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ひとみ先生の眼科診察室  作者: らな


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14/21

第14話 瀬川さん

「瀬川百合さーん。おはようございます。」

陽子が瀬川さんを呼び入れた。

瀬川百合さん、55歳。

受付での問診を見ると、今日はコンタクトレンズの処方希望で受診され目の不調はないとのことだった。


「瀬川さん。ここにお顔を乗せて下さい。」

細隙灯では主に目の前の方を診るのだ。

「黒目や白目、粘膜など目の前の方は問題ありませんね。」

次に倒像鏡というライトとレンズを用いて目の奥を診た。


「!」


眼底と呼ばれる目の奥が血だらけだった。白斑と呼ばれるもやもやした白い斑点も沢山出ている。

「瀬川さん。糖尿病とか高血圧とか何か治療中のご病気はありますか?」

「えー、今は特に・・・。最近ふらふらするから受診しなきゃって思ってたんですけど・・・。病院に行ってないからわかりません。」

「目の奥に沢山出血しているところがあります。検査は早い方がいいので今から採血しましょう。結果をみて何科に紹介するか決めますね。」


ひとみが急いだのには理由がある。

総合病院で働いていた時に診た白血病の患者と眼底所見が似ていると思ったのだ。


怖い病気じゃなかったらいいけど・・・。


数日後、採血結果が出た。

ヘモグロビンの数値が異常に低かった。基準値が女性で11.3~15.2 (g/dL)の範囲内のところが4.0(g/dL)しかない。

ヘモグロビンは血液中に含まれるもので酸素の運搬をする役割がある。


即入(即・入院)レベルじゃない!


ひとみは慌てて受付から瀬川さんに連絡を取ってもらい、すぐに来院するように伝えてもらった。


来院した瀬川さんは相変わらず普通に歩いてやってきた。

「重度の貧血です。」

ひとみが伝えると、瀬川さんは思い当たることがあるような表情になった。

「ずっと生理が続いてて、更年期かと思ってたんですが・・・。」


内科と婦人科がある瀬川さんの家の近くの総合病院に紹介状を書き、すぐに行ってくださいねと伝えた。


後日、病院から届いた返事には婦人科系の腫瘍があり手術になったと書いてあった。

元気になって再びひまわり眼科を受診した瀬川さんは手土産を持って来てくれた。

「少しずつ出血したから自覚症状が軽かったけど、あと数日遅かったら死んでた可能性もあると婦人科で言われました。命拾いしました。ありがとうございました。」


眼科医になってそんなことを言われたのは初めてだったので素直に嬉しかった。

目の奥の出血も全て消えて正常に戻っていた。

それを伝えると瀬川さんは嬉しそうに帰って行った。



瀬川さんもそうだったが、意外と重症な人ほど普通の顔をして普通に受診にくるのだ。

”目が痛くて死にそうだ!早く診てくれ!!”などと大げさな訴えの人は意外と軽傷だったりする。

緑内障の急性発作や網膜剥離など、失明につながる疾患の人が案外のんびりと外来を受診されることがしばしばある。

先日は”最近、目やにが出て目が見えにくい”という主訴で診察室に回ってきた患者さんが網膜剥離だった。病名を告げると「目やにが黒目に引っ付いて見えにくいのかと思っていた。」と驚いていた。


「とりあえず治る病気で良かった・・・。」

瀬川さんが帰った後、もらったお菓子をつまみながらつくづくそう思ったのだった。




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