表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

1

人に名前を与えると、その人は死ぬ。


それが、この世界の決まりだ。


だから誰も、名前を持たない。呼びかける時は指差し、あるいは役割で呼ぶ。「あなた」「そこの人」「看守」「母親」。それで十分だった。名前がなくても生活は回るし、むしろその方が長く生きられる。


それでも例外がある。


名を与えなければならない人間がいる。


私だ。


机の上には一枚の紙と、まだ何も書かれていない帳簿。隣にはインクとペン。それだけ。部屋は無機質で、窓もない。ここで私は名前を書く。


書かれた瞬間、その人は死ぬ。


「次」


扉の向こうから人が入ってくる。顔色はみんな同じだ。理解しているのだ。この部屋の意味を。


私は目の前の人を見る。年齢も性別も、できるだけ意識しないようにしている。感情を持つと手が止まるからだ。


「名前を決めます」


それだけを告げる。


相手は何も言わない。ただ、こちらを見る。


私はペンを取る。


ほんの一瞬だけ、手が止まる。


それでも、書く。


名前を。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ