表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネコミミ王子と嘘つきメイド  作者: 花言葉
ネコミミの解決策を探せ!
12/23

2

 キャイルは王妃の前に立ち、外出許可証を出した。

「まあ、外出?」

「はい、たまには、外の空気も吸いたいと思いまして……」

「でも、あなたは、ケガをしているのだから、大人しくしていた方が良いんじゃないのかしら?」

「サグナも一緒に行きますし……」

「でも、メイドは、ララ・メローしかつれていかないと書いてあるけれど、大丈夫なのかしら?」

「はい、ララ・メローは、とてもいい子ですから」

「そう、でも、やっぱり、お忍びじゃなくて、城の関係者たちで出かけた方が良いじゃないかしら?」

 王妃はひたすら心配してくるので、困ってしまった。

「それでは、俺の見たい素の街が見れないんです」

「! 素の街ですって」

「いずれ、王位を継いだ時、街の状態を知らなかったでは、すまされないでしょう、だから、見たいのです」

「そう」

 王妃は、しぶしぶ、外出許可を認めてくれた。しかし、次は、王を説得しなければいけない。

(父上は、手ごわいからな~……)

 心の中では、不安だった。

「父上」

「なんだ? キャイルか、何の用だ?」

 背が高く、威厳のある雰囲気をかもし出している王様は、キャイルを厳しい目で見ている。

「お忍びで外出しようと思っているのですが、よろしいでしょうか?」

「……いいだろう」

「本当ですか?」

「すべての始末を自分で出来るのなら許そう」

「すべての始末?」

「傷の事も、仕事の事も、すべての事をしっかり片付けられるのなら、許すと言っているのだ」

 王の言う事は、最もである。何か事件が起きた時、王に頼らないで、自分で対処できなければ、いずれ王になどなれない。

「わかりました。すべての責任は、俺が背負います」

「そうか、それなら行っておいで」

「はい」

 この約束をしたからには、気を張って行かなければいけないのだと、心の中で強く思った。

 サグナとララの元へ戻ると。

「外出許可出ましたか?」

「ああ、もちろん」

「やったー」

 ララは喜んでいる。この笑顔が見れただけで、外出の許可が出て本当によかったと思った。

「それじゃあ、私は、準備をしに戻ります」

「そうだね、ララ、メイド寮に行っておいで」

 ララが部屋を出て行くとサグナがきつい顔で話かけて来た。

「許可を降ろす時、王は何の条件を付けた」

「自立しろってさ」

「なるほど、王の考えそうなことですね」

「大丈夫、俺、一人前だから」

「……」

 サグナは黙った。


◆ ◆ ◆


 ララは、部屋でカバンに道具を詰めていた。

「ララ・メロー、どこかにでかけるの?」

 メイド長が不思議そうな顔でこちらを見ている。

「はい、でかけます」

「王子付きのメイドが、外出していいの?」

「その、王子と出かけるんです」

「! かけおちね」

「何を言っているんですか、メイド長! お忍びで出かけるのに同行するだけですよ、何もありません」

「そうですか、つまらない」

「メイド長って、ゴシップ好きなんですか?」

「女は、ゴシップが好きな生き物なのよ、年を取ればわかるわ」

 メイド長は三十代後半で、とても美しいが、心の中は、嫉妬心にあふれていそうだと思った。

「メイド長は、恋人などは?」

「つい、この間、離縁したばかりよ」

「……悪い事聞いちゃいましたね」

(自分が今、幸せじゃないから、他人のゴシップにかみついているのね)

 ララは心の中でそう思っていたが、口に出したりはしなかった。

「とんでもないギャンブラーで、借金作って逃げようとしたから、別れてやったのよ」

「そうでしたか……」

「あの男~……」

 メイド長は、ものすごく怖かった。

「あっ、私行かなくちゃ、王子が待ってます」

「あなたは、王子にだけは、恋してはダメよ、きっと、あなたも遊んで捨てられるだけですからね」

「大丈夫ですよ、だって、キャイル王子ですよ、そう言うタイプではありませんよ、きっと」

「王子だって男よ、裏の顔の一つや二つ、あるに決まっているわ」

「あっても、私は、相手にされないでしょうから、気にしません」

 ララは強気でそう言って、王子の部屋に向かった。

「王子様、準備してまいりました」

 息を切らしてそう言うと。

「ご苦労、馬車の中に乗せてくれ」

「はい」

 ララは、バッグを持ち上げて、後ろの馬車に置いた。

 馬車の中の配置は、サグナとキャイルが並んで座って、その向かいにララが一人で座った。

 馬車は、ガタガタ動き出す。

「出発したわね」

 ララは、窓の外を見て、そう言った。

 その後は、沈黙が続き、三人共ずっと黙っていた。窓の外の景色をみて、ボーとしている。

 ちらっとキャイルと目が合うララ、キャイルもすぐ逸らす。

(どうしよう、恥ずかしいよ)

 向かい合っているため、窓から目を逸らして、前を向くと、キャイルと目が合ってしまう。

 ドキドキと心臓が高鳴る。

 馬車は、無情にもそのまま走り続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ