第75話 責任を取りました
「うわわわわ」
目の前には素っ裸のアイが、大事なところだけを隠してうずくまっている。オレは生まれて初めて女の子の裸を見てしまってパニックになっている。一体どうしてこうなった?
オレの考えた策はこうだ。アイをそのまま物質世界に呼び寄せることはできないが、アイの肉体をそっくりそのまま再現し脳の伝達機能だけを本人に委ねる事ができれば現実世界でも存在できるんじゃあないかと。
所謂、アバターを作成したのだ。普通は仮想現実の世界に自分の分身を作るのだろうがそれとは逆パターンだな。
その策は、コジロウのチート過ぎる魔法によって実行された。アイの透き通るような白い肌にサラサラの髪、整った顔立ち。決して大きくはないが、丁度良いサイズと形の良い胸に均整のとれたスタイル。見た目は完璧に再現されている。
だがいかんせんコジロウは所詮ネコだった。あまりにも利口なためにオレはとんだ勘違いをしてしまっていたのだ。人間のことならなんでもわかっているだろうと。
コジロウはアイの体をそっくりそのまま再現したのだがそれはあくまでも体だけで、つまり何も身に着けていない状態でこっちの世界にアイが出現したって事なのだ。
だが、コジロウばかりを責める訳にはいくまい。何しろ人間と違ってネコは元々裸なんだからな。服の事まで考えないだろうことは十分に予想できただろう。その点オレはこうなることを想定しなきゃならなかったんじゃないか?現世でオレが読んでいたマンガの中には、こんなお色気シチュエーションって結構あったもんなあ・・・
「ちょっとう、なんか服ば貸してよー」
裸のアイを目の前にして現実逃避していると、声をかけられはっと我に返る。
「お、おいコジロウ。アイに服を出してやってくれ。は、はやくー」
『了解だニャア』
コジロウはオレの命令通り即座に服を出現させる。目の前に現れたのは・・・
「ちがーう。こんなんじゃなくてもっと普通のヤツを出してくれよ」
『にゃあ?ご主人様の好みじゃないニャア?』
なんとコジロウが出したのはメイド服だった。確かに好みではあるんだが、今の状況を考えてくれよー。
「かわいいいい。ウチこんな服着たかったんよー」
ところが意外にもアイは気に入ったようだ。コジロウが出したメイド服を嬉しそうにいそいそと着込んでいる。
そうしてオレの目の前に美しすぎるメイドさんが立っていた。黒を基調としたワンピースにレースをあしらったエプロンとカチューシャ。ご丁寧にハイソックスも白のレースだ。なぜかサイズもぴったりで少し短めのスカートのすそからは形の良い太ももが見えている。まるで等身大フィギュアのように完璧な見た目だ。
オレがその美しさに目を奪われていると、アイはこっちを睨みつつ腰に手を当てて言い放った。
「ちょっとー。こんなんじゃ誤魔化されんけんね。ちゃんと責任ば取って貰うとよ?」
「え?責任って?」
金か?金なら有り金全部叩いてでも償ってみせるが。いくら不可抗力とは言え若い女の子の裸を見てしまったんだ。それなりの覚悟はできているぞ。一生かけても償っていかなきゃ。
ところがアイの口から驚愕の言葉が続けられる。
「男やろ?もう覚悟せんね。ウチを貰ってくれって言っとるやん」
え?今なんて言った?何を貰うって?ウチってアイのことだよな?それを貰えってことは・・・
再びアイの方を見る。ルックスは完璧だ。現世にいたならば、二次元の中でしかお目にかかれないだろう。うん?ルックスは完璧?じゃあ中身は?
オレはこちらの世界に来てからのことを思い出す。初めての死闘を演じたグリズリーを倒した後に出会った時からコジロウを呼び寄せる方法があることを教えてもらった。それからEDOの街に行きクエストを受けた。最後の洞窟ではナビゲートをして貰ったお陰で迷わずに目的地まで着けたし、死ぬかと思った戦いでも最後までサポートしてくれた。アイに出会ったお陰で今のオレがあると言っても決して過言ではない。それくらいお世話になっている。
そしてコジロウの魔法により電脳界に行き初めて本人とご対面した時から今まで、いつでも一緒にいて楽しかった。これからも一緒にいたい。
「結婚してください」
「うん」
そうしてあっけないほど簡単にオレのプロポーズは成功し、アイと結婚することになったのだった。




