6 事件について
すみません。解決は次回パートに持ち越しです。今回は回想です!
「こんにちは。わざわざお越しいただいてすみません。三橋由貴です。どうぞこちらへ。」
私たちが玄関口から家内へ入ると直ぐそこに細身で黒髪ロングの女性が正座で待っていた。
「えっと三橋さんですか?」
「えぇ。初めましてではないですが、こんにちは。橘君。」
私の事を知っているようだ。まぁ学年1位だし知られててもおかしくはないけど。
「会長もこんな家ですが上がってください。私の部屋でお話します。」
三橋さんはそういって階段を上がり2階へと上がって行った。
「この家って築何年ですか?随分古い階段の作りですけど。」
階段は1段1段が急で今の階段とは大違いの構造で、全てが木造になっている。チラッと見えたが階段の下は収納スペースらしい引き戸もあった。
「そうですね。多分50年ぐらいは経ってますね。祖父母が結婚する時にこの家を建てたらしいです。」
私たちが2階へ上がるとそこには1つの部屋があった。2階は三橋さんの部屋だけらしい。
「女性の部屋に入るのは始めてで少し緊張します。」
「南条君の部屋には入ったことあるんじゃないのか?」
「あいつの部屋は女性の部屋って感じじゃないんですよ。なんていうか、ギターとかロボットの模型とかがあるんです。」
「私の部屋も普通ですよ。と言うかあまりジロジロ見られると恥ずかしいですが。」
三橋さんの部屋はピンク基調の部屋作りだ。可愛いクマの人形まである。そして元パソコン研究会の部員だった事が分かるパソコンの数。
普通の家ならば1家に1台あればいいが、この部屋だけでもディスプレイが2台。ノートパソコンとデスクトップパソコンが1台づつある。
「ディスプレイが2台もあるんですね。凄い。」
「まぁ。パソコンを弄っていると、このウインドウは開いておきたいと思ったりするので退避用に。」
私も会長も女の子らしい部屋よりもパソコン機材に釘付けだった。
「どうぞ座ってください。立ち話もなんなんで。お茶とお菓子もどうぞ。」
「あ、どうもありがとうございます。さ、会長座りましょう。」
私は会長に座るよう促しお茶が出されたところへ座った。
「さて・・・。何から話せばいいか・・・。もう相談カードは見ていただけたんですよね?」
三橋さんは部屋の扉を閉め私たちの対面へ正座した。
「あぁ。君がウイルスを当時部長の長船に依頼されてUSBに仕込んだんだね。」
「――はい。私がしました。今ではとても後悔しています。」
「後悔か・・・。」
会長は深くため息をつき三橋さんの方へ顔を向ける。
「後悔していたならなぜもっと早く打ち明けない。相談カードではなく直接赤木や広瀬達に話せばよい話だろう?」
「それは・・・。」
そのまま黙ってしまった。
「会長。三橋さんも苦しんだと思いますよ。自分が行った行為でパソコン研究会は名前が売れましたが変わりにゲーム制作部は壊滅してしまったんですから。そんなに責めなくてもいいじゃないですか。」
「橘君・・・。それはわかっているんだよ。でもここで一度彼女に迫っておかないと、真実を隠されると困るんだよ。長船を追い詰めるなら明確な証拠が必要だ。」
会長の目はいつになく真剣で、その言葉の重さに私は何も言えなくなってしまった。
「じゃああらためて聞こうか。君が犯した罪について。」
「はい・・・。」
三橋さんはあの日のことを話し出した。
◇パソコン研究会部室
「おい、このゲームのバグは予定までに直るんやろうな?」
「全然余裕ですね、長船部長。」
「おお、唐沢か!なんやそない余裕なんか!」
「ですね。我々だけでも十分ですよ。」
「おっしゃ!このゲームはパソ研とあいつらの合同やが、かなりおもろいゲームや。これが表にでれば絶対有名になれるで!次の1年生も入ってきてくれるはずや!」
「そうですね。しかし部長。勿体無くありませんか?」
「勿体無い?それはどういうことや?」
「先程も申しましたが、我々だけでゲームを完成させることは容易なんですよ。」
「そないなこと言ってたな。でもそれがなんや?」
「ゲーム制作部を出し抜いて我々だけで完成させ発表するのはどうでしょうか?」
「しかし、それはあんまりやないか?三石たちは確かに気に食わんところがあるが腕だけは確かや。」
「それだと手柄はゲーム制作部に持っていかれて、来年うちの部員確保だけでなく部費確保も難しくなりますよ?いいんですか?部長はいいかもしれませんが、残される私たちの身にもなってください。」
真に迫る唐沢。
「――わかった。お前の案を起用するわ。でもどないするんや?出し抜くて。」
「そうですね。ここは出し抜くよりもドロップアウトしてもらいましょう。」
「ドロップアウト?活動休止にでも追い込むんかいな?」
「まぁ実際は似たようなものですね。私に作戦があります。」
唐沢は長船に耳打ちし作戦を伝える。
「なるほどな。仮にバックアップがあってもショックが大きいっちゅうわけか。」
「そうですね。問題はアレを作る人材です。」
「せやな。うちらの部にそないなテクもっとるやつおるか?」
「一人検討がついてます。」
「誰や?」
「三橋由貴。」
唐沢は三橋由貴の名前を出した。
「三橋にそないな事できるんかいな。信じられん。」
「大丈夫ですよ。私に任せてください。」
「ほな頼むわ。ちゃんと三橋に作るよう伝えといてな。」
長船は唐沢に頼み部屋を後にした。
長船が部室を出た後、唐沢は部室をきょろきょろと見渡した。
部室の隅に設置されたパソコンを前にプログラムを確認する三橋の姿を見つけた。
「やぁ三橋。調子はどんなだ?」
「唐沢君。どうって言っても相変わらずだよ?小さいエラーの積み重ね。対処が大変だわ。」
「そうか、ところでちょっと話したいことがあるんだが、今いいか?」
「え、私に?」
「そうだ。部長からの伝言を預かっているんだ。」
「うん、分かった。」
唐沢に上手く誘導され準備室へと入る2人。
「三橋はこのゲームどう思う?」
「このゲーム?モンクエのこと?面白いよ。今までやってきたゲームよりもね。」
「そうだよな。」
「それで、部長からの伝言って?」
「あぁ、部長はこのゲームを我が部活の手柄にしたいと言っている。そしてゲーム制作部には機能不能状態になってもらうと。」
「手柄・・・?え、い・・・一体どういう事?」
「このゲームは必ず賞が取れる作品だ。しかしこのまま行けば手柄はゲーム制作部のものになる。来年の僕らの事を考えた部長は部員確保や部費確保のため苦汁の選択をしたんだ。」
「私たちのために・・・。で、でもどうやって出し抜くの?」
悪い事だと思っていながらも自分達のために苦渋の選択をした部長に感動した三橋。
「これを使うんだ。」
唐沢は一つのUSBを取り出した。
「これは?」
「ウイルス入りのUSBだ。これにはバグリストデータが入っている。これを君に渡すから君から部長へ渡してくれ。」
「え?ウイルス?そこまでするの?そこまでしないといけないの?」
「当たり前だろう?これは部の存続を掛けた大勝負なんだ。三橋。お前も分かってくれよ。」
三橋はしばらく黙っていたが自ら口を開いた。
「わかった。それでいいんだよね。やるよ。」
「ありがとう。頼むよ。」
◇
そしてあの事件が発生したわけか。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回は体調不良もありますので水曜日更新予定です。
時間は20時もしくは22時に更新します。
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