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運命の経済学 Economics of Fate  作者: キズナ
第3章 損失回避とバイアス
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4 損失回避

第3章の重要な話が出てきます。

 「彼らが怒る理由は分かった。でも考えてくれ。彼らのゲームは発表したのがパソコン研究会だっただけであってゲーム制作部が作ったものだ。つまり評価された事に間違いはないわけなんだよ。」

 「でも、やっぱり自分達で発表して評価されたかったんじゃないですか?」

 「南条君、じゃあ一つ君に問題だ。」

 「私が君に1万円の価値がある株券をあげるとしよう。もちろん理由は抜きにしてだ。でも、その株券の価値がある日0円になってしまったとする。君はどういう気持ちになるんだ?」

 「え・・・・・・そうですね。私なら1万円のうちになんで現金化しなかったのだろうと損をした気分になりますね。」

 「そう。それなんだ。」

 「どういうことですか?」

 「南条君は元々手元になかった株券を失っただけ。つまり株券をもらう前の状態に戻っただけなんだ。しかし、君は損をしたと思った。これを損失回避と言うんだ。」

 「損失回避ですか・・・。むしろ損失を意識した行動ですよね。」

 「そうだ。だから人は損失を利益より重要視してしまうんだ。」

 「元々の形に戻っただけなのに・・・。なるほど、不思議ですね。」

 「それにこの損失回避は本来なら同対価についてなんだが、行動経済学ではこんな話がある。」


 A 必ず当たる100円

 B 50%の確率で当たる200円、残りはハズレ0円


 「あれ?これってやりませんでした?リスクの話ですよね。」

 「そうだ。だがこの話は続きがある。」


 A 必ず100円の罰金を払わないといけない。

 B 50%の確率で200円を払わないといけないが残りは免除される。


 「これだとどうだ?」

 「え・・・。Bの方ですか?」

 「さっきリスクの話をしたと思うが、リスクを重視するのであればAを選択するはずなんだ。なぜなら、50%の確率で倍払うって考えればそっちの方がリスクがあるって考えるだろう?なら大人しく100円払えばいいって。」

 「言われてみればそうですね。でも50%の確率で免除されるなら・・・。」

 「そこが違うんだ。人は損得で価値の感じ方が変化するんだ。お金がもらえるならAお金を払うならBってかなり都合がいい話だろ?得と損で価値が変わっている証拠さ。これをプロスペクト理論って言うんだ。」

 「プ、プロスペクト・・・?」

 私たちは会長と栞の会話についていくのに必死だ。


 「お姉ちゃん。でもそれがこのゲーム制作部とパソコン研究会のいざこざにどう関係しているの?」

 「響、お姉ちゃんの話をちゃんと聞いていたか?」

 「え?」

 「ゲーム制作部はゲームを作っていた。たとえパソコン研究会が手伝ったとしても大部分はゲーム制作部が作ったと考えていい。そしてその『ゲーム』は賞を取るほど評価をされた。しかし、この『ゲーム』はパソコン研究会に取られて、発表したのもパソコン研究会だったわけだ。これをさっきの話に置き換えてみてくれ。」

 「えっと・・・、ゲームが評価された事が得でゲームを取られて発表された事が損って事?」

 「そうだな。そして彼らがなぜ怒っているか。」

 今までの話を統合すると先が見えてきた。


 「つまり、評価された事よりも自分達で発表できなかった事を重視しているから、ですね。」

 「その通りだ、橘君。」

 「でもそれだと解決方法は・・・ないですよね?」

 「そうだな。明確なものはないが、次のステップに進む事は出来るぞ。それにパソコン研究会の嘘もちゃんと正さないといけないしな。」

 そういえばそうだ。すっかりあの嫌味ったらしい部長の鼻をへし折る事を忘れていた。


 「会長、でも証拠は・・・。」

 「ふふふっ、さっきも言っただろう。この書類だ。」

 会長はテーブルに相談ボックスに入れられた書類を並べた。


 「会長!これって・・・。」

 「そうだ。」

 「僕の相談書類が入ってるじゃないですか!!!」

 そこに書かれていたのは相談人高峰日高と書かれた相談カードだった。


 「高峰、一体何書いてるんだよ・・・。」

 「どうせ変態なことでしょ?『もっと鋭い視線を浴びたい』とか『注目を浴びてそのまま罵られるためには』とかでしょ。師匠のことだし大体察しがつくわ。」

 本当高峰と絵美ってどんな関係だよ。

 

 「流石絵美君だ。私の正妻にしてあげよう。喜びたまえ!!」

 「死ね!!」

 絵美の右ストレートが見事に高峰の左頬にクリーンヒットした。


 「さっ、あんなやつほっといて続きしましょう?」

 強くなったな・・・絵美。私は誇らしいぞ。・・・でも私にはそのパンチをしないで欲しい。


 「コホン。話を続けるぞ。これを見てくれ。」

 会長はいくつかある資料の内1つを指差した。


 「これは・・・。相談者:三橋由貴みはしゆき?誰?」

 祐二は頭をかしげた。

 「私たちと同じ2年生ですね。確か5組。もとパソコン研究会の部員だったかと思いますが。」

 高峰・・・復帰がお早いようで。


 「この三橋さん?の相談っていうのがこのいざこざに関係があるってことですか?」

 「そうだ。まぁ読んでみればわかるさ。」

 私たちはその相談カードを呼んでみることにした。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

皆さんもこのプロスペクト理論について考えてみると新しい考えが生まれるかもしれませんね。


次回更新は明日夜8時予定です。(土日は8時にしました。)

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