俺と聖母とシャイニング魔法使い
※初見用用語解説
領国:この世界で言う国。王政と国政を足して2で割ったような感じで王国が首領、大統領の様に自治範囲分の町村を持つ。
E:この世界のお金。単位である。
ガラテンの提案は正直な話物議を醸すものだった。
バカな男共は俺に降りかかった展開に羨ましがっただけだったが、その治療方法に抵抗があったのは俺とナナミだ。
家族の代役をするにしろ役目としては女性の方が良いのではという内容に勿論なった。
だが大男の言い分としては仲間内の出来事は仲間内で解決した方が良いことと、一番密接に関わった続柄の人と似た環境の方が治りやすいという内容だった。
今回の状況だと兄と似せないといけない為俺の方が良いということだそうだ。
色々抵抗もあった。だがそれ以上に俺自身他に思うこともある。
ミカの現状が一人で野営生活を行っていたことに正直自分としても見逃せない状況ではあった。
慣れているとはいえ女の子だ。危ない事も多い。
そんな状況が続くのであればまだ俺とトラブルがあった方が遥かにマシと言わざるを得なかった。
それに俺自身も、このストレスに堪えないと今後もっと耐え難い状態があるはずだ。
少しでも慣らさないと精神的に死ぬかもしれない。
この生活は、俺の修行でもある。
「ヘックシュン!」
だから俺はガラテンの無茶な提案を受け、こうして水に濡れてニッチな需要のあるくらいの大き目のくしゃみをした彼女と共に焚火で暖を取っている。
今日で野宿開始から二泊目。
昨日目覚めた後見たのは体を縮めながら焚火をしている所が初めの光景だったが、今度は事件現場に鉢合わせ全てを悟ったという訳だ。
現世で体験したキャンプでも不便と思う中、それよりも辛い環境で、あまつさえ色々と危ない要素と気にしなきゃいけない。
平和ボケした世界で育った慣れない自分からしてみれば辛いものだ。
果たして俺はこの生活に慣れる事は出来るのだろうか。正直かなり不安である。
まあそれでも状況はかなり進展し始めている。
何せ今まで領国の中さえ動き回る事が出来なかったのだ。それが出来る様になるだけでも本当にありがたい。
それに魔法使いがようやく魔法を使えるようになり、共にするメンバーも一人増えた。
そう思えばこれくらいの苦行は安いものではある。
裸火で熱しているケトル型の鉄瓶を取り、木製カップに注ぐ。
そして寒がっている彼女に差し出した。
「あ…ありがとうございます」
二度息で冷まし三角座りでスッと飲んだ。
身が染みた様な息を吐き朗らかな顔をした。
様子を眺めているのを感づかれミカはこちらを見る。
表情は心配そうな物へと変化した。
「どうして悲しそうな顔を?」
一言に気づかされ俺は笑顔で取り繕う。
重なってしまっていた。
由奈は芸術面に特化していたせいか色々俺に頼る事が多かった。
その内の一つに紅茶とコーヒーを入れてくれというのがあった。
どっちも飲めるが寝たくない時はコーヒーらしい。その上激甘党なためどちらもミルク多め砂糖増し増しでしか飲めないが頼まれる。
頼まれて入れてあげた時のホットで飲むときの仕草が重なって思い出した。
ソファや背もたれの高いチェアで飲むとき、三角座りをし身を縮めながら飲む。
今回は地べたで座っているからというのもあるだろうが不意に過ってしまった。
「……懐かしかったんだ」
「そ、そうなんですね」
聞き辛かったのだろうか。少し不器用に話が途切れ静寂だけが流れた。
しまった。少し失敗した。せめて俺から何か話しておくべきか。
「そ、そういえばさ。あの、あれだあのー」
……駄目だ。何も言葉が出てこない。
酒で酔ってると言わんばかりに言葉が詰まった。
どうする俺。頑張って言葉を捻って出してくれ。
「今日の、あれを……その……」
「あの」
突如想定しておらぬ方向から声が聞こえ思わず振り向いた。
そこに立っていた女性は聖母かと錯覚するほどの見目麗しいブロンドの髪のシスター だった。
スカート部分の左側にスリットが入っていたり、右目が目隠れになるほど前髪が長かったり。あと旅をしてるのか背中の大きめのリュックを背負ってたりといくつか清楚とは違う部分もあるが、下品という訳ではなく何故かそれが自然かのように清潔さを際立たせている。
言葉を借りるなら、遊女になったらエンジェルの羽がバレたという言葉が相応しい。
天使の見れない様相を脱がせて見たような背徳感を感じるということだ。
「天使……」
余りの神々しさについ言葉が止まらなかった。
形容した表現がかなり恥ずかしい物だった為に更に恥じらいが生まれてしまって言い訳を並べた。
「すいません! 今つい本音が、というか滑っちゃいました。その、かなり神々しかったものでその……すいません」
たじろいだ俺の姿に女性もふふっと微笑する。
「お気になさらず。綺麗と言われて嫌がる女性はいませんよ」
「そ、そうですか。でもすみません」
「いえいえありがとうございます。……所で、良ければ私も休憩させてもらって良いですか? ここまで徒歩だったもので」
「それならどうぞ!」
「ありがとうございます」
お礼を言うと彼女は俺たちの対面に荷を下ろし横座りする。
隣を見ると無愛想な顔で地面を見ていた。
理由は何故かは分からない。だが突然の来客の為それを探るにしても今は厳しいので後回しにするしかない。
「もしかして恋仲ですか?」
『ふえぇ?!』
シスターの言葉にたじろぐ自分達
「何故そう思われて?」
「そこの可愛らしい方が様子がおかしかったので、私が邪魔してしまったのかと不安になってしまいました」
「す、すみません。私結構シャイニングなんです」
「内気過ぎて陽気! シャイで止めてくれ!」
ミカのテンパりに思わずツッコミ、聖母がクスクスと笑った。
「見た目も可愛いと思ったら中身も可愛いですね。抱きしめたくなりました」
「あ、ありがとうございます。……所で、シスターさんはどうして旅を? 見たところ本職の聖職者様ですよね?」
「今は魔王の手が深く届く時代です。少しでも皆の者に救いを伸ばすべく巡業しているのです」
今までのナナミとの会話を思い出しながら話を理解していた。
この世界でも宗教はやはり存在し、地球で最も大規模の神の子のいた派閥と同様に、カナンナではトワイライト教と呼ばれる宗派がそれに当たる。
元々別の名前だったらしいが、再興の際その名に変わり大規模な宗教団体へとなったそうだ。
そして地球の仕組みと違うのは、この世界には聖職者は2種類存在する事だ。
一つは神に従事する本格的な聖職者。
もう一つは冒険者としての聖職者だ。
聖職者になった者だけが使用できる魔法、主に回復魔法になるのだが、それを覚える為に最低限殉じる者となる。
つまり本当に従してる人より信仰の制限が少なかったり教会からの指示に縛られなくても良いとの事だ。まあ貢献しておけば良いことがあるらしいが。
ミカの言葉は、このシスターは前者でナナミは後者という意味で言ってるのだろう。
その言葉を聞くとシスター は優しげに答える。
「へー。流石聖職者様って感じですね」
「そんな……大したことなどしておりません」
「立派ですよ! 自分も苦しいはずなのに他の人に手を伸ばすなんて普通できません」
「でも未熟な事には変わりありませんので……」
そう言うとシスター はいつぞや何処かで見たことがあるようにぎこちなくなる。
あれは確かミカが魔導書の資金集めを手伝ってほしいと頼んだ時だったか。その時と一緒だった。
「実は私、困っておりまして。……先程滞在した町で孤児院に寄付しまして。その時に計算を間違えてしまい……馬車にも乗るお金がないのです」
「何だって?!」
これは大変だ。馬車に乗れないってことは一泊出来るかどうか。
食事なんてままならないかもしれない。
「良かったら少しお渡しします」
「そんな?! それは流石に恐れ多過ぎます!」
「何を言ってるんですか! 貴方みたいな方が居なくなったら誰が困ってる人を助けるんですか!」
彼女へ抱く熱意を思い切りぶつける。
しばらく考えて答えが出たのか、話し出す。
「お金を頂くのはやはり恐れ多いです。……ですが、貴方の気持ちを無下にするのも駄目ですよね。……だから、こうしませんか?」
彼女は隣に置いたリュックの中からとあるネックレスの小細工を取り出した。
「良ければ私の所持品を買ってもらえませんか?」
なるほど、俺が質屋になれば良いのか。
それくらいならお安い御用だ。
「これとかどうでしょう。エルタージュのサニアの街で買ったネックレスです。不思議な力が込められていてるらしいので2000Eで頂いたものです」
少しばかり高いな。流石にその小細工一つで効果を期待しろと?
だとしては些か値が張る。
でもシスターを死なせるわけにもいかないしな。
「持ち合わせを確認してきます。少し待っててください」
そう言って俺はテントの中に入る。
とても清楚なシスター 登場!
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