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神ッション

 

 あの後、他にも何体かのデビルパンダを討伐して街に戻った俺達は、組合(ギルド)にそれを報告して帰路についていた。


「うへー、やっぱり血の匂い慣れないなぁ。気持ち悪い……」


 隣で文句を垂れるカレンに、感心の声を上げる。


「慣れない、程度で済ませられてる方がすげえよ。ダメなやつは本当に使い物にならなくなるってのに、異世界人はみんなこうなのか?」

「知りませんよ!」


 カレンはぶんぶんと首を横に振った。


「私達は生き物を殺したらいけないってキツーく言われて育ってられるんです。自分がこんなにもスプラッタな異世界生活に適しているなんて生まれて初めて知りました」

「面白い世界だな」


 彼女が言う世界を頭の中で想像する。

 が、殺さないように接した結果、デビルパンダに喰い散らかされる人間達の絵面しか思い浮かばなかった。


「デビルパンダとの和解は無理だろ……」

「何考えてるんです……?」


 カレンはデビルパンダを可愛いと言っていたが、俺には全くそうは思えない。


 まず、でかい。

 縦にも横にも。


 人間はおよそ自分より大きいものに恐怖を覚えるようにできてるはずだ。

 だから、何より怖いという感情が先にくる。


 次に、強い。

 今回、大した傷なく討伐を成功した俺達だがそれは俺の神代具とカレンの勇者パワーによるものが大きい。


 デビルパンダを素手で倒す。

 そんなふざけたことが、金級冒険者の条件にも加えられているぐらいには強い魔物だ。


 最後に、キモイ。

 これは個人の感情かもしれない。

 それでもキモイものはキモイんだ。


 何故か腹にある模様が悪魔に見えるパンダ。

 デビルパンダと呼ばれる由来だ。


 その模様がとにかくキモイ。

 普通のパンダ系魔物は白黒模様ばかりなのに、あいつだけカラフルな模様を腹に抱えている。

 それが妙にキモくて俺は嫌いなのだ。


 これらの点により、デビルパンダは可愛くない。

 証明は完了した。

 今日奴らを殺して回ったのは世界の為になったのだ。

 そう思いたい。


 そこで、思い出したことがある。

 気づいたらどこで買ったのか、串焼きを口いっぱいに頬張っているカレンに声をかける。



「なあ、今日の討伐で“神ッション”とやらは達成出来たのかよ」


 神ッション。

 ふざけた名前をしやがったこいつは勇者候補達に与えられた使命……のようなものらしい。

 カレンが時折、神代文字がびっしり書き込まれていて、彼女にしか見えない板を読んでいることがあったから、聞いてみたら説明された。


 俺にはいまいちよく分からない。

 神様がなんか送り付けてくるとか、隠し要素的になってて突然達成することもあるとか、要領を得ない説明だったので、途中で理解することをやめたから。


 理解しておけばいいのは一つだけ。

 何かをカレンがすると、その見返りに何かを報酬として得られる。

 それは軽いものなら金銭や武具、時には戦う技や知識まで。


 たったそれだけといえばそれだけだが、彼女の成長の助けになっているには違いない。

 戦ってる間に強くなるのもその一つ。

 『勇者』は本当に恵まれている。


 その割に、神様とやらに愛されてるんだか、愛されてないんだかよく分からない不幸な少女カレンはもぐもぐと串焼きを口にくわえたまま不満そうな顔をしている。

 それでも少し考えた素振りをしたあとに、面倒くさそうに『オープン』と言い、目の前に自分だけが見えるメニューとやらを出す。

 彼女が何も無い空中を虚ろな目で触り続けるのを見るのは、未だに慣れない。


「あー……依頼達成数十件と? 魔物討伐種類五種類。達成してますね。キーミッションもこれで達成っぽいです。次の奴、生えてますよ」

「報酬は? いや、いい。次のキーミッションの方が気になる。そっちを先に教えてくれ」


 キーミッション。

 どうやら勇者候補が勇者に至るための道筋を神様自ら示してくれる類のもの、のようだ。

 そこには『仲間を増やす』、『生き延びよ』など抽象的なものから『依頼を達成し、異世界に馴染め。ミッションを三つクリアせよ』のように具体的なものもあった。


 本当に仕組みがよく分からない。

 カレンはゲームみたいですね、と言っていたがゲームってなんだよ。

 俺にも分かるように説明してくれ。

 俺はアホじゃないが、カレンはバカだったので意思疎通は未だ不自由である。



 さて、次のキーミッションとやら楽なものであればいいが……。

 一度遭遇した『金を集めろ』なんて二度と手伝いたくないね。

 俺が居ると数字がマイナスになり続けるとかハブられたし。


「えーと、ですね。『古城に眠る首無し騎士を沈めよ』って書いてあります。なんですかこれ?」



 俺はそれを聞いて、ここ最近妙に口癖になってしまった言葉が漏れ出る。



「まずいことになった」

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