33.新しい日常②
突然の来客に驚きながらも陽臣はとりあえず家に招き入れ、犯人である圭を一度殴ってから食材の買い足しへと向かった。
都合五人分となったことに頭を抱えながらも、そこはしっかりと人数分の昼食作ってしまおうとすでに開き直っている。
そうして必要な食材を近場のスーパーなどで買い求め終えて陽臣が戻ると、四人は彼の部屋にしまっていたはずの古いゲーム機をテレビへと接続して遊んでいた。
「あ、お帰りなさい。兄さん」
「……おかしいな、もう遊ばないようなものだから、ソレはしまっておいた覚えが有るんだけれど」
「妹ちゃんが出してきてくれてよ、これがまた面白いんだわ!」
「ん……」
「ぁー!?凛ちゃん酷いっす!?」
「……ま、いっか」
少し思う所は有るが、皆楽しんでいるのであればいいだろう。
しかし……愛梨は何処まで私の部屋の物を把握しているのだろうか、と陽臣は思いながらキッチンへと向かった。
とりあえず、作るのはハンバーグ。
ただし昼に食べるものなので、少し軽めの物とするが……圭は少し重くないと文句を言うだろう。
そう考えながら、陽臣は材料を一通り揃えて調理を始める。
まずは玉ねぎをざっと粗目のみじん切りにした後、軽くソテーして柴犬色になった所でボウルにとって氷を入れて冷ましておく。
次に適量取ったパン粉を別のボウルへ入れ、牛乳をひたひたになるまで注いでさっくり混ぜる。
その後に塩胡椒やナツメグを合わせ入れておき、その際、卵を片手に割り入れながら捏ね始める。
つなぎの準備が終われば荒熱の取れた玉ねぎに合い挽き肉を混ぜ、少し脂身が足りないと感じたので牛脂を混ぜ入れてから捏ね、混ざったらつなぎも混ぜ入れる。
大体捏ね終われば適量を手に取って空気を抜き、中央をへこませて焼きに入る。
この時成型し終えた塊が表面に割れが無いように気を付ける。
焼いてる途中でそこから肉汁が出てしまって、美味しく出来ないからだ。
……そして表裏を5分程ずつ焼いて、数分休ませる。
肉を休ませている間に、付け合わせに人参とジャガイモをそれぞれシャトー型とくし切りにして焼いて皿に盛る。
そうして盛り付けが始まっていけば、ハンバーグも盛り付けてフライパンに残った肉汁にケチャップや中濃ソースを足してソースを作り回しかけて……完成となる。
気付けば、賑やかな声も次第に落ち着いてきている風に聞こえる様子から、調理している匂いが届いているのだろう。
想像して苦笑しながら、陽臣は出来上がったハンバーグを皆の元へ配膳しに向かった。
□
「……ふう」
「お疲れ様です」
「ありがとう、愛梨」
結論を言えば、小さな昼食会は成功に終わった。
ボリュームの欲しい圭には大きい物を複数個、自分と怜には標準サイズ、愛梨と凛には小さめのを複数。
それぞれに合わせた分量で作った故に各々満足してくれたようだ。
ただ陽臣としてはそれぞれに合わせて作る余裕が有れば、などと考えてしまうあたり……そういう気質なのだろう。
そう、反省しながら洗い物を終えた後にソファへと身体を沈めれば、愛梨がコーヒーを淹れてくれていたのでありがたく受け取った。
「……それにしても、本当に幽霊が愛梨のクラスメイトとは、ね」
「ふふ、私も驚きでしたよ?兄さんのお知り合いが居たなんて」
「まあ、今はそれに感謝かな」
「あとは早坂さんにも、ですね」
「……あいつはいいよ。いつも嬉しい事と同じだけ厄介ごとを持ち込んで来るから」
「好まれているくせに」
「あいつには言わないでよ」
噛み締めるように初顔合わせとなったスプークやマージーのリアルに驚きながらも、意外とすんなりと受け入れられている様子に陽臣は自分でも驚いていた。
今後、この五人で活動していくというのも面白いだろうし、別々に動いてもまた面白い。
そう遠い目をする陽臣が想い馳せていれば、その瞳を覗いた愛梨が苦笑する。
「兄さん、まだ死にたいですか?」
「……ああ、『俺』はまだ死ねていないから」
「もう、厄介ですね」
「言わないで欲しいな」
妹の苦笑に自嘲しながら陽臣の瞳から発せられる感情が平坦になっていく。
それを見て、肩を竦めながら愛梨は陽臣の隣へと腰掛ける。
「今迄兄さんが満足する死を得られなかったのは知っています」
「幽霊から聞いたのかい?」
「ええ、『FwF』ではそうだったと聞いています」
「……なら『StOn』でなら、見つかると?」
「いえ――」
半ば諦めたような表情で笑うの兄に、妹は嗤う。
「……アリスが、ナイン」に満足できる死を提供しますから、もう少し付き合ってくださいね?」
「……ふふ、はは。なら私があの世界に飽きてしまうまで、待っているね」
「ええ、きっちり殺して見せますので。お楽しみに」
日々に退屈して電子の海で生を感じる快感を求める兄と、それを叶えようとする妹が物騒な会話をしながらお互いに笑い合う。
気心の知れた仲間にも見せないような一面を見せ合えば、自然と二人は自分の部屋へと戻っていった。
一章分の句切りとなる此処まで読んでいただいてありがとうございます。
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