第101話 オレ対ゴブリン軍
アイテムボックスからヒノモト刀を出しながら、改めてゴブリン達と対峙する。キィキィとうるさいその醜悪な顔で愛らしいトリに跨っているその取り合わせがミスマッチだ。と、そんな事はどうでもいい。こいつらを全員、オレの剣技だけで倒せるのか?
「大丈夫、ウチがサポートするけんね」
ブウン・・・
その途端、頭の中でウインドディスプレイが立ち上がり、ゴブリン達の詳細なデータが表示される。久しぶりだな、この感じ。しばらく振りの割には、すぐ対応できるのがこの世界のいいところで何の違和感もない。ようし、なんか吹っ切れた。そう言えばリュウガと戦って一度死にそうな目にあったからだろうか?その経験のお陰かゴブリンの大群を目の前にして落ち着いてきたぞ。取りあえず、ディスプレイの表示に注目するか。
ゴブリンキング
HP :920
MP :0
物理攻撃力 :941
物理防御力 :901
魔法攻撃力 : -
魔法防御力 :889
使用武器:大矛
ゴブリンジェネラル(1)
HP :742
MP :0
物理攻撃力 :801
物理防御力 :799
魔法攻撃力 : -
魔法防御力 :451
使用武器:長槍
ゴブリンジェネラル(2)
HP :691
MP :0
物理攻撃力 :969
物理防御力 :579
魔法攻撃力 : -
魔法防御力 :402
使用武器:ハンマー
ゴブリンジェネラル(3)
HP :702
MP :0
物理攻撃力 :812
物理防御力 :712
魔法攻撃力 : -
魔法防御力 :591
使用武器:剣
ゴブリンジェネラル(3)
HP :702
MP :0
物理攻撃力 :812
物理防御力 :712
魔法攻撃力 : -
魔法防御力 :591
使用武器:剣
ゴブリンライダー(1~900)
HP :400~600
MP :0
物理攻撃力 :300~500
物理防御力 :300~500
魔法攻撃力 : -
魔法防御力 :250~500
使用武器:ヤリ
といった具合にゴブリン達のデータが表示されている。なるほど、ジェネラル1に対し300のライダーがワンセットのようだな。それが3隊あるのがこのゴブリン軍の陣容ってことか。一時したら表示画面が上にスクロールし、後には軍の配置図が表示される。まるで戦国もののSLG画面のようだ。それにしてもゴブリンキング結構強いな、ダンジョンならラスボス級だろこの強さは。
横陣の陣形の一番上のど真ん中に一騎デカイ◎がついているのがキングだろう。そのすぐ下に三騎の○があるのがジェネラルだな。そしてその下にズラーっと△が沢山ついているのがライダーたちだ。
反対側に○がひとつあるのが、オレって事か。オレの○は青字でゴブリン達は赤字で表示されていて本当に分かりやすい。
「きた!!」
すると、ジェネラルの一人が動き出した。300騎のライダーを引き連れてこっちに向かってくる。ジェネラルが先頭になってそれを部下のライダー達がピラミッド型に追随するような隊形だ、いわゆる魚鱗の陣ってやつだな。ディスプレイ上の表示もそれに呼応し、三角になった隊形から→がオレの○に向かって延びている。
「くるよ、構えて」
次の瞬間、ディスプレイ上の一点にオレの○から→が延びる。
「まずは、ここに斬りこんで」
指示された場所は、先頭から3列ほど後ろの列だ。なるほど、そこにこちらから斜めに斬りこんでいけばいいのか。よし、行くぞ
「うおおおおおおおお」
ヒノモト刀を構え、先頭のジェネラルを躱し様に隊列の中に突っ込んでいく。その途端、数十本のヤリがおれに向かって一斉に伸びてくる。が、オレは落ち着いてそれらを躱していく。確かに剣術スキルのある今のオレには、こんな攻撃はかすりもしない。すかさず馬上?のゴブリンに向かって刀を一閃する。
スパッ
次の瞬間、10数匹のライダー達は斬られたことさえ気づかずに上半身と下半身が切り離される。もちろん、ライダーの乗り物である鳥たちも気付かない。上半身を失った主を乗せたまま、隊列に従って走り続ける。
・・・チャリーン、チャリンチャリン、チャリーーン
と、斬られたゴブリン達の身体は消え失せ変わりに10円硬貨のような銅貨が現れる。なるほど、あいつらを倒したらコインがゲットできるってことなんだな。なんにしろ、あいつらを苦しまずにやっつけられて良かった。ヘタに断末魔の悲鳴とかあげられたら暫く夢に出てきそうだからなあ。
自分の配下をあっさり斬られたジェネラルはというと、意外そうな顔をするが不敵な笑みを浮かべて本陣へと戻る。くっそ、ゴブリンのくせにカッコいいじゃねえかよ。
「くるよ!」
アイが叫ぶと同時にゴブリン軍は全軍、左右に展開を始める。どうやらオレを取り囲んでフルボッコにする作戦のようだ。つうか、1000人のゴブリンから囲まれてフルボッコとか怖っ。
「はやく、その鳥に乗って!」
「え?この鳥に?」
アイの指示でゴブリンが乗っていた大きな黄色い鳥に乗っかる。何故か一匹だけ群れからはぐれているのだ。丁度よかった。するとビックリするくらい簡単に乗れた。オレは、前世で乗馬経験と名の付くものはまだ小さかった頃に親に連れて行って貰った牧場でポニーに乗ったくらいだ。その乗馬も飼育員のおっちゃんが手綱を引いて牧場を一周5分程度のものだった。ところがこの大きな鳥、オレが跨って手綱を引くと思い通りに動かせるし乗り心地も快適だ。もちろんコタロウの乗り心地には負けるのだが・・・
「よし、せっかくだからお前に名前を付けてやろう。そうだな、お前の名前はチョコだ。よろしくなチョコ」
「クエー」
そんなやり取りをしている間にも、ゴブリン軍は間近に迫ってくる。オレは右手にヒノモト刀を持ち、左手でチョコの手綱を引いてアイの指示した場所へと移動する。
「って一番、やべえ所じゃねえかよおおお」
そこはジェネラル達3人が、手ぐすね引いて待ち構えるゴブリン軍によって出来た袋小路のど真ん中であった。




