海水浴中編⑥
会話を楽しみながらのんびりと作業を続けていると、不意にフェイトさんがなにやら考えるような表情を浮かべたあと、アイシスさんの方に視線を動かしながら口を開いた。
「……私さ、正直少し前まで、アイちゃんのことさ……まったく理解できなかったんだよね」
「……どういう……こと?」
「いや、ほらこうやって会話すること自体はほぼなかったけど、アイちゃんのことは前から知ってたわけじゃん。その上でさ、寂しいだとか孤独だとか言ってるのが、意味わかんなかった」
フェイトさんはそう言いながら手元に視線を戻し、作業を再開する。あくまで少し前まではと前置きしてから、どこか懐かしむような口調で話すフェイトさんに、アイシスさんも一度作業の手を止めて視線を向ける。
「……私の感覚ではさ、圧倒的強者が孤高なんてのは当たり前のことで、なんでわざわざ格下のやつらと仲良くしたがってんのか分かんなかった。強者と弱者が同じステージに立ってるわけないんだし、差があるのは当然。弱者が強者を恐れるのだってあたり前で、そのことを気にするなんて馬鹿じゃないのかって思ってた。いや、まぁ、コレに関しては私の視野が狭かったって話で、アイちゃんが悪いとかそういうことじゃないけどね~」
「……う、うん?」
「そんなわけ分かんないこと考える、アイちゃんは変なやつ……嫌いなわけでも好きなわけでもなくて、なんていうか表現が難しいけど……意味わからないおかしなやつってのが、少し前までの私にとってのアイちゃんの印象だったんだよ」
「少し前までってことは、いまは違うってことですよね?」
いつも通りの緩い口調ながら、フェイトさんの声はアイシスさんを貶しているようなものでは無く、むしろ表情なども見るとどこか苦笑しているようにも見えた。
そんなフェイトさんにいまのアイシスさんの印象を尋ねてみると、フェイトさんはチラリとこちらを見て、そのあとでアイシスさんに視線を動かしつつ告げた。
「……う~ん、なんていうか、アイちゃんて別に『普通』だよね。いや、別に悪い意味とかじゃなくて、普通の女の子って感じかな? もっとも恐ろしき六王だとか死の象徴だとかって、世間の評価はアテにならないなぁ~ってね。まぁ、これは私が死の魔力の影響を受けないからかもだけど」
「……ありがとう」
「うん? いま私、アイちゃんのこと褒めたっけ?」
「……さぁ? ……けど……私は……普通って言ってもらえて……嬉しかった……だから……ありがとう」
「ふ~ん。まぁ、それなら……どういたしまして?」
「……うん」
多くの人から、いやそれどころか世界中と言っていい規模で恐怖の対象と見られていたからこそか、アイシスさんはフェイトさんの普通という評価にとても嬉しそうな表情を浮かべていた。
その顔を見て、フェイトさんは少し沈黙したあと……アイシスさんと同じように楽し気に微笑んだ。
「……やっぱり、こうやって話してみないと分からないことってあるよね。うん、私、アイちゃんの性格……嫌いじゃないね。仲良くなれそう……せっかくの機会だしもっとお互いのことを知るべきだよね! ってことで、アイちゃんの趣味ってなに?」
「……趣味? ……本を読むことと……記念品を集めること……かな? ……フェイトの趣味は?」
「ないね! 強いて言うなら仕事をサボることだね!」
「それは趣味ではない気が……」
いろいろと語ってはいたが、つまりフェイトさんが言いたかったのは、アイシスさんのことをもっと知りたいと思えたということだろう。
なんというか、自分より遥かに年上で力も強大な相手に失礼な言い方かもしれないが、こうやって要所要所でフェイトさんの成長を感じられるのは、なんだか嬉しく、同時に微笑ましくもある。
そのままふたりは互いのことを雑談を交えながら教え合っていく。一言交わすごとに、ふたりが仲良くなっているようなそんな雰囲気がとてもよく、自然と俺も笑みをこぼしながら話に加わった。
結構性格的に正反対な部分も多い組み合わせかと思っていたが、どうにも俺が想像していた以上にアイシスさんとフェイトさんの性格的な相性はいいらしく、話はかなり弾んでいた。
「……じゃあさ、アイちゃんが一番好きなのは?」
「……カイト」
「ほうほう、てことは私と一緒だね~」
「……うん……一緒」
なんとなく雰囲気が柔らかいというか、お茶でも飲みながらのんびり話しているのが似合いそうなふたりである。
「……ところでアイちゃん、疲れたんだけど休憩しない?」
「……え? ……でも……まだ数分」
「いやいや、数分真面目に作業してるとか、私にしてみれば快挙だと思わない?」
「……う、うん……そ、そうかも?」
「ね! というわけで、休憩を……」
「いや、まだ早すぎるでしょう。せめてひとつぐらい完成させてからにしましょう」
まぁ、性格的の相性はいいのだろうが……放っておくと、間違いなく押しの強いフェイトさんにアイシスさんが流されてしまうので、完全放置というわけにもいかない。
いや、だって、たぶんここで休憩に応じたら、なんだかんだ理由をつけてぐうたらするだろうし、最悪日が暮れても作業が終わらない。
う~ん、なんというか……ちょっとクロノアさんの気持ちが分かったかもしれない。
Q、メギドと互角だったというオズマの強さは六王級?
A、封印状態のメギドは他の六王に比べて頭ひとつぐらい劣っています。それでも伯爵級とは隔絶した力がありますが……あと、あくまで互角だったのは数万年前の話であり、現在は封印状態でもメギドの方がオズマより強いです
現時点での強さの順番だと クロ>アリス>全能級の壁>メギド(真の姿)>アイン>アイシス>リリウッド>マグナウェル>一段階の壁>メギド(封印)>オズマ
ぐらいのイメージですね。
~おまけ・MAX値まで成長しきった場合の六王の順位は?~
1位 クロムエイナ(物語の始まり完全覚醒後)
2位 アリス
3位 アイシス(死の魔力完全制御後)
~全能級の壁~
4位 メギド(真の姿)
同率4位 アイン(時の権能完全成長後)
~準全能級の壁~
6位 リリウッド(神樹形態)
7位 マグナウェル
※どうしても同格クラスが相手だと、身体の大きさが不利になりやすいため
~おまけのおまけ~
物語の始まり(完全覚醒)
クロムエイナが持つ始まりを司る力であり、最終決戦時にはその力のほんの一部しか使いこなせてはいなかった。
この力を所持するクロムエイナはすべての始端に立つ存在であり、何者も『クロムエイナに対して先制することはできない』。すべての行動において『必ず先手はクロムエイナ』となり、対峙する者は必ず後手に回らなければならない。
この力を有するクロムエイナは、始まりを決定付ける存在でもある。クロムエイナが定めた始まりより前は存在しないため、クロムエイナの攻撃すべてが不可逆となり回復や蘇生が不可能になる。なおこの始まりの設定に関しては、クロムエイナは自由に解除を行うことができる。
この力を有するクロムエイナは、あらゆる結果に到達できる存在であり、どのような結果でも作り出すことができる。
この力は極めて強大な力であり、全知全能と比べても理的に上位に位置するため、相手が全知全能であっても始まりの力からは逃れることはできない。
ただし、それでも『能力を比較するという領域の力』ではあるため、完全なる埒外……論外の力である物語の終わりには抗えない。それでも物語の終わりを除けば、最強格の力と言っていい。
……もっとも、これらの力を使って戦うような展開はいままでもこれからも『一切ない』。世界は平和である。




