探偵
ここは夢や希望を求め数多の人間が集い、世界一の人口を誇る都市。
そうここは百万都市ロンドン。
光があれば闇もある。
栄えるこの街の明るい光の裏には、当然闇も数多く存在する。
そんな闇に紛れ、溶け込み、己の正義を全うする探偵が居た。
「そうその名は!」
「ノアさん、依頼人の前で何をやってるんですか」
「これは失敬、自己紹介をしようとするとついね」
「えっと…」
「すいません。ノアさんはこんなですが、腕は確かなので」
「そうですよ麗しのご婦人。では依頼の内容をお願いします」
「はぁ。依頼はうちの犬がどこかに逃げてしまいましたので、見つけてもらいたいのです」
「まずは状況をお伺いしても?」
「うちの子にご飯をあげようと家中探しても見当たらなくて、丁度全ての部屋を見終わった頃に玄関から音がして、見に行った時には扉は閉まっていましたが鍵は開いていましたので、その時に逃げたのかと外に出て探しても見つからず、その足でここに来た次第です」
「分かりました。では、ひとまず家に帰ってみてください」
「え?ですがまだうちの子が…」
「大丈夫です。きっとまだ家に居ますから。ご婦人の格好からして、おそらく部屋は暖かくしてあるのでしょう。しかし外はこの寒さ。となると犬としてはどこで過ごしたいかなエマ君」
「私が犬なら暖かい部屋の方がいいですね」
「つまり真相はこうでしょう。きっとご婦人、あなたは玄関で何かをした時扉を閉め切っておらず、すこし隙間ができていた。そして犬はそこから入り込む冷気が嫌で扉を閉めにいった」
「けどノアさん、犬が扉を閉められますかね?」
「いい質問だエマ君。実際少しの隙間とはいえすぐには閉められなかっただろう、しかし犬には時間があった」
「あ、私がご飯をあげようと家中を探してた時」
「そしてようやく扉が閉まり、その音に気付いた貴方はそのまま玄関へ向かった。しかし犬は素早いですからね、小型犬なら尚」
「え、私小型犬だって言いましたっけ?」
「私を誰だと思ってるんですか、探偵ですよ。
そして貴方が見に行った時にはもう、扉を閉めた時に冷えた体を暖めるために暖かい室内へ行き、貴方は玄関からそのままここに来た為入れ違いになった」
その後ご婦人は急いでおかえりになり、暫くして私宛に一本の電話がかかってきた。
「ありがとうございます!家に帰ったら本当に普通に眠っていました」
「そうですか、なら良かったです。今後は戸締りには気を付けてくださいね」
「はい。ほんとうにありがとうございました」
「…ノアさん。一つ聞いてもいいですか?」
「ん?なんだいエマ君」
「なんであの方の家の犬が小型犬だと?」
「あのご婦人は座る時も、立つ時も、話している間さえも目線は少し下がっていた。つまり下を気にする癖がついているってことさ。それも無意識になるほど長い間。そしてそんなに下を気にする飼い主って事は」
「いつもペットの小型犬の事を家でも気にしてるから」
「Exactly、正解だ。そこに気付くなんて、僕かっこいいと思わないかい?エマ君」
「そのセリフが無ければかっこよかったですよ」
「oh......」
その時、また来客がやってきた。
「よぉ、邪魔するぜノア、エマちゃん」
「お、やぁやぁよくこの寒い中ここまで来たね、我が親友ジャックよ」
「なんだァ、俺だって40すぎてもまだまだ毎日現場をこの足で回ってんだ、若いもんには負けねぇよ」
「それもそうか。ところでなんの事件だい?料金は友達料金にしてあげるよ」
「流石、自称名探偵だな」
「失礼な、自称名探偵じゃなくてただの名探偵だ」
「まぁそんな事はいいんだ。あ、エマちゃん紅茶ありがとう」
「いえ」
「エマ君、ジャックにあげるのは出涸らしでいいんだよ」
「ノアさんのは出涸らしを使っています」
「…」
「なあっはっはっ。お前ら相変わらず仲がいいな。羨ましいぜ」
「まぁいい。で、どんな事件だい?」
「最近よく若い女が襲われてる事件、知ってるか?」
「あぁ。街を歩いていても耳に入ってくるからね」
「そうか、お前を信頼して言うんだけどな、どうも犯人は若い女の顔がお目当てらしい」
「顔を?それぞれ同一犯なのかい?」
「あぁ、切り口や殺し方がそっくりなんだ。何より共通点が多いしな」
「どんなだい?」
「そこはてめぇの頭で推理してくれよ名探偵さん」




