海水浴中編④
ある意味では天国で、ある意味では地獄のサンドイッチが終わり、俺はやけに熱い顔を手で仰ぎながら浜辺を歩いていた。
思わぬ積極性を発揮したクロとジークさんとのバナナボートは中々にすさまじい破壊力だった。いや、本当にまだ肌にふたりの感触が残っているような気さえする。
幸いだったのは、今回の趣旨として同じペアのところにずっととどまっているわけではないということ……おかげで、こうして次はどこのペアのところへ行こうかと考えながら、火照った頭を落ち着かせることもできていた。
さて、次はどの……というより、どちらのペアの場所に行こうかな? 距離的に近いのはアリスとアニマだけど、いまは海で泳いでいるみたいだ。
アイシスさんとフェイトさんは……って、さっきよりさらに遠くにいる!? う~ん、なにしてるのだろうか? 泳いだりとかそんな感じではないみたいだけど。
かなり離れた場所でふたりがなにをしているのか気になった俺は、先にアイシスさんとフェイトさんのペアの元を訪れることに決め、ふたりの居る場所に向かって歩き出した。
かなり距離が離れていたこともあり遠目ではなにをしているか分からなかったが、近づいてみると徐々にふたりがなにをしているのかが見えてきた。
海辺にしゃがんで、なにかをしているみたいだが、砂遊びって感じではない。しゃがんでなにかを探して、立ち上がって少し動いて、またしゃがんでなにかを探してという感じっぽい。
距離が近づいてくると、先にアイシスさんがこちらに気付いたみたいでパァっと明るい笑顔を浮かべて小さく手を振ってきた。相変わらずの可愛らしさである。
そのアイシスさんの様子を見てフェイトさんもこちらに気付いたみたいで、フェイトさんもこちらに向けて軽く手を振ってくる。手の動きがアイシスさんよりゆっくりなのがフェイトさんらしく、こちらもまた可愛らしい。
そんなふたりに軽く手を振り返したあとで歩く速度を上げ、ふたりの元に近づく。
「アイシスさん、フェイトさん、こんどはこちらにお邪魔しますね」
「……カイト……いらっしゃい」
「カイちゃん、やっほ~」
笑顔で歓迎してくれたふたりに視線を向けると、ふとアイシスさんが手に持っている貝殻が目に留まった。
「おふたりは……えっと、貝殻集めですか?」
「……うん……いろいろな貝殻……集めてる」
「そうそう、いや~こうやって探してみると、なかなか綺麗で形もいいのは見つからないねぇ」
なるほど、だからずっと海辺を移動していたのか……性格的に考えて、言い出したのはアイシスさんの方かな? フェイトさんは面倒くさがりそうなイメージだけど、ちゃんと付き合っているみたいだ。
「そしてなにより、想像以上に大変で面倒だよねぇ」
「……フェイトは……まだ……ふたつしか……拾ってない」
「いやいや、私めっちゃ頑張ってるよ。むしろこれだけの長距離をクッション使わずに移動してるだけでも、快挙だよ?」
「……長距離? ……う~ん……でも……フェイトの拾った貝殻……すごく綺麗」
「アイちゃんの方はいっぱい拾ってるよねぇ、というかよくそんなに見つけれるね? やっぱり経験値の差があるのかなぁ?」
らしいといえばらしいが、どこか緩い感じで面倒だと口にするフェイトさんに対し、アイシスさんは苦笑を浮かべながらも楽し気だ。
ふたりの間に流れる空気というか雰囲気も穏やかで、どうやら順調に仲良くなっているみたいだ。
どんな貝殻を集めているのかと気になって見せてもらうと、フェイトさんの言葉通りアイシスさんはかなりの数の貝殻を拾っていた。
「へぇ、本当にたくさん集めてますね。ちなみに、これでなにか作ったりするんですか?」
「……うん……砂時計や……シーグラスも拾って……ボトルも……あと……カイトの居た世界にある……モビールも……いいかも」
「な、なるほど」
おっと、なにやらお洒落な単語がいくつも飛び出してきたぞ……。
「……ねぇ、カイちゃん。モビールってなに?」
「えっと、なんか風とかで揺れる飾りのようなもの……だったかと」
「へぇ、じゃあシーグラスってのは?」
「え、ええっと……」
イメージはできる。ベビーベットの上や窓際に飾ったりする、紐で小物を吊るした感じのやつだ。でも説明するのは難しすぎる。ともかくなんかお洒落な感じの貝殻工作である。
なんとか拙い説明を行うと、フェイトさんは一度頷いたあとで次なる単語の説明を求めてきた。しかし、残念ながらそっちは俺もよく分からない。拾うっていうからには、海に落ちてるものなんだろうけど……。
とそんな風に困っていると、アイシスさんが綺麗な石のようなものを手に持ちながら説明してくれる。
「……これが……シーグラス……簡単に言うと……波に揉まれて角の取れた……ガラス片……小さな貝殻と一緒にボトルに詰めると……すごく綺麗」
「な、なるほど……」
「はへぇ~なんかお洒落だねぇ」
アイシスさんが博識なのもそうだが、やはりフェイトさんの言う通りなんというか発想がお洒落である。そして聞いてみるとなんだか面白そうというか、自分でも作ってみたくなる。
あんまり工作とかは得意ではないが、ボトルとかだったら……頑張ればなんとかならないかな?
六王祭で生み出された悲しいクリーチャー「誰が造ってくれと望んだ! 誰が生み出してくれと願った!!」
シリアス先輩「なんか悲しい境遇の敵みたいなこと言い出してる!? そういえば、シロが手に入れたあとは描写されてなかったけど、どうなったんだあのクリーチャー」
マキナ「いまは我が子が持ってる……ていうか、マジックボックスに入れてるみたいだね。ちなみにあの後で我が子、ガンロックドラゴン? ていうのも調べてみたらしく……「確かに偶然とはいえ、滅茶苦茶似てる」って呟いてたみたいだね」
シリアス先輩「あぁ、一応約束通り返却はされてたのか……」




