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ひとみ先生の眼科診察室  作者: らな


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第21話 中野さん

「中野和江さーん。おはようございます。」

診療助手の陽子が患者さんを診察室に呼び入れた。

「中野さん、おはようございます。お変わりはありませんか?」

ひとみの言葉に中野さんは頷いた。

「ええ、おかげさまで順調です。」


中野さんは86歳のおばあちゃんだ。右目の目の奥の血管が詰まる病気と両目の緑内障という病気があり長い間治療に通っているのだ。

「そうですね。視力もお変わりないですし、眼圧も上がってませんね。」

ひとみは診察室に入る前に済ませた検査の値をチェックしながらそう言った。

長年通院してもらってるので、お互い和やかな雰囲気で会話が続いた。


「先生。今日この後にね、みっちゃんと麻布商店街の小料理屋にご飯に行く予定なの。」

麻布商店街は眼科の近くの寂れた商店街だ。

そして、みっちゃんというのは福田美代さんといって中野さんの中学の同級生である。

ひとみが生まれる前から、70年以上友達同士ということになる。

福田さんもひまわり眼科の患者さんで、お互いを”かずちゃん”と”みっちゃん”と呼び合っている。この年になって仲の良い同級生と集まれるなんて素敵だなといつも思っている。


しかし、2人ともかなりお互いの個人情報が駄々洩れなのである。

この間、福田さんが言っていた。

「かずちゃん、乳がんしてるでしょ。血圧も高いし、で、・・・。」

中野さんも負けていない。

「みっちゃんは、独身なのよ。だから歌を教えて生計を立てているの。糖尿もあって、足の指切っていて・・・。」


お互い、こんな色々病院でばらされてるの知ってるのかしら・・・?

仲が良いのは間違いないのだけど・・・。


内心、そんなことを思いながらひとみは笑顔で答えた。

「それはいいですねえ。福田さんにもよろしくお伝えください。」

「でもね、本当は同級生6人で集まる予定だったのに、みんな腰が痛いとか足が痛いとか言って結局二人しか集まらなかったの。年を取るって嫌ですね。」

中野さんは足腰もしっかりされていて、服装もいつもおしゃれだ。

「そうですね。」

返答に困る内容に苦笑しながら相槌を打った。


この年で同級生が6人も連絡取れるなんて、ある意味すごいわね。


内心そんなことを思いながら診察を進めた。

「所見もお変わりないので、いつもの点眼薬をお出ししておきますね。お変わりなかったらまた3か月後に診せてくださいね。」

「はい。ありがとうございました。」

中野さんは、駅前の百貨店で時間をつぶしてから福田さんと会うと言い残して診察室を出て行った。


私の話も、食事のネタになってそう・・・。

何を話されているのやら・・・。


ひとみは戦々恐々と中野さんを見送ったのだった。



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