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運命の経済学 Economics of Fate  作者: キズナ
第3章 損失回避とバイアス
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2 ゲーム制作部の事情

今回から調査パートです。解決パートにて行動経済学的な話を出す予定です。

◇生徒会室◇



 「さて、この資料の中でどの相談を受けるか、だが。皆はどう思う?」

 「あのぉ…私この高校の生徒ではないんですが、ここに参加しててもいいんですか?」

 「俺も一応部外者なんだよな。これって見てると生徒会案件が多いんだよな。」

 「何、問題ないさ。絵美君はこの高校を受験するんだろ?なら来年はここの生徒みたいなものだ。構わないだろう。君の成績は南条君が保証しているだろうからな。原田君についてもこの相談箱案件はこの部で引き受けるんだ。この部の部員である君はもう部外者ではないのさ。」

 会長は絵美と祐二の疑問に明確に答えた。

 


 「改めて、最初に受ける相談はどれにしたら良いかい?」

 「色々ありますよね。全く関係のない話から部の話しだったり…。あ…これ。」

 「橘君、どうした?何か良い相談はあったかい?」

 「いえ、この部費を増やしたいって書いてある相談なんですけど。」

 「ゲーム制作部か。あの事件があった部だな。」

 「事件?何かあったんですか?」

 「あぁ南条君や響は知らないかも知れないが、2月にゲーム制作部とパソコン研究会の部活間でもめ事があってね。お互いの部にそれぞれペナルティが科されたのさ。」

 「でも、何で部費何でしょうか?」

 「それは私も分からない。経緯も含めて、この相談を最初の相談として受けてみようと思うが問題無いだろうか?」

 「問題無いわ。」

 「問題ないです。」

 会長の決定に対して文句を言える人はこの中だと髙橋先輩ぐらいだが、その先輩も了承してくれた。もちろん私も了承した。



 「では各々お昼を済ませて生徒会室へ午後1時に再度集合だ。」

 「え?皆で一緒に食べないの?私サンドイッチ持ってきたけど。」

 髙橋先輩は皆で食べるためにサンドイッチを持ってきてくれたようだ。

 「私も持ってきました…。」

 響さんは大きなお重箱を3箱机に出してくれた。



 「響、いつの間に…!?」

 「流石先輩方…じゃあ俺も披露するしかないな!!」

 祐二が大声で何かを言っている。

 「原田君何か持ってきてくれたの?」

 祐二が持ってきたものに食いつく髙橋先輩。

 「たぶんアレだよな?栞。」

 「たぶんアレですね、大和君。」

 「なんだアレとは。気になるではないか。」

 会長が気になっているので祐二が出す前にネタばらしをする事にした。



 『にぎり寿司』

 私と栞は声を合わせてそう言った。



 「え?どういうことだい?」

 「僕も気になりますね。」

 会長も高峰も気になって仕方ない様子だ。



「祐二の家は寿司屋なんですよ。ほら『カジ鉄火』ってお店知らないですか?」

 カジ鉄火はこの近辺ではかなり有名なお寿司屋さんで上『美味い』『安い』『安全』をモットーにしている。祐二はそこの次男坊になる。

 「毎回このネタでやってくるんですよね。小学校・中学校でもそうでした。」

 私が祐二の寿司ネタについて話しをしていると、祐二が急に笑い出した。



 「こりゃ面白いぜ!今日こそは大和、お前をアッと言わせてやるからな。見ておけよ?」

 祐二が不敵に笑っている。まさか別の食材を持ってきたのか?



 「これを見よ!」

 祐二が大きなお弁当箱の蓋を開けた。私たちは何が出てくるのかわくわくしていた。



「………流石だな。これは驚いたが…。」

皆私と同じ反応をしていた。



 「祐二君、センスがないよ。」

 「確かにこれは少しな…。」

 「悪いわけではないのよ?ただ脂っこすぎるというか…。美味しそうなんだけど量も多いし…。」

 祐二が持ってきたのは揚げ物のオンパレード。そしてサーモンのカルパッチョ。女性が4人いる中でこの油物だらけなお弁当箱は見るだけでお腹いっぱいになりそうな程だった。



 祐二が両膝をつき肩を落とす姿は正に土下座ポーズと言わんばかりのきれいなフォームだ。



「お昼だし、いっぱい食べようではないか。」

 会長は何故か焦ったような言い方だ。お腹が減っていたのだろうか。


 そんなこんなでワイワイと昼を済ませた私たちは、ゲーム制作部の部室へと向かった。



 ◇ゲーム制作部


 コンコン


 ドアをノックすると何とも弱弱しい声でどうぞと一声返ってきた。

部屋に入ると、一人の男子学生がポツンと椅子に座って頭を抱えていた。



「君がゲーム制作部部長か?」

「え?えぇ…まぁ僕一人なんでそうなってるだけですけど…。」

「私たちは相談ボックスに入っていたあなた方の部費について詳しく聞こうかと思いここへやってきたのですが…。既に部としては、厳しい状況ですね。」

「あの時のボックスって生徒会へ通じていたんですね…。生徒会の方々なら、もしかすると…。いや、お願いです話を聞いてください‼」

その男子学生は相談ボックスを設置したのが生徒会だとわかるや否や顔色を変えた。



男子学生の名前は赤木蒼汰あかぎそうた。現在は私と同じ2年生だ。彼の話によるとゲーム制作部は3年生の三石俊介みついししゅんすけ広瀬遼太郎ひろせりょうたろうの2名を合わせて3人の部活だったようだ。

「僕があんな事を進言しなければ、ゲームも完成していただろうし、それに賞を取ったのは僕らのはずだったんです。そうすれば新入生だって入ったはずなんです…。何もかも全部僕が悪いんです。」


赤木は悔しそうにパソコン研究会がゲーム制作部にした事を話し出した。



「それであの火災報知器がなった事件に繋がるのか。赤木、お前は広瀬先輩が抗議に行ったときに立ち会ってはいないんだな?」

「原田…。あぁそうだよ。僕は三石先輩と2人でここで広報の作戦を練っていたんだ。」

「なるほど、よくわかった。赤木君。君の話で大分話が見えてきた。ありがとう。」

「あの…、部費の話は…。」

「その話はまた別だ。今年度の部費は各部活で支給されているはずだ。よく確認してくれ。」

「わかりました。」

赤木と話をし、私たちは部室を出た。



「会長?これからどうするんですか?」

「うむ、次はパソコン研究会へ話を聞きに行くぞ。」


ここまで読んでいただきありがとうございます!

ブックマークや評価等いただけたら嬉しいです!

最新話更新予定は明日の午後8時を予定しています。

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