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本当に疲れた

 時の女神との対談の場にシロさんが登場した訳だけど、場の空気がとんでもないことになっている。それもその筈、何せシロさんは創造神様……つまり神界のトップ。

 そんな存在が突然現れた事により、場は完全に凍りついていた。


「しゃ、シャローヴァナル様。な、何故突然人界に……」


 頭を垂れたまま、声を微かに震わせながら時の女神が尋ねる。

 神界は完全な縦社会と聞いていたが、時の女神の様子を見ればそれがよく分かる。最高神という創造神に次ぐ地位を有している時の女神にとっても、創造神であるシロさんは完全に別格の存在みたいだ。

 そんな時の女神に対して、シロさんは……特に気にした様子もなく、いつの間にか出現させた椅子に座り紅茶を飲み始めた。時の女神をガン無視してるんですけど……


「あ、あのシロさ――「無礼者!!」――ッ!?」


 自由なシロさんの行動に思わず今まで通り突っ込みを入れようとして、時の女神の鋭い声で遮られる。

 しまった……これは完全にやらかした。つい先ほどまでと同じ様に話しかけてしまったが、相手は神界の頂点である創造神、本来なら気安く話しかけてはいけない程の存在の筈だ。

 その失敗を弁明する暇もなく、時の女神は鋭い目を俺の方に向ける。


「貴様! 一体誰の許しを得てシャローヴァナル様に気安く声をかけている!」

「す、すみませ――「私が許していますが、他にどこかから許可を取る必要があるのですか?」――え?」

「なっ!? シャローヴァナル様!?」


 時の女神に慌てて謝罪しようとした俺の言葉は、今度はシロさんに遮られる。

 そしてシロさんは驚愕する時の女神に対し、いつも通りの一切変化の無い表情を向け、抑揚の全くない声で繰り返す。


「他にどこかから許可を取る必要があるのですか?」

「い、いえ、申し訳ありません」


 抑揚の無い……このタイミングでは恐ろしく冷たく感じる言葉を受け、時の女神は青ざめ、深く頭を下げて謝罪する。

 うん、時の女神の気持ちは凄くよく分かる。あの抑揚の無い声でリピートされると、物凄い威圧感があるんだよなぁ……


「御無沙汰しております。シャローヴァナル様」

「クロの従者でしたね。久しぶりです」


 そのタイミングでアインさんも、両膝を地面に下ろし深く頭を下げながらシロさんに挨拶を行う。

 その礼は普段アインさんがしているメイドとしての礼では無く、王を相手にするかの様な最上位の礼儀を込めたもので、それだけシロさんの立場の高さが伝わってくる。あのアインさんですら、あそこまで敬う存在という事……

 そんな俺の気持ちを察したのか、簡単な挨拶を行った後でシロさんから離れてこちらに来たアインさんが小さな声で呟く。


「……当然です。シャローヴァナル様は、この世界で全能という言葉に最も近いお方。私が抗える様な存在ではありません」


 どうもシロさんはマジ物の神様らしい。殆ど全能とかチートってレベルじゃない。

 成程、以前シロさんとの会話をクロに話した時、何で彼女が大笑いしたのかの理由も分かった。

 つまり俺は、全能の神様に向かって「お前には無理だ」って言ったらしい。無知ってのは怖いものだ……


 っとそこでふと思い出す。この場に居ながら、先程から黙ったままの人物を……


「リリアさ……ん?」

「……」


 隣に視線を動かすと、リリアさんは……泡を吹いて気絶していた。


「ちょっ、リリアさん!? 大丈夫ですか? しっかりして下さい!」

「……はっ!? か、カイトさん? す、すみません……私、変な夢を見てしまったみたいです。創造神様が目の前に現れるなんて、そんな訳が……」

「私がどうかしましたか?」

「……そ、創造神様? 夢じゃなくて?」

「はい」

「あ、あわ、あわわわわ、もも、申し訳ありません。私、その、ごごご、ご無礼を、えと、あと……きゅ~」

「リリアさん!?」


 どうにも事態はリリアさんの許容範囲を遥かに超えているらしく、シロさんに話しかけられたリリアさんは再び目を回して気を失ってしまう……駄目だこりゃ。

 とりあえずリリアさんはこのままにしておこう。多分また目を覚ましても気絶するだけだと思うから……一先ずこの緊迫した状況を戻す為、先にシロさんの方を。


「あの、シロさ……いえ、シャローヴァナル様」

「今まで通りの呼び名で良いです」

「いや、流石にそれは」

「今まで通りの呼び名で良いです」

「で、でも……」

「今まで通りの呼び名で良いです」

「あ、はい」


 断固として譲ってくれないよ!? さっきから時の女神の「こいつ一体何者だ?」みたいな視線が物凄く痛いんで、軌道修正したかったのに……

 ともかくえっと説明、そう説明をしなくちゃ……てかむしろ、シロさんが説明してくれると助かるんだけど……


「快人さんは私が祝福を行った人間です。先程快人さんに話しかけていたのは私です。そして誤解を解きたいという願いを聞いてここに来ました」

「「ッ!?」」


 物凄い簡潔かつ、爆弾てんこ盛りの発言をありがとうございます。時の女神もアインさんも、完全に驚いて固まっちゃってるじゃないですか……

 しかしアインさんの方はクロのメイドだけあって、何となく状況を察したのか、少し経つと納得したように頷く。

 問題は時の女神の方で、完全に訳が分からないという顔を浮かべながら、慌てた様子でシロさんに話しかける。


「しゃ、シャローヴァナル様が一介の人間に祝福を!? み、ミヤマは一体何者なのですか?」

「快人さんは異世界人です」

「……いや、そういう意味で聞いてるんじゃないと思います」


 創造神がただの人間である俺に祝福を行ったと言うのは、時の女神にとっては衝撃の事態らしく、俺が何かとんでもない存在じゃないのかと尋ねるが……流石の天然女神、全然行間を読んでくれない。

 ほらシロさん、時の女神は何でシロさんが俺に祝福を行ったのか、俺とシロさんはどういう関係なのかを聞きたいんですよ。

 ここはちゃんとクロに頼まれて祝福をしたって言えば納得してくれる筈ですし、それなら大体の事情はクロに放り投げれるから場が収束出来る筈……

 心を読めるシロさんに対し、心の中で説明してほしい内容を伝える。シロさんはそれを理解して一度頷いた後、時の女神の方を向き口を開く。


「初めはクロに頼まれて適当に祝福を行いましたが、私が快人さんに興味を抱いたので真面目に祝福をかけ直しました」

「しゃ、シャローヴァナル様が興味を!?」

「……ちょっと、シロさん?」

「その後は一緒にお茶を飲みました。今は好感度を上げたり下げたりされる関係で、私は快人さんの攻略対象みたいです」

「は? えと、コーカンド? 攻略対象? そ、それは……一体どんな関係なのでしょうか?」

「交流によって好感度を貯めて、最終的に『肉体関係に発展する』関係です」

「なっ!?」

「……」


 何、核爆弾みたいな発言叩き込んでるんだ馬鹿女神!! 場を収束するどころか、さっきまでより遥かに厄介な状況にしやがった!?

 好感度や攻略対象に関しても、過程をぶっ飛ばして説明しやがった!? そもそもその知識、アダルトゲームからの知識だったの? ホントどこから情報を仕入れてきてるんだこの方!?

 シロさんに頼ったのが間違いだったみたいで、時の女神は埴輪の様な顔で固まり、俺は頭を抱える事になった。

 そしてそれから長い……本当に長い時間をかけて、時の女神とシロさん双方の誤解を解く為に、必死に弁明の言葉を重ねることになってしまった。


 拝啓、母さん、父さん――シロさんの出現で場は大混乱で心労が半端ではない。もう、何て言うか――本当に疲れた。










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― 新着の感想 ―
シロさんのクラッシャーっぷりが最高すぎる
[一言]3回めのループ読みだけど、極超音速核ミサイルを頭上に落とされたみたいな破壊力だろうなー>「交流によって好感度を貯めて、最終的に『肉体関係に発展する』関係です」 ったく、シロさん最高すぎます。
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