17<あとがきにお知らせ追加>
ついにこの日がやってきた。
今日、私は生き返り、元の世界へと帰る。
今まで特に「死んでた」という感覚は無いものの、やはり何だか感慨深い。
「そろそろ行こうか」
ぽん、と私の肩に手を置き、神皇産霊さんが微笑む……顔を見たら大変な事になるので見てはいないが、雰囲気で分かった。
私は頷き、最後の別れを言おうと顔を上げる。
ざざっ!
この場に居る全員が一斉にこっちを見た。怖い。
何十もの……や、何百かもしれない……とにかく数え切れないほどの数の目が、一心に私を見ているのだ。思わずぶるりと背筋が震えた。
今、大聖堂内は、私を見送るために集まってくれた人々でぎっちぎちだ。
もう、ものっすごいぎっちぎち。本当に隙間なくぎっちぎちなのである。
何故こうなったかというと、
帰る日が決まった時点で、神皇産霊さんが気をまわして「私と関わりがある人」全員にもれなくお告げという形で伝えておいてくれたらしいのだが……
その関わり認定がどうも、一度「私」を認識しただけでも「有り」という何とも神皇産霊さんらしい、ゆる広ーい基準で……結果、ほぼ街じゅうの人々が大聖堂に集結しちゃいました、という。
こんな大勢の前で話さなきゃならないとか、拷問ですかコレ。
簡単に挨拶だけして終わりにしよう。
「さよな 「やうー!」
「さよ 『嫌じゃー行くでないー!』
「さ 「「やう~っ!」」
……うん。
実はまだプリチー族たちがごねていたりするんだ。(どこぞの精霊もまじってた気がするけど)
リーファス筆頭に街じゅうのプリチー族にうるうるした目で見つめられて、気を抜くと「こっちに残るー!」とか言いそうになるんだけどどうしよう。
「ミー、ずとリーといっちょ……いて?」
――――――。
「だめだよっ」
神皇産霊さんに引き止められ、はっとする。
無意識にリーファスの方へと踏み出しかけてたよ危なかったー! ありがとう神皇産霊さ……
「智美ちゃんは私と帰るんだから、ね?」
ぐはっ!
唇をとがらせつつ、袖口きゅっと握られながら、そんな事言われたらもう頷くしか……
「ミー……っ」
あううっ! そんな涙声で弱弱しく名前を呼ばないでー!
神皇産霊さんとリーファスに挟まれ、私の中の何かが破裂しそうだ。
何この愛らしさと愛らしさの戦い!
駄目だ冷静になれ私。ふうっと溜息に乗せて頭の中のアレコレを一度リセットする。心を決めて、私はリーファスに向き合った。
真っすぐ私を見つめるその瞳に、再びぐらりと心が揺れる。
ああ、でも。
やっぱり私は、帰らなきゃだから。
「ごめんねリーファス……」
「……!」
ぽろり。
リーファスの丸い目から、涙が零れ落ちる。
「や」
ぎゅうっと両手を握りしめ、拒絶するように身を小さくするリーファス。
胸が痛い。でも、言わなきゃいけない。
「……さよなら」
はじかれたように、リーファスが顔を上げ、私へと縋るように手を伸ばしてきた。
その手を取ることは、私には、出来ない。
「やうーーーー!」
悲痛な声が、空気を、人々の耳を――――神々の心を、揺らした。
ぱぁっ!
大聖堂の床が光を放つ。
光の中から現れたのは……プリチーサイズの扉だった。
リーファスがよちよちと扉に近づき、取っ手をにぎる。
カチャリと開けば、あら不思議。見覚えのある部屋……が……
(私の部屋だー!?)
――愛の力で世界が繋がりました。――
「……何でもありか!」
――プリチー族は最強です。――
ちょいちょい。
リーファスに服の裾を引かれ、目を向ければ、むふんと満足げな顔で見上げて来た。
「これで、もだいかいけちゅ!」
ああもう。負けたよ。ふっと全身から力が抜ける。
じわりと湧き上がる愛おしさに、抑えきれなかった笑みが少し、ほんの少しだけ漏れてしまった。
リーファスの丸い目がさらに丸くなり、つづいて満開の笑顔。
「あいちてるー!」
そんな愛の言葉とともに、リーファスが分裂しました。
・・・・・・。
私にそっくりなプリチー族が、今、腕の中に居ます。
・・・・・・。
子 供 出 来 た ーーーー!
<お知らせ>
にじファン終了に伴い、現在、しょうせつ家になろうへ移動できるかどうかを運営に問い合わせています。
念のため、やや急いで完結に向かいますが、元々そろそろ区切りを付けようと考えていましたので、エピソードを変更したりはしょったりはしていません。
無事に移動できた暁には、話を追加する事もある……かも、です。