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実況と解説はチェンジしてくれ



 中央塔に設置された転送用の魔法陣の内の一つ……特大スタンプを五つ集めた者だけが使用できる魔法陣。

 隣接する観客席への魔法陣でリリアさん達が観客席に向かうのを見届けてから、俺も緊張しながら魔法陣の上に乗る。


 眩い光に包まれ一度目を閉じて開くと……そこには凄まじい光景が広がっていた。

 ドーム球場のような、巨大な闘技場。観客席には所狭しと大勢の人が居て、そこから伝わってくる熱気で空気が震えているようにさえ感じた。

 そしてその闘技場の中央には、圧倒的な存在感をほこるメギドさんが待ち構えていた。


 ……いや、ちょっと待て、なんでこんなに観客が居るの!? おかしくない? だって、俺が特大スタンプ集め終わったのは三十分前ぐらい、これ程の人が集まっているのは明らかに不自然と言えた。

 いや、そもそもこの人たちはいったいどこから情報を……って、考えるまでもないか……この短時間で、これだけ多くの人に情報を伝達できる奴なんて一人しかいない。

 あの馬鹿め……なんてことしてくれてるんだ!?


 あまりの観客の多さに呆然とする俺を見て、メギドさんは嬉しそうに口元に笑みを浮かべる。


「来たな! カイト! 待ってたぜ! お前なら絶対俺の元に辿り着くと思ってた!!」

「ど、どうも……」


 ビルほどまではいかないまでも、二階建ての家ぐらいのサイズがあるメギドさん、こうして改めて対峙してみるとその威圧感を実感する。


「ははは、楽しみだなぁ! よっし、さっそく始めようぜ!!」

「……は、はい」


 メギドさんの闘争心に呼応するように、全身の赤い怪我炎の如く立ち上がり、放たれる魔力がビリビリと空気を震わせる。

 ね、ねぇ、コレ本当に俺に勝ち目のある戦いにしてくれるんだよね? なんかガチバトルみたいな雰囲気出してるけど、殴り合うわけじゃないよね?


「勝負は『三本勝負』だ! 二本取った方の勝ち……シンプルだろ?」

「そ、そうですね」

「よし! じゃあ、初めの勝負は……『芸術勝負』だ!!」

「……芸……術?」


 芸術って……絵とか描いたりするの? いやいや、ちょっと……俺、高校時代の美術『2』だったんだけど……なんかいきなり勝ち目がなさそうなんだけど!?


「じゃあ、ルールを説明するぞ! 作るものは『粘土細工』で、制限時間は一時間だ。テーマは『生き物』……審査員は俺の配下が務める。だが、安心しろ、審査は公平だ。というか、俺を贔屓した採点なんかしやがったら、『殺してやる』」

「……」


 うん、いや、まぁ、メギドさんが勝負において不正をするなんて思ってないけど……そうじゃなくて!? 粘土細工? い、いや~無理じゃないかな? 立体は駄目だよ、立体は……この大衆の前で大恥を晒す結果しか見えないんだけど!?

 てか、メギドさんって芸術も得意なんじゃないの!? なんか前、凄そうな彫刻作ってたけど……本当にこれ、俺に勝ち目あるの? ねぇ、あるの?


 唖然とする俺の前で、メギドさんは細かい作業をするためか人間の姿へ変わる。

 そして、俺達の前に粘土と道具が運ばれてくると、なにやら拡声魔法による声が聞こえてきた。


『さあ、いよいよ始まります。挑戦者ミヤマカイト対戦王メギドの三本勝負……実況は私『幻王ノーフェイス』が務めます』


 なにやってんだあの馬鹿!? なにしれっと、実況してるの? 馬鹿なの? ……疑う余地もなく馬鹿だった。


『そして解説には『運命神フェイト』さんを迎えてお送りします』

『……ねぇ? 面倒だから、帰っていい?』

『……あの、フェイトさん? まだ始まったばかりですからね? いくらなんでもダレるの早すぎますからね』


 どうしようもないほどの人選ミス!? なんで、よりにもよってフェイトさんを選んだ!? その人、絶対解説なんてしないよ!!

 

『さて、一本目は芸術勝負となりましたが、解説のフェイトさん。この勝負どう見ますか?』

『……ねぇ、シャルた……『ノーちゃん』? 寝てていい?』

『そこのクッキー食べていいですから、もうちょっと頑張ってください!』

『はぁ……『1/1カイちゃん人形』に釣られたとはいえ、面倒だよ……まぁ、どっちもほどほどに頑張るんじゃないかな?』


 おい、ちょっと待て……なんか聞き捨てならないアイテムの名前が聞こえた気がするんだけど? ちょっと、この戦いが終わった後、アリスとはじっくり話をする必要がありそうだ。


『ちょっ、フェイトさん。マジ止めてください……そのマル秘アイテムは内緒だって言ったじゃないっすか!? いま完全に私の死亡フラグ建ちましたからね! カイトさんが鬼のような形相でこっち見てますからね?』

『お~い、カイちゃ~ん。ふぁいと~』

『全然聞いてない!?』


 ちょっと、誰か、お願いだからあの二人止めてくれない? フェイトさんも笑顔で手を振ってる場合じゃないでしょ!?

 ただでさえ不利な勝負なのに……なんで勝負開始前から、精神的ダメージを与えられてるの!? マジで……誰か助けて……。


『え? あれ? 『クロさん』? え、ちょっ……こっち来い? い、いや、私は実況を……え? 早く来ないとすり潰す? わ、わわ、分かりました』

『冥王!? 私は違うからね! 私は真面目にやってるからね!!』

『ちょっ、フェイトさん!? 裏切……』

『……こほん、さて、幻王がちょっと席を外したから、少しの間、私が主体でいくよ。この勝負はテーマが生き物……かなり広いお題だから、なにを作るかも重要になってきそうだね。けど時間はそれほどないから、安直に複雑な生き物を選んじゃうと、失敗しちゃいそうだね』


 クロ、ありがとう。一番厄介な爆弾を撤去してくれて……フェイトさんもクロが恐ろしいのか、真面目に解説し始めたし、少しだけ気が楽になった。


「よっし、じゃあ、カイト! 始めるぞ!!」

「は、はい……よろしくお願いします」

「それじゃあ、勝負スタートだ!!」


 こうして、俺とメギドさんの三本勝負は、慌ただしく幕を開けた。


 拝啓、母さん、父さん――ついにやってきたメギドさんとの勝負。最初の勝負は粘土細工……もう既にこの時点で負けが濃厚ではあるが、出来るだけは頑張ろうと思う。まぁ、それはそれとしても――実況と解説はチェンジしてくれ。





シリアス先輩「だからなんで、シリアスな話の時に私を出してくれないの!? 私が一位なのに、一位で、2000勝で、模擬戦なのにぃぃぃぃ!!」

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[一言] シリアス先輩それはどこぞの炭酸の散り際のセリフです
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