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第76話 結婚しました

オレの横には、ニコニコ顔のアイが座っている。今日からオレの嫁だ。まるで夢の様だが、まぎれもない現実だ。



「あ、そう言えば手続きとかいるんじゃ?オレの元いた世界だと婚姻届とか結婚式とか色々する事あったけど」

「ああ、この世界でも手続きはあるっちゃけど。もうやっといたけん」



電脳界だろうがヒノモト国だろうがネット上で簡単に手続きが出来るそうで既に登録済みなのだそうだ。もちろん、通信系スキル持ち以外は役所まで出向いて手続きする必要はあるとの事だったが・・・



「アイのご両親への挨拶は?」

「ウチはお母さんだけしかおらんのやけど、“よろしく”だって」



え?そんなに軽いノリなの?頑固なお父さんから「娘はやらん」って言われるの覚悟していたんだけどなあ。つうか母子家庭だったんだな?あの明るいおかんからは、全く悲壮感感じなかったからちょっとビックリだったが。



「え?じゃあ他にすることは?」

「もうなんもすることは無かよ」



そうなんだ・・・結婚披露宴とか新婚旅行とか色々あるかと思ってたんだが、何もないとは。




「そんな事よりもEDOの街を案内してよ。ウチ、ギュウドンが食べたい」

「あ、じゃあ行こうか。あ、靴がいるな。どうしよう」



するとコジロウが黒のローファーをスッと出す。なんて気が付くネコなんだ。



「コジロウ、さっきのメイド服といいお前、すげえな。でもなんでこんなもの持っていたんだ?」

『にゃあ、トキさんがさっきくれたんだニャア』



なるほど、トキさんの仕業か。だがなぜにメイド服なんだ?



「シュウさんは、これから召使を雇うことになりますのでプレゼントします」との事だった。あ、そういう事なのね。まさかトキさんの趣味かと思って一瞬驚いたんだが。



うん?じゃあ、アイにこの恰好をさせて一緒にいたらみんなオレの召使と勘違いしないか?オレの嫁をそんな目に遭わす訳にはいかんだろ。



「EDOでは、こんな恰好している人滅多にいないしここは下町だから、誰も分からんと思うよ」



アイに言われてなるほどと納得する。下町では男は甚平、女性は浴衣が基本で今まで洋服を着ている人はアヤ姉以外見たことはなかった。確かにそうかもしれないな。



よーし。じゃあ松田屋に行くかー。オレ達は、揃って松田屋に向かう事にした。っとその前に



「なあ、アイはこの身体に攻撃を受けたら本体に影響は受けるの?」

「うん。この身体には、自分本体の伝達系の機能をほとんど預けているから大きな影響を受けると思う」



やはりそうか、こちらの世界にノーリスクで存在できるハズないもんなあ。更に言うと今のアイは魔法も使えないし肉体の強度も一般人と変わらない。戦闘力は普通の生身の身体と同じなんだ。こちらの世界ではかなり弱い部類に属するだろう。


「おい、ゴル。オレの嫁さんを絶対守ってくれ。優先順位はオレよりも上だぞ。分かったな」

『ご主人様の安全より奥様の安全確保のプライオリティを上げる事は出来ませんが、2人とも必ず守ってご覧に入れます』



もちろん、オレの命に懸けてもアイを守ってみせると言いたいのだが、現実はそんなに甘くはない。この世界ではオレの実力なんて大したことないし、これからどんなに危険な事が待ち受けているか分からない。カッコつけて取り返しのつかないことになったら目も当てられない。アイの身の安全のためには、自分のプライドや満足感なんて全く役には立たないのだ。



「まあ、少なくともEDOにいる間はそんなに危険な事もないだろうけどね」

「そうやね」



そんな話をしていたら松田屋に着く。相変わらず繁盛していて行列が出来ているが、スタッフの適切な誘導により大して待たずに店内に入る事ができた。



「特盛を3つと並を4つ、それに卵と味噌汁を7つずつ下さい」

「かしこまりました」



席に着くとすぐにお茶が供され同時に注文を聞かれる。とてもファーストフード店の接客対応ではない。コウノスケさんの教育の賜物もあるが、もともとのヒノモト国民の性格ともマッチしているのだろう。



「お待たせしました」



程なくしてオレ達の目の前に注文の品が運ばれてくる。一口食べてみる。相変わらず美味い。なんかこのところ色々とあったから、いつも食べなれている味にホッとする。


「おいしい?」

「うん。めっちゃおいしかよー」



アイは横で丼を持ちあげてガツガツと掻き込んでいる。お、おう、意外とワイルドなんだな。見た目とのギャップに一瞬ビックリしたが、変にお上品なよりもずっといい。そんなアイにオレはほっこりしてしまう。






「この牛丼は、オレが元の世界でよく食べてた食べ物なんだよ」



オレの言葉に頷きながらアイは「あ」と手を叩く。



「そう言えば、シュウの元いた世界の料理作れるようになったけん」

「え?」


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