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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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創造神だった

 今俺の目の前では非常に真面目な会話が繰り広げられている。特に俺や楠さん、柚木さんの送還に関して、万が一にも危険がないようにと本当に入念に打ち合わせを行ってくれているのだろう。
 それはリリアさんが俺達の事を心から心配してくれている証拠でもあり、少し前までの怯えた様子から一変し、しっかりとした口調で女神と言葉を交わす姿は頼もしい。
 しかしそんな最中、心配されている対象である俺は……この場にすらいない方と雑談をしていた。話についていけない以上会話に参加する事は出来ないとはいえ、凄く申し訳ない気分だ。

 本当にこの異世界に来てから出会う方は、皆優しい方ばかりで……ありがたく思う反面、迷惑をかけてばかりで申し訳なさもかなり感じている。
 いっそ誰かがお前はド畜生だとでも罵ってくれれば気が楽になるかもしれないが、ありがたい事にそんな事を言う方は――

(貴方はド畜生ですね)

 ……うるせえぇよ、天然女神。なに人がしんみりした感じになってる所にカウンターパンチ叩き込んできてるの? さっきの出会う方皆優しいって言葉を速攻で粉砕しないで頂きたい。
 ま、まぁ、シロさんがそんな事を言ったのは、あくまで今さっき俺が誰かが罵ってくれれば気が楽になるかもって思ったからそれに応じてくれただけで、実際は変わってるけど優しい方だと言うのは分かっている。

(下げてから上げられました。好感度を溜める手口というやつですね。つまり私も快人さんの攻略対象というものなのですね)

 もう、本当に色々と台無しだよ。てか、好感度とか攻略対象とか――もしかして、クロに妙な知識教え込んだ元凶はこの方なんじゃなかろうか……
 ま、まぁ、それは置いておいて話は変わりますが……てか戻りますが、この時期にエルフ族のお祭りがあるんですか?

(『宝樹祭』という、それなりに大きな祭りがあります)

 宝樹祭? 何か凄そうな祭りだけど、いまいちイメージが沸かないと言うか、どんな感じの祭りかが想像しづらい。
 宝樹って言うぐらいだから、木に関する祭りなのかな?

(エルフ族が祀る宝樹に実がなるのがこの時期です。その為この時期に狩猟と収穫、二つの行事を中心としてエルフ族が取り行う祭りで、派手ではありませんが多くの人族が訪れる祭りです)

 ふむ、収穫祭とかそういった感じだろうか? 狩猟で取った獲物や、収穫で取った果実を皆で食べたりする村祭りに近いイメージかもしれない。しかしエルフという種族を上げてのお祭りになるのなら、かなり大規模な物なのかもしれない。
 聞いてみた限りかなり良さそうな祭りではあるし、人族も多く訪れると言う事はエルフ族しか参加できないと言う訳でも無いだろう。
 ただ、問題になるのは場所だ。果してその宝樹祭が行われる場所は、シンフォニア王国……リリアさんの家から近い距離なのだろうか? あまり遠いようなら、参加するのは難しいかもしれない。

(エルフ族の住む森は、シンフォニア王国領内です)

 頭に浮かんだ疑問に対し、即座に応えを返してくれるシロさん。
 ……そうなんだ。じゃあ少なくとも行ける距離ではあるって事だろうか?

(この位置です)

 シロさんがそう告げた瞬間、俺の頭の中に人界の地図が思い浮かび、王都より少し離れた場所に赤い印が点滅した。
 なにこれ、気持ち悪っ!? 頭の中に直接イメージが流れ込んでくると言うのだろうか、本当に何でも出来るんだなシロさんは……というかコレもはや一種の精神攻撃みたいなもんだよね。
 う~む、相手の脳内に強制的にイメージを浮かび上がらせるって、使い様によっては恐ろしい事も出来そうな気がする。

(官能的な映像も見せられますよ)
「そんな事聞いてないでしょ!?」
「「「ッ!?」」」
「……あっ」

 シロさんがあまりに予想外の言葉を発したせいか、つい頭の中に思い浮かべるだけじゃなく声に出してしまい、話をしていた三方が何事かと言いたげにこちらを見る。

「か、カイトさん? 急にどうしたんですか?」
「あ、いや……」
「なにか、疑問に思う点でもあったか?」
「い、いえ、そう言う訳では……」

 心配そうな顔でこちらを見てくるリリアさんと、首を傾げながら尋ねてくる時の女神に冷や汗をかきながら返答する。

「クロノア……カイト様は、お疲れなのかもしれません」
「ふむ、確かに少し話が長引いてしまっておったな。ミヤマよ、席を外して休んで構わんぞ?」
「カイトさん、無理を言って付いて来てもらった私が言えた事ではありませんが、辛いようなら無理せず休んで下さいね」
「……えと、その……」

 滅茶苦茶気を使われてる!? ど、どうすればいいんだこの状況!? シロさんも、黙ってないで何とか言って下さい!!

(あまり突拍子もない物は無理ですが、快人さんの記憶にあるアダルトビデオとやらの映像であれば記憶を呼び起こして見せる事が出来ますよ?)

 状況を何一つ理解してくれてないよこの女神!? 何でそんな誰も聞いてない様な情報を付け足してるんだ!? それから! その発言に関しては、ちょっと……後で詳しく話を聞かせてください!
 シロさんに高速で突っ込みを入れた後、怪訝そうな顔でこちらを見ているリリアさん達に慌てて説明をする。

「い、いえ、今、シロさ――女神様が頭に直接話しかけてきてて、その返答と混ざってしまって……」
「「「……」」」

 あ、あれ? 何かさっきより皆の目が冷たくなった様な気がする。え? なんで?

「……か、カイトさん? 流石にそれは……」
「へ?」
「……ミヤマ、本当に大丈夫か?」
「えっ?」
「……脈や体温に異常は見られません」
「ちょっ!?」

 三方は明らかに俺を心配した様子で、俺の体調を気遣う言葉を投げかけてくる。
 ど、どういう事なんだ? 神様って、皆シロさんみたいに他人の頭に直接話しかけたりできるんじゃないの?

(いいえ、出来ませんよ)

 何でそういう大事な情報をもっと早く言っておいてくれないんですか!?
 ようやく分かった、何故皆が「何言ってるんだコイツ?」みたいな視線を向けてきていたのかが……どうやら、普通の女神はシロさんみたいな事は出来ないらしい。
 ちなみにシロさん、それって下級神は出来ないって事ですか? 上級神とかになると出来ます?

(出来る者もいます)

 成程、つまりこの会話方法は上級神の中でも一部の神にしか出来ない行為で、皆にしてみれば俺がいきなり、今上級神様と話をしていますなんて言い出したものだから、こんな状態になったと言う訳だ。
 アインさんも怪訝そうな表情を浮かべてるって事は、俺がシロさんから祝福を受けた事をクロから聞いてはいないらしい。
 と、とにかく、この状況はまずい、早く説明をして誤解を解かないと……

 俺がシロさんにいくつか確認をしながら、どうやってシロさんの事を説明しようかと考えていると、リリアさんが穏やかな微笑みを浮かべて俺の手を握りながら話しかけてきた。

「……大丈夫ですよ。勿論私はカイトさんの言葉を信じます。だから、安心して気持ちを落ち着かせて下さい」
「……」

 どうやら俯いて対応を考えていた俺の姿は、リリアさん達からは落ち込んでいる様に見えたらしく、リリアさんは俺を励ます様な言葉を優しく告げてくる。
 けどこれ、この話掛け方って……

「そ、そうだな。もしかすると、思念神辺りが悪戯でもしたのやもしれん! 我の方からもしっかり注意しておく事にしよう」
「カイト様、リラックス効果のあるハーブティーを用意致しました。よろしければ……」
「……」

 完全に、腫れ物に触る感じの対応にシフトしちゃった!? もう殆ど痛い子扱いじゃないか!?
 ちょっと、シロさん! シロさあぁぁぁん!!

(どうしました?)

 どうしましたじゃないですよ! 誰のせいでこんな状況になってると思ってるんですか!?

(さあ?)

 駄目だこの女神、早く何とかしないと……てか、ともかく今は最優先で皆の誤解を解かないと……
 でもこれどうすればいいんだ? リリアさんもアインさんも時の女神も、完全に子供を宥める様な慈愛に満ちた表情浮かべてるよ。
 この状態じゃ俺が何を言った所で、優しく肯定しつつ慰めるみたいな感じになるだけな気がする。
 ……シロさん、お願いですから助けて下さい。マジで、もう俺の精神はボロボロですから、この状況を何とかしてください。

(わかりました)

 もはや魂の叫びと言っていい俺の懇願に対し、シロさんは簡潔に了承の意を返してくる。
 そして直後、広間内に一瞬光が満ち……当り前の様にシロさんが姿を現した。

「「「ッ!?」」」
「ならばこうして、直接お話をすれば問題ありませんね」

 た、確かに脳内に話しかけてきていると言う行為を他人に対し証明するのは難しいが、事の発端であるシロさんが出てきてくれれば説明は容易になる。
 これは中々ファインプレーなんじゃなかろうか……ってあれ? リリアさん達が、何か固まってるような?

「しゃ、しゃ、シャローヴァナル様!? な、なぜこのような場に!?」

 一番早く硬直から動いたのは時の女神だった。シロさんの姿を見て明らかに動揺した様子だったが、時の女神は即座に両膝を地について頭を下げる。
 ……なんか、流れが可笑しくなってきてるような気がする。具体的には、厄介事から逃れようとして、もっと厄介な状態を引き寄せてしまった様な。
 だって時の女神――最高神様が明らかに目上と話す様な感じになってるもん。コレってつまりそう言う事だよね? つまりシロさんは……

 動揺の中で思考に浮かぶ、頭が痛くなりそうな事実……それを肯定するかのように、俺の手を握ったまま今にも気絶しそうな表情を浮かべたリリアさんが、震える声で呟いた。

「……そ、そそ、『創造神』……シャローヴァナル様……」

 拝啓、母さん、父さん――正直薄々そんな気はしてたけど、シロさんはやっぱり――創造神だった。






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