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リンが教えてくれるのを待つことにしよう



 ツヴァイさんとの一件も一段落し、再び祭りを見て回る。しかし、今日はなんだかいろんな人と遭遇してるな……フォルスさんにツヴァイさんという初めて会う人もいた。


「二度あることは三度あるって言いますし……また誰かと遭遇しそうな気がしますね」

「う~ん、普通に考えると、これだけ広い会場で知り合いと会うことなんて稀なんだけどね~」

「そこは、まぁ、流石快人さんというべきでしょうね」

「キュイ!」

「おっ、おはようリン」

「キュク~」


 フィーア先生とノインさんと会話をしながら歩いていると、お昼寝をしていたリンが目を覚ました。俺の服から顔を覗かせてノビをする姿は、大変可愛らしい。

 そんなリンの頭を撫でつつ足を進めていると、ふいに声を掛けられた。


「おや? ミヤマ殿ではありませんか、こんにちは……偶然とはいえ、お会いできて光栄です」

「……へ?」


 ……フラグ回収早すぎじゃないかな? 本当に今日はなんで、この巨大な会場で知り合いとばか……り……あれ?

 妙な縁に驚きつつ声のした方を振り向くと……そこには見たことのない男性が立っていた。


「……ど、どちらさまでしょう?」


 艶のある黒色のロングヘアーを首の後ろで一本に纏めた2mくらいの美丈夫。肌は浅黒く、はち切れんばかりの筋肉と相まって、ものすごく強そうな感じだった。

 マジで誰だ? ま、まさか、また会ったことのない方か? 勘弁してくれ……もう今日はフォルスさんとツヴァイさんでお腹いっぱいだから……。

 そんなことを考えつつ、恐る恐る男性に尋ねると、男性は少し考えるような表情を浮かべたあとポンッと手を叩いた。


「……あぁ、そういえばこの姿は見せたことがありませんでしたね。『ファフニル』です」

「え? えぇぇぇぇ!? ふぁ、ファフニルさん!?」


 え? この人、ファフニルさん? あの100mくらいある巨大なドラゴンのファフニルさん?


「いまは『人化の魔法』で姿を変えています」

「な、なるほど……」


 人化の魔法……たしかにファンタジーでは鉄板中の鉄板魔法と言えるだろう。実際こうして見ると、あの巨大なドラゴンがここまで変わるのかと驚愕してしまう。


「おっ、ファフニルだ。久しぶり~」

「これはフィーア殿、ご無沙汰しております。ノイン殿も一緒でしたか」

「はい、お久しぶりです。ファフニル様」

「ええ、ノイン殿もお元気そうでなによりです」


 筋骨隆々とした色黒の大男といった見た目からは想像もできないほど丁寧な挨拶を告げるファフニルさん。失礼な話かもしれないが、見た目とのギャップが凄い。

 いや、まぁ、ファフニルさんはもともと丁寧な方だったけど……。


「……ファフニルはこんなところでなにをしてるの?」

「私ですか? マグナウェル様の命により、この先にある『六王祭特別版モンスターレース』の案内を行っております」

「……特別版モンスターレースですか?」

「ええ、たしかミヤマ殿はアルクレシア帝国のモンスターレースを見たことがあるのでしたね? 特別版モンスターレースとは『部門別優勝や年間で優秀な成績を記録した魔物』のみを集めたレースです」


 ……チャンピオン同士の戦いみたいな感じかな? それは、盛りあがりそうだ。というか、気のせいだろうか……なんとなく、その会場に俺の知り合いが居る気がする。

 具体的には、いま俺の後ろで姿を消してるやつの分体とか……。


「見応えのあるレースになると思いますので、ミヤマ殿もお時間に余裕があるようでしたら是非行ってみてください」

「あ、はい。ありがとうございます」

「いえ、それでは私は任がありますので、これで――おや?」

「キュッ!? キュイ!! キュクキュア!!」

「り、リン!? どうしたんだ急に?」


 ファフニルさんが俺たちに頭を下げてから案内の仕事に戻ろうとしたタイミングで、何故かリンが俺の服から飛び出してきた。

 リンはファフニルさんに向かって、なにかを叫んでいる感じだが威嚇してるような感じではない。むしろなにかを尋ねているような……。


「リンドブルムではないか? ふむ……どうやら『私の言葉通り』、しっかりと『魔力の籠った食材を食べている』みたいだな。以前より遥かに魔力が大きくなっている」

「キュク! キュキュイ! キュルクキュア!!」

「はやる気持ちは分かるが……『まだ足りない』。だから、まだ駄目だ」

「キュ……ク~……」

「落ち込む必要はない。私の想定よりかなり早く魔力が成長している……よほど良い物を食しているのだろう。その調子なら、そう遠くない内に目標とする魔力に届くはずだ」


 俺はリンの言葉を完全に理解しているわけではないので、ファフニルさんになにを言っていたのかは分からないが……感応魔法で落ち込んでいる感情は伝わってきた。

 リンは落ち込んだ様子で頭を下げたあと、パタパタと飛んで再び俺の服に潜り込んでしまった。


「……あの、ファフニルさん? リンと知り合いなんですか?」

「はい。私が飛竜便の手伝いとして出向してから、ミヤマ殿が引き取るまで数日ありましたからね。同じ竜種として少しばかり相談に乗りました」

「相談ですか? それは……」

「キュク!? キュ、キュキュイ! キュクイ!!」

「え? り、リン?」


 落ち込んでいるリンの様子が気になり尋ねてみると、直後にリンが慌てた感じで顔を出して、必死になにかを叫び始めた。

 そしてそれを聞いたファフニルさんは、微笑ましげな苦笑を浮かべてから俺に頭を下げてきた。


「ははは、申し訳ありません、ミヤマ殿。どうやらリンドブルムは内緒にしたいみたいです」

「そうですか……リン、内緒なの?」

「キュイ! フゥゥゥ!」

「分かった、分かった。これ以上は聞かないよ」


 気にはなるが、リンが嫌がっているのでそれ以上は聞かないことにする。そんな俺たちの様子を、ファフニルさんは優しげな瞳で見詰めていた。


 拝啓、母さん、父さん――どうやらリンが普段から世界樹の果実を欲しがるのには、好物だからという以外にも理由がありそうな気がした。想像ができないわけじゃないけど、まぁ、いまのところは――リンが教えてくれるのを待つことにしよう。




シリアス先輩zero「……もう分かった……それ絶対甘いやつ……」

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― 新着の感想 ―
三只眼と同じ願いを…
[良い点] 人化したいんだろうなぁ…可愛い その象徴として人化ファフニルさんが出てくるのも、この作品らしくて良いですね
[一言] わざわざファフニルに聞いた時点でじ…おっと誰か来たようだ
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