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第四話 魔法少女ブルームの受難

苦労人キャラっていいですよね。


(もっと虐めたくなります。)

通報を受け、現場へ急行する。場所は少し遠いスーパー。


「夏休み初日くらいゆっくりさせてよね。」


ぶつくさと文句を言いながらも足は止めない。


「しかも、今日は非番だっていうのに、」


魔獣討伐は当番制だ。

担当者が支部に待機し、通報を受け次第ヘリコプターで出撃する。

もっとも、出現地点近くに魔法少女がいた場合、その者にも通報が入る仕組みになっている。


結果、悲しいかな。魔法少女姿で街中を時速50kmで爆走するはめになっていた。


「すみませーん!魔法少女が通りまーす!道を開けてくださーい!」


少女はまじめな性格なのだろう。

車並みの速度で走る以上歩道を走るわけにはいかない。

事故がないように救急車かのように声をかける。

背筋を伸ばし、腕を大きく振る。

陸上選手のような綺麗なフォームで走っていることが余計にシュールさを加速させていた。


「ああ、もう、ネットに「爆走する魔法少女w」ってかかれるんだ。」


流石日本人、ちゃんと道路を開けてくれる。走りやすい。まるでモーセだ。

うん、目立つ、すっごい目立つ。スマホ向けられてるし、撮られてるよね。あれ、肖像権侵害だよね。


「右に曲がりまーす!道を開けてくださーい!ご協力をお願いしまーす!」


しかし、止まるわけにはいかない。1秒でも早い到着で救える命もあるのだから。

現場まであと少し、少女の頬は少し赤らみ目からは涙がにじんでいた。


避難する人だかりが見えてくる。人を轢かないようにペースを落とし声をかける。


「天原支部所属、C級魔法少女ブルームです!道を開けてください!」


人込みの中でも聞こえるようにハキハキと大きく声をかけながら人の波に逆らって歩く。


ブルームはやっとの思いで現場に到着した。


「ふう、さてと敵は?」


報告にあったC級魔獣オークの姿はなく、黒い男が一人、佇んでいた。

細剣を抜き、警戒する。


「何者ですか?」


男はきょとんとした様子で首を傾げた。


「へ?あ、ああ、待ってくれ、敵じゃない。」


どこか間の抜けた声だった。


「えーと、見たことないか?

ここは初めてだが近場じゃ有名だと思うんだが、、、」


黒い鎧に兜には一本の角

見覚えがある。


「黒い全身鎧、違法魔法使い虹マスか。」


「い、違法魔法使い、、、」


露骨に傷ついたような声が返ってくる。

そして男は大仰なポーズを取った。


右手を顔の前へ。

左手を腰へ。

腰を反らし、


高らかに名乗る。


「黒き漆黒を纏いし暗黒の騎士! 仮面ライダー虹マスとは俺のことだ!」


ビシッ、と決めポーズ。


うん。


絶対ドヤ顔してる。仮面で見えないけど分かる。


あと何だ?黒き漆黒を纏いし暗黒のーって黒いのは分かったって。

情報が一個も増えてないじゃない。


それに虹マスって、ここまで黒を強調しておいて、

虹なの?

黒なの?

それとも魚なの?


「魔獣は?あなたが倒したの?」


突っ込んだらもっと面倒なことになりそうな気がした。


「いや、俺も到着したばかりでな。ほら、あれ。」


虹マスは指をさす。そこにはもはや原形をとどめていない肉片があった。


「既にあの状態だったぜ。

どうやら、俺以外にもフリーのヒーローがいたようだな。」


虹マスは腕を組み、


「フッ、面白い。」


愉しそうに妄想を膨らませる隣と違い。

これから書かないといけない報告書と面倒事の予感に頭を抱えていた。


「とりあえず、虹鱒さんでしたっけ?」


「ん?」


「重要参考人として天原支部へ同行をお願いします。」


地面からツタを生やし虹マスを拘束しにかかる。


「おっと、可愛い女の子からのお誘いは本来大歓迎なんだが、

お生憎様、魔法省には近づくなと主が仰せでね。」


しかし、華麗な身のこなしでツタを躱し軽口をたたく。


「じゃ、またね。ブルームちゃん。」


「はあ、捕らえるのは難しそうだな。」


ふざけた態度とは裏腹に噂通りかなりの実力がありそうだった。

B級魔法使い並み、その評価は過大評価じゃなさそうだ。


違法魔法使い 虹マス

自身を仮面ライダーという旧時代のヒーロー番組のヒーローと名乗り、四国中国地方を中心に各地を転々と巡りながら人助けをする。


「主ね。」


政府に虹マスが危険視されている理由はこれだ。虹マス本人は善人だ。

しかし、主は違う。反政府的思想を持っていると思われ、正体も目的も。

そして、どれだけ虹マスが従うのか。そのどれもが不明な以上。

虹マスは危険因子である。


「それに、この死体。」


更に、魔獣を倒した魔法使いも気になる。

虹マスの他に違法魔法使いの話は聞かないし、恐らく今、覚醒したのだろう。

しかし、何故逃げた。急いでたり錯乱していたならまだいい。落ち着き次第登録に来るだろう。


問題は、、、逃げる理由があった場合、新たな違法魔法使いの誕生だ。

最近、魔獣出現予測指数も高止まりが続いているし、戦力が増えるのは有り難いが、


「はあ、」


C級魔獣の上半身を吹き飛ばす名乗り出ない謎の魔法使い。B級魔法使い並みの力を持つ違法魔法使い。高止まりの予測指数。

胃痛薬を買いたさないといけない気がしてきた。


ブルームはため息をつきながら、瓦礫に下敷きになった人がいないか探し始めた。

違法魔法使い

国際魔法機構WMO(World Magical Organization)に登録していない魔法使い。悪質な者には懸賞金がかけられている。


国際魔法機構

始まりの日があった2000年に創設された国際組織。

局長モルガナ・アッシュフォードはS級魔法少女として活躍しながら組織の運営を行っていた女傑。

現在は魔法少女は引退し、局長業務に専念している。

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