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殿下の親友デイン様に聖女の予言を伝えました

「クレメント、それって未来を変えるために自分らしくない行動をとってみると良いということかな?」


「あ~。そういう考え方もできるかもね。でも、聖女は自分の力の及ばないことについては変えるのが難しいとも言っていたよ」


 聖女に教えてもらった攻略対象の闇の内、殿下の次にやっかいそうだったのが、公爵家のデイン様が抱える闇でしたので、殿下の寮室にお運びいただいて、聖女から聞いた内容をお伝えしています。



 聖女が神から与えられた未来視によると、デイン様は、学園2年目のはじめに隣国王女との政略結婚が決まり、このせいでリーズとピーターバラの両国の間に軋轢が生まれます。そして、板挟みになったデイン様は、心の痛みを和らげてくれる聖女に惹かれます。


 リーズ国の家臣団は、王位継承権を持つ公爵令息が隣国の駒のように扱われることに大いに不満を抱えており、デイン様と聖女側につくそうです。



「わたくしたちに力の及びにくいこと言えば、まず、ピーターバラの首脳陣が、立場の不安定なピーターバラの姫の『婿』として、リーズ国の『公爵家の嫡男』を求めることですわね?」


「そうですね。当事者のジャニス姫は、『この婚姻を断って欲しい』とわざわざ我が家に足を運んで頭を下げられました。姫自体は傲慢な方ではないようでした」


 そういえば、デイン様は、ジャニス姫とお会いしたことがあるのよね?


 当代一の美人と噂される美貌は、どうだったのかしら?

 いまは、関係ないから、聞けないわね?


「あちらの国では王族が自身の結婚について制御不可能な事態になっているんだね?」


「少なくとも姫の力は及ばないようだよ」


「これはもしかすると、王位の長子継承の伝統が崩れそうになっているっていう話も本当かもしれないな」


 デイン様はクレメント殿下の疑問の答えを知っているようですが、わたくしの方を見て、言葉に出すのをためらっておられるようです。


「デイン様、問題解決のためですもの、どうかわたくしに遠慮なさらないで?」


「えっと…… そうですね。ジャニス姫の話では、ピーターバラの首脳陣は、ダジマットの姫を次王の嫁に迎えたいと。第1王子はガブリエル姫の10才年上、第2王子は5才年上なので、こちらの方が釣り合うだろうと、第1王子の王位継承が怪しくなっているとのことです」


「え? わたくし、クレメントと婚約したのです。ピーターバラにはお嫁に行きませんわよ? 年齢は関係ありませんわ」


「そうなんですが…… ピーターバラの首脳陣は、私達と同じ年齢のジャニス姫にスパイ活動を期待しているそうです。ガブリエル姫とクレメント王子の仲を乱したり、ガブリエル姫に自身の兄である第2王子を紹介したり、ね?」


「まぁ! でもどうやって? まだ面識もないのよ?」


「最初は、ガブリエル姫のリーズ王立学園のご学友として潜入する予定だったそうです」


「でも、わたくしは学園に通わないことになったので、ジャニス姫の留学もなくなったのかしら?」


「はい。その後、僕が姫に協力して王宮で学生を招いたお茶会を催しましたよね? それで、僕と婚約すれば姫と友人になりやすいだろうと婚約の話に切り替わったそうです」


 まぁ。ジャニス姫は随分といろんな話をデイン様にご共有なさっているのね?


 それだけジャニス姫の立場に余裕がないということかしら?

 それともジャニス姫とデイン様が凄く親しくなったということかしら?


「デインがガブリエルの望みをかなえるために王宮でお茶会を催したことは、王宮でもごく限られた人しか知らないことだ。ピーターバラのスパイが王宮にも入り込んでいるようだな?」


 確かに!

 ピーターバラ、恐ろしい国ね?


「ジャニス姫は、全てを止めたくて、捉えられる覚悟で当家に知っていることを打ち明けてくれました。それが父の琴線に触れて、姫に騙されたフリをしてみることになったのです。婚約を理由に当家でジャニス姫の身柄を預かれば、姫にとっても安全だ。まぁ、あの方は黙って守られているタイプの姫でもないが……」


「でも、ピーターバラはデイン様を姫の婿にと言っているのでしょう? 姫が公爵家で花嫁修業をするのは不自然では?」


「それでも、ジャニス姫がガブリエルを掌握するまでは、ピーターバラは姫をリーズに置きたがるだろうね?」


「そうだね。僕がピーターバラに移り住むのは、ジャニス姫がガブリエル姫に第2王子を紹介してからだろうね」


「それにしても、まどろっこしいですわね? 第2王子がリーズ宮殿に電撃訪問すれば済むことでしょうに?」


 策士、策に溺れるといいますけれど、ややこしすぎて成功しそうにないですわ。

 どちらのサイドも上手く行かない結果、デイン様の板挟みが苦しい状況になるということかしら?


「そりゃ~。ガブリエルは、男嫌いで有名だから。どこの国も友人の延長でじわじわと攻める策を立てるしかないんだよ」


 それは、殿下も、というかリーズの王妃様もわたくしの男装などを通して、殿下と友人のような距離感の時期を作ろうとしていたのと同じってことですわね?


 殿下は、笑ってらっしゃいますが……



「デイン様は、それでよろしいの? リーズ国は恋愛結婚主義の国だから、ジャニス姫との政略的な婚約は心理的な抵抗感が強いのではなくて? しかもリーズ国側にこれと言った利点はないのですから」


「それは……」


 デイン様は再び、言いよどんで、殿下に目で助けを求めます。

 

「リーズ国の恋愛結婚主義は、戦略的な方便で、民への目くらましのようなもので、実際は『恋に落ちたフリ』をしている政略結婚が多いんだよ」


 殿下がさらりとぶっちゃけるのを見たデイン様は、おずおずと口を開きました。


「例えば、世界中で問題になっている、魔族の純血統と混血統の勢力争いも、『当国は政略禁忌で、結婚は当人同士の愛によってのみ結ばれます』といえば、派閥が形成されることを抑制できますので」


「リーズ国は純血統派が圧倒的多数だから、他国の活動家から見れば『血統差別』的に見えるかもしれないが、『恋愛結婚』だから付け入る隙が生まれない」


 なるほど?


「それに、ジャニス姫にもご理解いただきましたが、当家はいつでも好きな時に『ジャニス姫のほかに好きな人が出来たから』と言う理由で破断できるのです」


「ゴリ押しに負けたように見せているだけで、切り札はこちら側にあるということですわね?」


 この後、デイン様にはわたくしの死や殿下の闇落ちに関する聖女の予言についても情報を共有し、ピーターバラについては動きがあれば情報を共有し合うことにいたしました。



 殿下は……

 殿下も、もしかしたら、今も、わたくしのことを好きなフリをしているだけかしら?


 デイン様が自室に戻られた後、そんなことをぼんやり考えていたら、殿下に察するものがあったらしく……


 わたくしの瞳を覗き込みながら、「どうしたらまごころがつたわるのかな?」などと言いながら、緩急、深浅が様々なキスで、わたくしの心を溶かしてくれました。


 ああ。わたくしってば、また殿下に慰められてしまいましたわね?


 わたくしの方が殿下を幸せで満たせる日が、来るかしら?

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