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ひとみ先生の眼科診察室  作者: らな


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11/21

第11話 崎浜さん

「崎浜陽一郎さーん。おはようございます。」

崎浜さんは55歳。サルコイドーシスという全身臓器、眼、皮膚、神経など全身のさまざまな部位に炎症が生じる難病を患っている。

病気のせいもあるかもしれないが生活保護を受けており、全体的にアウトローな雰囲気を漂わせた男性だ。


サルコイドーシスは肺にも出やすく、崎浜さんも肺症状が出ていた。

にもかかわらず飲みに出歩いて階段から落ち骨折したり、昨今世界的に流行ったウィルスにも感染し、肺病状はさらに悪化したようだ。

どうしようもない人なのだが、何か憎めないところがある人だった。


目は過去に強い炎症を生じたため二次性に緑内障を併発してしまい、両眼とも緑内障の手術も受けている。

現在、目の病状は落ち着いており1~3か月くらいのスパンで自分の来たい時に適当に受診しにくる。決められた時にくるのは苦手の様だ。


「最近、目の方はどうですか?」

「ぼちぼちかなあ。」

崎浜さんは頭をかきながらそう答えた。


何気なくその手に目がいった。

小指が途中から無い。

「・・・。」

ひとみの視線に気づいたのか崎浜さんは慌てたように言った。

「ちがう、ちがう。これは昔バイク事故でやってん。」

「そうなんですか?大変でしたね。」

「先生、信じてやー。ほんまやで。」


崎浜さんの目はいつもと変りなく、いつも通りの目薬を処方して帰って行った。


崎浜さんが帰った後、ひとみは自分が大学病院で研修医をしていた時のことを思い出していた。

坂田さんという40代くらいの男性患者さんのことだ。

坂田さんも小指が無かった。


ひとみは年配の主治医の先生の下で、副主治医として坂田さんを担当していた。

坂田さんも炎症が目に出る病気だった。

診察しようと、個室に入院中の坂田さんの部屋を訪れた。


コンコン  

「坂田さん、ひとみです。」

ガラッ


目の前には、Tシャツを脱いでいる最中の坂田さんがこちらに背中を見せて立っていた。背中一面に桜吹雪と真ん中に大きな鯉の入れ墨が入っていた。


「せんせー。ノックしたら、はーいって言うの聞いてから開けてや。女とよろしくやっとったらどうすんねん。」

例えは今一つだが、言っている内容はもっともだ。ひとみはすぐに謝罪した。

「え、ああ。すみません。これから気を付けます。」


もともとあまり気にしていなかったのか、すぐに謝ったのが良かったのか、坂田さんは自慢げに背中を見せてきた。

「格好ええやろ。」


確かにすごい・・・


「ええ、すごいですね。」

ひとみは心から相槌をうった。


崎浜さんにしろ坂田さんにしろ、一見アウトローで怖そうな人も親しくなると意外といい人だったりするのだ。


あれから10年以上経ったけど、坂田さん元気にしてるかなあ・・・。

ひどい糖尿病だったけど、まさか他の指がなくなったりしてないよね・・・。


そんなことを考えながら、次の患者さんを呼び入れたのだった。





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