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第二十話

「今週は二百十四万六千イエンね。四十ニ万イエンずつ、後はパーッと飲むわよ!」

「うむ!」

 パーティでの分配が終わリ、恒例の清算日の酒場飲みが始まる。

 うちは一万イエン単位で大雑把に分け、清算日は必ず全員で飲みに行く。


 この日だけはワリカン飲み、分配余剰分割引、という形になる。

 飲みニケーションするよりは一人の時間が欲しいのでは?

 そんなことはない。


 三人の美女、一人の合法さんと飲むのだ。楽しくない訳が無い。

 これがそういうお店だと、まずうちのパーティメンバー並の女はこない。

 四人もはべらせれば時間十万イエン単位で吹っ飛んでいくだろう。


 チープな酒場とはいえ、ごちそうを食べたらふく飲んで一人一万イエンで収まるのだ。

 男なら間違いなく断らない。

 

 カレン達も全員酒が好きだ。

 カレンは豪快に安酒を浴びるように飲み、あまり酔わない。

 シアはチビチビと舐めるように、甘い酒を飲む。

 シノブは特別な芋から作った酒を飲み、エレノアは色々な種類の酒を飲む。

 

 酒の席の話題に、フォナとフィナの事が話題に上がった。

「そういえばダースだがお前らより稼いでるらしいぞ?」

「パーティーの依頼清算金額はうちの方が上のはずじゃがのう?」


「フォナとフィナ、七万イエンで経費自分持ちらしいぞ」


「まぁ、お金だけじゃないしね。私はこのパーティーから移れば倍稼げると言ってもお断りだしね」


「そうじゃな。金なんてワシも必要ない。本が買えるくらい残ればええんじゃ」

 ローンは溜まっとるが、金だけが目的じゃないからのう、とシノブは酒をちびちび舐める。


「わ、わたしは……生活費を除いて全額仕送りしてるから、居心地がベスト……」

 清算日にこうしてお酒を飲める程度でいい、とシノブが酒を舐めながらにへらと笑う。

「私も教会に寄付してますし……楽しいのが一番ですわね」


 フォナとフィナが選んだのだから、口を出すのが間違っていると。

 うちのパーティーはそうしめて次の話題へと移る。

 そんな他愛もない酒のツマミのような話だった。


 フォナとフィナがダース達のパーティーに加わり、二ヵ月程経ち。

 いつものようにダンジョンを攻略して、ギルドで食事をとっていた俺達に、フィナの悲鳴が聞こえた。


「ふざけるなよ!俺を騙しやがって!」

 そちらの方を向くと、ダースがフィナの顔を叩いたのだろうか。フィナが顔を抑えて床に腰をついていた。


「いいか、恥ずかしいからと向いている装備を装備しないのはただの甘えだ!」


「だ、だが現状でも上級剣士、上級魔法使い並みの働きはしているじゃないか」

「そうです。元々上級剣士と上級魔法使いとして加入したはずです」


「装備を変えれば特級剣士と特級魔法使い並みの実力があるんだろう、なぜそうしない!」

 特級剣士と特級魔法使い……。それはカレンとシアと同じ。

 一掴みの人間しか持っていないジョブだ。

 

「恥ずかしいだと?それで手を抜いて俺達の誰かが死んだらどう責任とるつもりだ!」


 本当はもっと実力を発揮できる装備があるのに装備しない。

 それは我儘に見えるのだろう。

 本気で冒険者をしていないように見えるのだろう。

 

「お前らが特級程度の実力があれば、A級パーティーも目指せたし依頼ももっと難易度の高い仕事も受けられたんだぞ!」


 ダースが怒っているのは、冒険者達が二ヵ月に一度くらい受けるステータス鑑定の結果だろう。

 冒険者はステータスを鑑定し、より強くなれるように武器や防具を交換する。

 そこでもっと向いている武器や防具が見つかったのだろう。

 

「俺もな、本当は槍よりも剣が好きなんだよ。ジョブが上級槍使いだから仕方なく。嫌々槍を使ってるんだぞ?」

 ダースが頭を掻きむしる。

「俺が剣を使って足を引っ張ってたらお前らはどう思うんだ?ええっ?」


 泣きそうな顔で俯いている二人の間に入ったのがカレンとシアだった。

 その後ろに俺達のパーティーが続く。

 

「バカじゃないの?あんた達は上級以上のジョブを探してた。上級のジョブが来た。それで死ぬなら実力が足りないだけでしょ?」

 上級ジョブを三人も抱えているのに自分が受けるべき依頼すら管理できなかったリーダーの責任よね、とカレンがダースを睨みながら言う。


「だ、だが……実力があるのに出さないというのはおかしいだろう。より適した装備に変えるべきだ」

「それは個人の考え方の違いじゃろう」

 そしてシアは続けた。

「先ほど言っておったが、お主が槍よりも剣が好きなら剣を使えばよかろう。中級程度になるなら中級の近接職を募集しているパーティーで活動すればええだけじゃろう?」

「だが、そうすれば中級程度の収入になるじゃないか!」

「それはそうじゃろう」

 何をバカな事を、とシアは続けた。

「中級近接職として運用して稼ぐのじゃから中級の相場にまでは落ちるじゃろう。特級は特級の運用ができるのなら給料も特級にあげんとならんぞ?」

「剣より槍を使える方が稼げるから槍に変えた。彼女達は稼ぎよりも装備に拘った。それだけじゃない」


 槍だと強いけど、剣だとイマイチ。でも剣士がいいから中級のパーティーに中級のパーティーで雇われる。

 その後で『中級剣士で雇ったけど槍使えば強いんだろ?なら金になるから槍使え』と言われたらどう思うのか。

「剣が使いたいから、と中級剣士の給料で入ったパーティーで槍を使って貢献する。アンタはできるのかしら?」

 

「だが……装備の好き嫌いで特級相当の実力を捨てるのはどうかと思う」


「もし彼女らが本当に特級の実力が出せるとすれば、彼女らはお主らのパーティーに居る意味も無いんじゃぞ?」

「そうね。特級剣士と特級魔術師ならアンタ達が今受けている依頼を二人でこなせる程度の実力がある事になるわ」

「……もういい」


 結局ダースのパーティーは気まずい雰囲気が残り、

 フォナとフィナはパーティーを抜けた。

 

 ビキニアーマー剣士とマイクロビキニ魔法使いはただの上級剣士と上級魔法使いとして活動をはじめ、B級パーティーとして認められる事になる。

 

 そしてダースのパーティーは中級剣士と中級聖職者の成長により、解散となる。


「今回のステータス鑑定で上級剣士になったんだ。俺は俺でやらせて貰う事にする」

 上級までステータスが上がった剣士は、自分でパーティーを作ると抜けた。

 彼の名前はガストと言う。

 職業を連呼し、他パーティーに入りづらくするのは、自分と一緒にまたパーティーを組みたいという願いからか。

 加入したらビキニアーマーやマイクロビキニを着せる事はしないだろうに、ジョブをからかうようなセリフを吐き、彼女達を口説き続ける。

「【ビキニアーマー剣士】のフォナちゃんと【マイクロビキニ魔法使い】のフィナちゃんじゃないか。ビキニアーマーとマイクロビキニを見せてくれよ」

 こいつらは特級相当の実力を持っているんだぞ、と牽制するように。

 俯いたままでいた気弱な剣士が上級デビュー【上級剣士になって性格を変える】したためか、フォナとフィナはガストの事を忘れている。

 今のガストの評価は、『なぜか私達のジョブを調べて、隠しているのにバラす最低男』と認定されている。


「もうこのパーティーは終わりですね。ジョブが賢者になりましたし抜けさせて貰います」

 賢者へとジョブが変わった聖職者は、教会付きの賢者になった。

 彼の名前はリルイと言う。

 職業賢者の先輩であり、恵まれた環境で賢者をしている俺に嫉妬しているのか。

 彼らのパーティーを崩壊させた原因のパーティーの賢者だからだろうか。

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