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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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凄く輝いて見えたから

 六王祭2日目も夜となり終わりが近いてきた。
 現在は2日目の最後の催しであり、同時にリリウッドさん1番の自信作でもある都市全体のライトアップが行われていた。

 以前見たライトツリーのように、特定条件下で光を放つ植物を集め、発光周期や高低差による見え方の違いまでこだわり抜いて配置したらしい。
 確かにこうして見ていると、色鮮やかだし点滅したりと芸も細かく、見ていて退屈しない。

『どうですか? あの辺りの模様は、配置にかなり気を使いました。カイトさんにも気に入っていただけたら、嬉しいのですが……』
「あ、はい。大変素晴らしいと思います……ただ、その、何点かお聞きしたいことが……」
『なんでしょうか?』
「まずこの場所、相当いいスポットですよね? なんで他に誰も居ないんですか?」

 現在俺とリリウッドさんが居るのは、会場となる都市の南端に造られた小高い丘。ここは都市を一望でき、ライトアップを余すことなく堪能できる絶景スポットと言える。しかし、周囲を見渡してみても、かなり広いはずの丘には俺とリリウッドさん以外の人影は見えない。
 これほど良い場所を逃すとは思えず尋ねてみると、リリウッドさんは俺を『見降ろしながら』愛らしい笑顔を浮かべる。

『……主催者権限で少しズルをしました。静かに眺めたかったので……』
「なるほど……では、もう一つ質問です。というかコレが一番重要です」
『はい、なんでしょうか?』
「……なぜ、俺は……『リリウッドさんに抱えられている』のでしょうか?」

 現在リリウッドさんは初めて会った時のような、体が木と一体化した大きな姿になっている。そして下半身となっている木の部分に椅子が作られており、俺はそこに座っている形だ。
 ここまでは別にいい。魔界を案内して貰った時も似たような形になった。最大の問題は……現在何故か俺の胸の前にはリリウッドさんの手が緩く置かれており、俺の後頭部には柔らかく弾力のあるナニカがくっついている。

 いや、まぁ、早い話がリリウッドさんに後ろから抱きしめられており、なんでこんな状態になっているのかさっぱり分からない!?
 え? どこ? どこでこんな柔らか天国のフラグが建ったの? そんな感じ無かったはずなのに……。

『お嫌でしたか?』
「い、いえ、そうではなくて……その、えっと、む、胸が当ってるんですが……」
『ああ、それは『ワザと』当ててます。カイトさんが欲情してくれないかなぁと思いまして』
「リリウッドさん、性格変わってません!?」

 え? おかしい……リリウッドさんって、こんな得体のしれない色気を出す人だったけ? いや、違う。もっとこう純朴な癒し系のはず。
 な、なんでこんな積極的に? ま、まさか酔ってたり?

『ふふふ、そうですね。正直言って、私もなぜこうしたいと思ったのかよく分かりません……羨ましかったのかもしれませんね』
「……う、羨ましい?」
『ええ……貴方と出会い、変わっていった者達のように……私も変わりたいのかもしれません』

 そこでリリウッドさんは一度言葉を止め、美しく輝く都市に視線を向ける。

『……貴方と恋人になって……クロムエイナは、以前よりずっと素敵な笑顔を浮かべるようになりました。アイシスは、いままで見たことが無かった心から幸せそうな表情を浮かべるようになりました。そして、先程話したシャルティアも、暗い影が消え本来の笑顔を取り戻したように感じられました』
「……」
『……私はきっとそれが羨ましいのでしょうね。長い年月を生き、ほぼ完成形といってよかった彼女達が、あんな風に変われるなんて……羨ましいです』
「……リリウッドさん」

 忘れがちになってしまうが、リリウッドさんを初め六王達は皆、俺とは比べ物にならない程の年月を生きている。確かにそうなれば、その人となりも成熟し、変化というのは起き辛くなるのかもしれない。
 長い年月を変わらないまま過ごしていたからこそ、変化に憧れる。その気持ちは、ずっと自分の殻に閉じこもっていた俺にも、なんとなくだが理解出来る。

『……不思議なものですね。変わりたいなどと……変わっていくことが羨ましいなどと……そんな風に考えたのは、いつ以来か自分でも分かりません』
「でも、変わりたいって願うことは……いまより前に進みたいって思うことですし、いいことだと思いますよ」
『そう、ですね』
「え? ちょっ、リリウッドさん?」

 リリウッドさんはどこか自分に言い聞かせるように頷いた後、先ほどよりも少し強く俺の体を抱きしめた。
 癒されるような木の香り、柔らかな感触と確かな温もりは、包み込まれるような感覚がした。

『……いまだ、私が恋愛などという感情を抱けるか、はなはだ疑問ではあります。ですが、そうですね……私は『恋をしてみたい』のかもしれません』
「……」
『ですが、どうすればいいかはよく分かりません。いまのように貴方を困惑させてしまうかもしれません。それでも、貴方は私の友で居てくれますか?』
「……当り前です。い、いや、まぁ、戸惑ったりはすると思いますけど……リリウッドさんを嫌いになることなんてありえませんよ」
『……ありがとうございます。なんでしょう? 周囲の温度が変わったわけでもないのに、温かい気がしますね。不思議なものです……本当に不思議です。ですが、ふふふ、なんだか楽しいです』

 そう言ってリリウッドさんは、いままで見た中で一番綺麗な笑顔を浮かべてくれた。

『カイトさん、こんな無知な私ですが、改めて……これからもよろしくお願いします』
「あ、はい。えっと、こちらこそ……」

 拝啓、母さん、父さん――変わるって言うのは、言葉にするのは簡単でも実際はいろいろ難しかったりするものだ。だけど、たぶん、リリウッドさんは大丈夫だと思う。なぜなら、変わりたいと願い、変わろうとして前を向く彼女は――凄く輝いて見えたから。



シリアス先輩「やめろ、やめて……清純派は、私に効く……」
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