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一周年記念番外編「死の魔力への挑戦中編③・果てなき壁」


 アイシスさんと幸せな結婚式を挙げるため、改めて全力で魔力量の特訓をしていたわけだが……俺は現在、非常に困った事態に遭遇していた。

 いや、困ったというか……怖いというか……。


「……で? カイトくん」

「ひゃいっ!?」


 腕を組み完全に座った目でこちらを見下ろすクロに、正座していた俺はビクリと跳ねる。

 クロの全身からは怒りのオーラが溢れており、その影響か部屋が小刻みに揺れている……いや、地震が起きてるみたいに揺れてる。マジ怖い。


「……今回は、何日徹夜したの?」

「……よ、四日……」

「四日?」

「……の、後に一日だけ寝て、また四日……です」


 恐る恐る告げると、クロの額に青筋が走る。


「……なんで君は、いつもいつも加減ってものを考えないの!!」

「ひぃっ!?」

「しかもこれ、顔になに塗ってるの!? 目の下の隈誤魔化してるでしょう!」

「ご、ごめんなさい!」


 そう、現在俺は徹夜して訓練を行っていたのがクロにばれ、ガッツリと説教されていた。

 特に今回は、クロにばれないようにとファンデーションを借りて、隈を誤魔化していたので……クロの怒りは非常に大きい。


「大体、カイトくんはいつもいつも極端なんだよ! 急ぎたい気持ちはわかるけど、それで体を壊しちゃったら元も子もないでしょ!!」

「……はい」

「そもそも、カイトくんは……」


 完全に自業自得ではあるが、クロの説教は2時間近く続くこととなった。









『……なるほど、そんなことが……』

「頑張り屋なのはいいんだけどねぇ……」


 魔力量増加の訓練を行ったあと、精密な魔力コントロールを身に付ける訓練に移行し、快人は小さな魔力球を掌に浮かべ集中していた。

 その様子を少し離れた位置で見詰めているとは、クロムエイナと……世界樹の果実を補充するために来たリリウッドだった。


『ですが、追加で特訓していたとはいえ、思った以上に順調なようですね……カイトさんの魔力は、ずいぶんと大きくなっています』

「うん……正直、予想以上に上昇するペースが早いよ。ボクの見立てだと10年はかかるって思ってたけど……このペースなら、1年ちょっとで行けるかもしれないね」

『珍しいですね。貴女が見誤るなんて……』

「まぁ、そりゃ、ボクだって完璧じゃないしね~」


 リリウッドとクロムエイナが話しているのは、特訓を行っている快人の魔力に関して。まだ目標には遠いながら、快人の魔力量はすでに人間という種族の中では上位と言っていいほど大きくなってきている。

 クロムエイナは、快人が現在の魔力量に到達するまで半年以上はかかると思っていたが……予想に反して快人の魔力はぐんぐん上昇していた。


「……う~ん。魔法の才能はないと思ってたんだけど……実はあったのかもしれないね」

『ですね。これだけ伸びが良いのであれば、しっかり鍛えれば魔導師としてもやっていけるかもしれませんね』


 実際は快人の魔力がふたりの予想以上に伸びているのは、シャローヴァナルがこっそりと快人の魔力を成長しやすくしたためだが、ふたり……いや、快人も含めて三人にはそれを知る術はなかった。









 小さな魔力球を、形を崩さずに維持し続ける訓練を一段落させ、休憩に入る。消費した魔力を回復するために世界樹の果実を食べていると、クロと……いつの間にかきていたリリウッドさんが、なにやら微妙な表情でこちらに近付いてきた。


「……ねぇ、カイトくん?」

「うん?」

「ファイアーボールの術式……前に教えたよね?」

「え? ああ、うん」


 確かに以前、攻撃魔法が使いたいとクロに相談した時に初球攻撃魔法の術式は教わった。もっとも、俺に攻撃魔法の才能はなくて、上手く発動することは出来なかったけど……。


「ちょっと、こっちに向けて撃ってみてくれる?」

「え? ファイアーボールを?」

「うん。カイトくんの魔力もかなり上がって来たし、試しにね」

「わ、分かった」

「フルパワーでお願い!」

「了解」


 確かに、俺の魔力は自分でもわかるほど上昇してきている。かつては使えなかった攻撃魔法だって、いまは使える可能性も十分にある。

 いや、それどころか……ここで才能が開花して、一気に強い魔導師になれるかもしれない!


 まぁ、別に戦いがしたいわけじゃないけど、葵ちゃん、陽菜ちゃん、正義君の三人にぶっちぎりで負けているのは、年長者としてちょっと情けないと思っていたところだ。

 よし、やってやろうじゃないか……もう、魔物使いだとか最弱だとか、後輩に呼ばれる日々からはおさらばだ!


 右手に魔法陣を浮かべ、俺はそこにありったけの魔力を込める。いままでより魔力量が圧倒的に増えていることもあり、自分でも怖いぐらいの魔力が右手に集まっている。

 そのまま右手を引き、『いける!』という確信と共に、右手を前につきだしながら叫ぶ。


「……ファイアーボール!!」


 俺の言葉に反応し、右手の魔法陣からは燃え盛る業火の球が放たれた……『ピンポン玉サイズ』のが……。


 そのミニファイアーボールは、クロに向かってノロノロと飛んでいたが、クロのまるで蚊でも叩き潰すような拍手で消え失せた。


「……」

「……よかった。いつものカイトくんだ」

「その納得のされ方は、なんか抵抗ある!?」


 よくは分からないが、クロは俺のしょぼいファイアーボールを見て満足したらしく、どこかホッとした笑顔を浮かべていた……解せぬ。


『……アレだけの魔力を込めて、こ、この程度とは……あ、いえ、失礼しました』

「……」


 優しいリリウッドさんでさえ、ついそんな台詞が零れてしまうレベル……ちょっと、俺の才能の無さはどうなってるんだ!?

 いや、撃てなかったころに比べれば大きい進歩だよ? でも、込めた魔力量に対して効果がしょぼすぎる。大量に込めた魔力はどこいった?


『ま、まぁ、炎属性が苦手なだけという可能性もありますし……』

「そうだね。カイトくん、他も一通り撃ってみてくれる?」

「……うん」


 そ、そうだよ……リリウッドさんの言う通り、火属性は俺の肌に合わなかっただけかもしれない。ほ、他の属性なら……。

 そして俺は、クロの言葉に従い、世界樹の果実を食べながら教わった初級魔法を次々放つことにした。


「アイスエッジ!」

「……届いてない」

『途中で溶けましたね』


 水属性の魔法……。


「ウィンドカッター!」

「……ちょっと涼しい?」

『そよ風ですね』


 風属性の魔法……。


「ストーンブラスト!」

「……小さい」

『これでは、当たっても『コツン』ですね』


 土属性の魔法……。


「ライトニングボルト!」

「……う~ん」

『静電気、ですかね?』


 雷属性の魔法……。


「ホーリーライト!」

「……ちょっとだけ光った?」

『ええ、一瞬』


 光属性の魔法……。


「ダークネスショット!」

「おっ、これはちょっとだけ出たね」

『まぁ、それでも魔力量に比べれば弱すぎますが……』


 闇属性の魔法……。


「プレシオン!」

「おぉ、すごい! ちょっとだけだけど、ボクも圧を感じたよ!」

『……確かに、これは魔力量以上の威力ですね』


 そして最後に無属性魔法……相手にプレッシャーを与える魔法を使って終了となる。


 八種類の魔法を打ち終えた俺は、もう薄々分かってはいたがクロに向かって問いかける。


「で、クロ? 結論は?」

「……うん。カイトくんは、闇の魔法がそこそこで……『精神干渉系』の魔法はかなりの才能があるよ。精神破壊したり、幻覚を見せたりは得意そうな感じだったね」


 ……闇属性で、精神干渉系魔法が得意と……どう考えても悪役の特性である。状態異常攻撃を連発してくる中ボスみたいな感じってことだろう。なんか……泣けてきた。

 やっぱり俺にチート主人公は無理らしい。というか、なんで俺はこんな辱めを受けているのだろうか?


「なぁ、クロ? そもそも、なんでこんなことを?」

「あ~えっと、いや、カイトくんの魔力量の伸びが想像以上だったから、カイトくんには魔法の才能があるのかな~って思ってね」

「……で、結果は?」

「いつも通りのカイトくんで安心した!」

「……」


 なんで俺攻撃魔法が全然使えないの? 後輩三人は、カッコいい攻撃魔法が使えるのに、なんで俺は精神にダメージ与えるようなやつばっかりなの!?

 ……ま、まぁ、いいか。元々攻撃魔法を身に付けるための訓練じゃない。あくまで俺の目的は、アイシスさんの死の魔力を押さえることだから……べ、別に悔しくなんてない。








 しかし、その一件は思わぬところから余計な厄介事を引きこんできた。

 翌日、バーベルとかダンベルとかを山ほど抱えたメギドさんがやって来た。


「おぅっ、カイト!! 聞いたぞ、攻撃魔法がからきしだったんだってな!」

「め、メギドさん? いきなりどうしたんですか?」

「悔しいだろうが、気にすんな! そもそも、攻撃魔法なんざ必要ねぇんだよ。魔法なんて撃たれる前にぶん殴っちまえばいいんだ! 俺に任せとけ!」

「……な、なにを?」


 もうこの時点で嫌な予感しかしなかったが、恐る恐る尋ねてみると……メギドさんは憎たらしいほど明るい笑顔を浮かべて口を開いた。


「いまのお前に必要なものは……そう『筋肉』だ!」

「……いえ、違いますよ?」

「任せとけ! 俺とお前の仲じゃねぇか! 俺がカイトを、どこに出しても恥ずかしくねぇ『武闘家』にしてやる!」

「いやいや、そんなこと一言も頼んでないですから!? なんで、嬉々としてバーべルを……ていうか、それ、で、デカ過ぎ……無理ですって、そんなサイズのは!? ちょっ、ぎゃあぁぁぁぁぁ!?」


 勘違いした脳筋により、バーベルの海に沈められることとなった。

 まぁ、直後に現れたクロがメギドさんを殴り飛ばしたことで、無事誤解は解けたが……俺に新たなトラウマが刻まれたのは、言うまでもない。





活動報告にてキャララフ公開第二弾を掲載しています。読者の連帯感が凄まじい。


~作中とは全然関係ない強さランキングTOP10(ネタバレ有り)~


1位 究極完全体クロムエイナ(クロベースにシロと融合)

2位 究極完全体シャローヴァナル(シロベースにクロと融合)

3位 エデン(本体)

4位 クロムエイナ

5位 シャローヴァナル

6位 エデン(分体)

7位 アリス(ヘカトンケイル完全発動)

8位 フェイト(覚醒)

9位 メギド(???時)

10位 アイシス・レムナント(死の魔力完全制御時)



ドベ 宮間快人

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― 新着の感想 ―
この強さランキングはシロさんの「アレ」を勘定に入れない場合のものかな?
[一言]  圧を掛けれるなら緊張状態からの解放でリラックス効果と精神干渉で悩み解決できるからカウセリングと催眠療法の才能があるってことじゃない?闇=夜=安寧ってやつだね。
[一言] 次の話に行く為にイヤでも目につく、アレな(だいぶ言葉を濁しました)ネタバレありがとう⸜(*ˊᵕˋ*)⸝‬ おかげで思い出しましたよ( -᷅_-᷄ ๑)
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