ」

「皮肉ならもっと良い具合に言ってくれよ……」


 準々決勝にあたる本選が終わり、観客席に戻ってきたヒューイを一行が出迎えるにあたって代表としてナインが声をかければそれは追い打ちになったようだった。

 とはいえずっこけるように反応した彼も、一通りは楽しみ終えたようでスッキリとした表情を見せていたので大丈夫だろうと思われる。



「とはいえ、アリスとヒューイはベスト8確定、か」

「あぅ……」

「ほら、別に責めてる訳じゃないってば」

「そうっすよぅ、入っただけでも十分凄い事ですしぃ」


 呟くナインの言葉に、膝に頭を預けているアリスの唸り声が発せられる。

 故に苦笑しながらスプークと共に宥めては、ふとした問いかけが彼女から向けられた。


「じゃあ、姉さんはあの人に勝てますか?」

「勝てるかじゃない、勝つよ」

「自信満々っすねぃ」

「でも、その方がコイツらしいっての」

「むぅ……」


 問いかけに当たり前のように返せば三人は苦笑や無言の首肯などといった反応を見せたが、質問した当の彼女はむくれてしまう。

 それが気まずく、苦笑しながらナインは言葉を続ける。


「確かにアリスとの試合を見たから、勝算は高まったけれど……初見でもそう簡単に負ける気はなかったからね?」

「うぅぅぅぅぅぅ……!?」

「え、ぇ。アリス?ねえ、なんで余計に不機嫌になってるの!?」

「あーあ、こりゃダメっすね」

「駄目だわ」

「最低です」

「なんでぇ!?」


 ついにはナインの言葉に怒ったようにアリスが唸れば握りしめた拳をぶつけ始める。

 その理由が解らずに困惑する彼女には、三人の同意の元に呆れた言葉が送られた。


 しかしそんな事を続けていれば彼女達の困った顔と怒った顔は、次第に苦笑と笑みに変わっていく。



「姉さん」

「なあに、アリス」

「負けたら承知しませんから」

「大丈夫。アレには勝つから」

「……ふふ」

「じゃ、行ってくるね」


 和やかに談笑している間に、丁度準々決勝と準決勝のインターバルが終わったようでナインの元へ出場を促すウィンドウが現れる。

 それに対応し、膝に乗っているアリスの頭を退かして立ち上がれば……口元を覆うマスクを着け笑みの質を変えた。


「行ってらっしゃい、姉さん」

「負けんじゃねーぞ」

「「ふぁいと」っすよー」


 見送ってくれる仲間に手を振り、ナインは準決勝の舞台へと足を向けた。





 かつり、かつりと石の階段を降りていく音を響かせる度に、彼女の心は冷えていく。

 何かを思い出そうとするように、ゆっくりと芯まで凍り付いていく。


 そしてマスクに隠された口元を笑みに引き絞ってしまいながら、ナインは障害物の無い闘技場の舞台へと姿を露わにした。


『さあ!いよいよ本選第五試合!準決勝となりますこの試合は――』


 相変わらずアナウンスと歓声が鬱陶しい。

 同じ雑音なら怒声と銃声と砲声の方が耳に優しいだろう。

 そう考えても仕方がない故に、向かいに立つ相手へと視線を巡らせる。


 外見的には小柄で痩躯の男性、そして罠を多用するプレイヤー。

 しかし罠に頼るが故にPSが低いわけではなく、本人の戦闘力と罠設置のセンスは高いレベルの物だ。

 故に警戒は必須、それだけの事。



「やあ、連続で姉妹が相手とは中々面白い采配ですね」

「……」

「無視ですか。いやはや姉妹揃って――」


 戦闘に先立って神経を尖らせていれば、不用心に間の抜けた声がナインへと掛けられる。

 そのエリックの言葉に答える理由もないために、無視していたが……ふと思う節がある故に彼女は口を開く。


「……あなたには」

「――まったく……はい?」

「あなたには、感謝しているよ。妹に敗北の味を教えてくれた」

「え?ああ……それはどうも」

「あれであの子は油断や慢心の怖さを学んだ。だからお礼をさせて貰うよ」

「礼……?いやいや、それには及びませんよ」

「受け取り拒否など無いさ。存分に味わってね」


 紡ぎ出す彼女の言葉に怪訝な表情をエリックが浮かべていれば、試合開始の確認ウィンドウが表示される。

 それを片や不審そうに、片や淡々と触れては試合が開始される。


『《Er1c》選手vs《Nein》選手!本選第五試合、開始です!』



 アナウンスの宣言と管楽器の音色と共に表示が消え去れば、反応して動き始めるエリックよりも早くナインは行動に至っていた。


「《ブレードソニック》《ファイアアロー》《ブレードソニック》」

「お、わっ!?」


 罠による妨害型なら、その隙を与えなければいい。

 単純かつ明快だが困難な戦法を彼女は迷うことなく選んでいた。


 サーベルを振り衝撃波を飛ばし、クールタイムの隙を埋めるように魔法を放つ。

 その間にも一瞬事に止まりつつも釘付けにしているエリック目掛け、着実に距離を詰めていった。


「なめっるな、よ!」

「ッ」


 斬撃と火の矢に追われる事を嫌った彼が苦し紛れに放ったナイフは、無慈悲にサーベルが叩き落とす。

 しかしその為に出来た隙に、エリックはナインの射線上から転がり逃げおおせた。


 が――


「どこへ、行くのさ?」

「がっ!?」


 それを逃すナインでは無く、お返しとばかりに投げられた短剣は彼のふくらはぎへと深々と刺さる。

 そして転倒したエリックの元へは……真っ直ぐに向かわず、途中で一歩立ち止まっては迂回して近寄っていく。


「な、なんで!?」

「設置してる罠は見えない筈?お前の眼が位置を映しているでしょ?」

「っはぁ!?」


 有り得ないものを見た、聞いたというような声がエリックの口から発せられる。

 だがそれは当然の事とばかりに歩み寄るナインは、這いずりもがきながら彼の使おうとした回復薬をサーベルで叩き落とす。

 あっと言う間に追い詰められ絶望にエリックの顔が染まるも、それを見下ろす彼女は追撃を行わなかった。


 その代わりに、彼からは逆光となって表情が見えない彼女は語る。


「少しはね、アリス(あの子)との試合。楽しみにしていたんだ」

「う。ぐ……なんの、話……だよ」

「私もどうしてか、昂っていたんだけどね。それが行き場を無くしてるんだ」

「それ、が……いったい、何――」

「だから悪いけれど、お前にぶつけさせて貰う」

「――え?」



 意味が判らないと間の抜けた声を出すエリックの膝から下が、次の瞬間サーベルの一閃で斬り飛ばされる。

 続けて右肘、左肘と間接が断たれていった。


 僅か数秒どころか1秒に満たない状況の変化に、彼は呆けた顔をするが直後に設定された痛覚が脳を直撃する。


「ぐっ、あ、ぁ゛……ッ!?あ、ぁ……あッ!」

「さて。これで回復薬も使えない、放っておいても出血判定で死ぬ」

「や、止めッ……せめ、って、止めて、くれッ!」

「安心しなよ、失血死判定で終わらせるなんてことはしないから」


 彼は痛覚の設定を半減位にしているのだろうか。

 腕が折れた程度の悲鳴しか上がらない事に、ナインは眉を潜めていた。

 しかしこれ以上悪意を持っての攻撃は駄目だろう、故に終わらせるために――


「《雷光招》」

「ひッ」


 ナインが降り上げたサーベルに紫電が纏い周囲にオゾン臭が漂い始める。

 それを見て怯えるエリックには抗う手段も気力も残っておらず、ただ振り下ろされる刀身が自らの首へ吸い込まれるのを見ているしかなかった。


『本選第五試合!勝者、《Nein》選手!!』





「お疲れさまっす、総長」

「ん、スプーク……」


 試合が終わり、次の試合で沸く観客席に戻り皆の元へ向かおうとするナインをスプークは一人で出迎えた。

 見抜かれているような視線を向けられては困ったように首を傾げながら、口元を覆うマスクを彼女は外す。

 その表情は笑って居ながらも、口元は嗤っていた。


「悪い癖っすよ。仲間を傷つけられて怒るのは」

「怒ってるつもりは無いんだけどね?」

「そういいながら、オーバーキルしてたじゃないっすか」


 呆れたように肩を竦める彼女に、ナインは困った顔をするしか出来ない。

 事実、自覚のない衝動に駆られていた事は否定できないからだ。

 それを長い付き合い故に、諌めるようにスプークは吐露する。


「思ってくれて嬉しい反面、うちらは心配になるんですよ。総長?」

「むぐ……」

「そうやって思いやって、()()裏切られて世界を見限るのは嫌っすから」

「ん……気を付けるから――」

「えいっ」

「ぬわ、ん……」

「ゲームなんですから、少しは気楽にしてくださいよ」

「…………ん」


 苦笑と共に逸らす目線と顔を、彼女は背伸びしてナインの頬を両手で向き直らせ、強引にしゃがませその頭を抱き締める。

 それに抵抗せずにナインは膝を折り、しばらくの間苦笑し合って居た。




どうしてもスプークは相棒だったり女房役のようになってしまうんですよね。

胸も背も小さいのn(杖で殴打される音)

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