挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

75/523

幼馴染だったよ

 明るい月明かりの下で、リリアさんと並んで腰掛ける。
 リリアさんはしばらく夜空に煌めく星を眺めて沈黙し、少ししてからゆっくりと口を開く。

「カイトさんは、私が元王女であると言う事は知っていますよね」
「はい」
「私は王女としてはとても微妙な立場でした。兄上……現在の国王とは18も年が離れていまして、どちらかと言えばこの国の第一王子と第一王女の二人の方が年齢は近いです。私と兄上が腹違いの兄妹であると言うのは、以前ルナが口にしたと思います」
「……ええ」
「私が『王妃の子』で、兄上が『側室の子』です」
「ッ!?」

 ポツポツと告げるリリアさんの言葉に、俺は内心かなり驚く。
 現在の国王が側室の子で、リリアさんが王妃の子……正直逆だと思っていた。

「想像がつくとは思いますが、兄上が25歳で即位した際にはかなり揉めたと聞きます。私は長く子宝に恵まれなかった王妃待望の第一子であり、私の方を国王に据えるべきだと主張する派閥が存在しました。結局私がまだ幼かった事もあり、兄上が即位する事になったみたいです」
「……」
「それで全て終わってしまえば良かったんですが、今度は兄上の子供達と次期継承権について揉めることになってしまいました」
「……それは、その、何て言ったらいいのか……」
「あ、誤解が無い様に言っておきますが、周りが囃し立てていただけで、私達の関係自体は良好でしたよ。兄上は年の離れた私を我が子の様に可愛がってくれましたし、王子も王女も私を姉の様に慕ってくれています」

 そう言ってリリアさんは微かに微笑みを浮かべた後、真剣な……何か過去を悔む様な表情を浮かべる。

「もう分かっているのかもしれませんが……現在の私は、王族としてのシンフォニアという名ではなく、アルベルトと言う家名を名乗っています。その理由は、単純です……私は、逃げたんですよ継承者争いから……」
「……リリアさんって、あまり王位とか興味は無さそうな印象でしたが……」
「無かったですよ。でも、色々な人が私に期待してくれて、それを裏切りたくなくて、ずっと曖昧な状態でした。それが私の人生で一番の失敗です……私がハッキリ王位など継がないと、早々に明言していれば……あんな事には……」

 悔しそうに唇を噛むリリアさん。
 どうやら、話の一番重要な部分はそこみたいだ。
 リリアさんは王位継承権に興味は無かった。でも、周りは……リリアさんを推す方々は、リリアさんを国王にしたかった。
 結果として曖昧なまま、リリアさんは継承者争いに巻き込まれたと言う事だろうか?

「……私とジークは、物心ついた時からずっと一緒にいます。レイさんが王宮に勤める宮廷魔導師だった事もあって、幼い頃からよくジークに遊んでもらっていました」
「リリアさんとジークさんは、幼馴染なんですね」
「ええ、私に剣を教えてくれたのもジークです。私にとってジークは、姉の様な存在であり、剣の師であり、かけがえの無い親友と言える存在です」

 そこでリリアさんは一度言葉を止め、視線を再び空に向け、どこか遠い目をしながら続きを話し始める。

「本当は第二師団の師団長にはジークがなる筈でしたが、私の将来の為にきっと良い経験になるからと私を推してくれ、自分は副団長になって私をサポートしてくれました。ジークは本当にいつもいつも、私を助けてくれて、複雑な立場にある私を心配してくれていました……なのに、私は……」
「……」
「ジークは何度も王位継承に興味が無いのなら、ハッキリ自分の意思を告げるべきだと忠告してくれましたが、私は曖昧なままで、それが最悪の結果を招くことになってしまったんです」
「……最悪の結果、ですか?」

 何となく、想像がついてきた。
 ジークさんはかつて騎士団に所属していて、その時に負った傷により声を失った。
 そして今リリアさんが告げた継承権争いについて、そして過去を悔む様な表情……それはつまり……

「私の誘いで、冒険者だったルナが騎士団に入って2年目の事でした」
「……え? ルナさんも、元騎士団員なんですか?」
「ええ、まぁ、本人は別に騎士になる事に拘りがあった訳ではないみたいで、私が爵位を得て騎士団を辞めると、あっさりと辞めて私に付いてきました」
「ルナマリアさんらしいと言うか、何と言うか……」
「ええ、本当に……私とジークとルナはいつも一緒でした。ルナが私をからかって、私がそれに怒って、ジークが苦笑しながら私をなだめる様な……そんな関係でしたね」

 ルナマリアさんは昔からああいう性格みたいで、何となくその光景が頭に浮かんだ。
 正しく気心の知れた親友同士と言った感じだろうか、リリアさんの顔を見れば二人を本当に大切に思っているのは伝わってくる。
 リリアさんはそこで再び少し間を開け、ゆっくりと話の本題を切り出し始めた。

「……ある日、大量発生した魔物の討伐と言う任務を、第一から第三師団が協力して行う事になりました。強力な魔物も多く、準備も大がかりなもので……事前に渡された情報を元にそれぞれが三方向に陣を展開し、制圧するという作戦でした」
「……」
「事前調査により判明した安全地帯に移動し、私は指揮をジークに任せ、ルナと一緒に他の師団との打ち合わせを行う為に移動しました。そして、そこである事実が発覚しました」
「ある事実?」
「はい……私の師団に渡された情報は『すり替えられた物』で、私の師団が展開した場所は『魔物の巣の隣』だったんです」
「なっ!?」

 リリアさんが告げた言葉を聞き、驚愕する。
 それはつまり、リリアさんの師団は安全地帯だと思って油断している所に、魔物の奇襲を受けたと言う事だ。

「先に言った通り、討伐対象だった魔物はかなり強力で数も多く、一師団だけで対応しきれるものではありませんでした。最悪、全滅すらあり得たでしょうが……そうはなりませんでした」
「……」
「慌てて陣へ戻った私とルナが見たのは……傷ついた騎士達を庇い、血塗れになりながら、たった一人で大量の魔物と戦っているジークの姿でした」
「ジークさんが……」
「すぐに私とルナも加わり、他の師団も素早く動いてくれて魔物は討伐できました。私の師団もジークが必死に戦ってくれたおかげで、本当に幸いですが死者は一人も出ませんでした。ただ、ジークは……回復魔法で治し切れない程の重傷で、何日も生死の境を彷徨いました」

 俺には戦いの事なんてよく分からないけど、三つの師団で対応に当たる程の魔物から、他の騎士に死者が出ない様に立ち回るには、それこそ自分の体を盾にして戦い抜いたんじゃないだろうか?
 死者が出無かったのは、本当に奇跡と言って良いかもしれない。

「そして、数日経ち意識を取り戻したジークは……喉に負った深い傷のせいで、声を失ってしまっていました」
「……」
「結局事前情報をすり替えた者は見つかりませんでしたが、タイミング的に考えて、私に今以上に武勲を稼がれたくない、王子派か王女派の一部による凶行である可能性が高かった……」
「……」
「私が、悪かったんです……私がハッキリとしなかったから……そのせいで……ジークは……」

 どう、言えば良いんだろう? 今の話を聞いて、リリアさんが悪いかと聞かれれば、俺はリリアさんは悪くないと思える。
 けど、責任感の強いリリアさんはそれに納得はしないだろう。
 返すべき言葉が思い浮かばない俺を尻目に、リリアさんは話を進めて行く。

「ジークは、私を責めたりしませんでした。レイさんとフィアさんも、娘が許している以上自分達も同じと、私を許してくれました。でも、私は、自分を許す事が出来ません」
「……」
「そして私は、兄上に爵位を貰い、継承者争いから逃げました。これ以上私の大切な人達が傷つくのは、我慢できなかったから……そして同時に、何とかジークの声を戻せないか、その方法を探しましたが……見つかる手段は、どれも現実的ではありませんでした」
「もしかして、それで、世界樹の果実を……」
「はい。世界樹の果実は、とてつもなく貴重な物です。公爵である私でも、実物を目にした事すらない程の……」

 そこまで話し、リリアさんはそれ以上言葉を続けず沈黙する。
 成程、だからリリアさんは今回の優勝賞品の話を聞いて目の色を変えたんだ……何故ならそれは、リリアさんがずっと探し求めていたもので、失われたジークさんの声を元に戻す事が出来る物だから……

「……リリアさん」
「はい?」
「気の利いた事なんて言えませんけど……その、俺は、リリアさんは悪くないと思います」
「……ありがとうございます」

 それ以上会話は続かなかったが、少しだけリリアさんの纏うピリピリした感じが和らいだ気がした。

 拝啓、母さん、父さん――リリアさんの過去を少し知る事が出来た。リリアさんとジークさんは――幼馴染だったよ。


















人界の治癒魔導師……治せない。
冥王……治せる。
創造神……余裕で治せる。
時空神……治せる。
死王……世界樹の果実を調達できる。

あれ? これ快人に頼めば全部解決するんじゃない?
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ