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全力で挑戦するだけだ



 イリスさんがアグニさんに勝利し、俺のスタンプカードには特大スタンプが五つ押された。それはつまり、メギドさんへの挑戦権を獲得したということ……。


「ミヤマ様、おめでとうございます。これで貴方は、中央塔にて待つメギド様と戦う権利を得ました。つきましては、メギド様に挑むにあたっての注意事項をお伝えします」

「注意事項、ですか?」


 スタンプカードにスタンプを押した後、アグニさんはなにやら注意事項があると告げてきた。


「はい。メギド様への挑戦ですが……『代理を立てることは出来ません』。スタンプカードを持つ本人と、メギド様との一騎打ちになります」

「……え、えっと……」

「ですが、ご安心を……ミヤマ様もメギド様の主義はご存じかと思いますが、メギド様は相手に勝算のない勝負は行いません。必ず、ミヤマ様でも勝つ可能性のある勝負方法を提示されるでしょう」


 そういえば、そうだった。メギドさんは勝負を行う際は、必ず相手にも勝ち目のある方法で戦う。だからこそ以前の戦い……飲み比べては俺が勝利することが出来た。

 となると、少なくとも殴り合いではない……うん、それは本当にホッとした。


「それでは、私は他の挑戦者の挑戦を受けなければなりませんので、失礼します。ミヤマ様、どうかご武運を」

「あ、はい。ありがとうございました」


 アグニさんは一度俺に頭を下げてから、次の挑戦者の相手をするべく移動していった。俺もそれを確認してから、リリアさん達の居る場所へと移動する。


「これで、カイトさんは戦王様に挑戦できるんですね」

「お嬢様、幻王様のガイドブックによると、戦王様との戦いは観戦可能らしいですよ。どうでしょう? ここは、皆でミヤマ様の雄姿を見学するというのは……」

「ルナマリアさん、なんか楽しそうですね……」


 なんかルナマリアさんが生き生きとしている気がする。そんなに俺の苦しむ姿をみたいのだろうか? いや、まぁルナマリアさんだし……見たいんだろうな。


「ルーちゃんはミヤマさんのことが『大好き』ですから、近くで応援したいんですよ」

「お母さん!? なに言ってるんですか!」

「え? 違うのですか?」

「ち、違うに決まってるじゃないですか!? わ、私がどうして、ミヤマ様の応援など……」

「でも、いつもルーちゃんが積極的にいじわるするのは『好きな相手』――むぐっ!?」

「わー! ちょっと黙っててください!!」


 ゆるい感じでノアさんがなにかを言いかけたが、ルナマリアさんが大慌てで口を手で塞いだため最後まで聞きとることは出来なかった。

 しかし、うん。聞こえた部分の内容にちょっと恥ずかしくなったのは、内緒にしておこう。


 そんなやり取りを眺めていると、少し離れた場所でアリスと話していたイリスさんがこちらに近付いてきた。


「あっ、イリスさん。ありがとうございました!」

「礼は不要――いや、受け取っておくのが礼儀か……それより、カイトよ。少し、話せるか?」

「え? あ、はい。大丈夫ですよ」

「あまり聞かれたい話ではない、少し付き合ってくれ……」


 そう言ってイリスさんは移動を始め、俺はリリアさん達に断りを入れてから後を追った。









 闘技場の裏手から少し歩いた人気のない場所に辿り着くと、イリスさんはこちらを振り向いて口を開いた。


「改めて、自己紹介をしておこう。イリス・イルミナスだ」

「はい、えっと、宮間快人です」

「うむ……まぁ、あの時の念話では我が一方的に話すばかりであったからな……気になることもあろう?」


 どうやらイリスさんは、俺の疑問に答えるためにこうして他の人がいない場所に移動したらしい。

 確かにあの時は駆け足だったし、リリアさんたちが近くに居たので聞けないこともあった。


「……えっと、アリスの親友……ですよね?」

「あぁ、まぁ、そうだな……少々頭の痛いことではあるが、相違ない」


 どこか呆れたように苦笑しながら俺の言葉を肯定するイリスさんの声は、どこか優しげに聞こえ、アリスのことを大切に思っているというのが伝わってきた。


「イリスさんは……えっと、生き返ったんですか?」

「いや、生き返ったと表現するのは無理があるな……いまの我は、心具に宿った魔力体。そうだな、お前の居た世界の言葉で表現するのであれば、付喪神などと表現するべきかもしれん。あくまで我の本体は、心具……アポカリプスだからな」

「な、なるほど……でも、こうして普通の人間と同じように行動できているなら……」

「ところが、まだ問題はあるんですよね~」

「アリス?」


 イリスさんから簡単に説明を受けていると、その場にアリスが姿を現し溜息を吐きながら首を横に振った。


「……問題って?」

「う~ん。いや、まだ課題がありまして……イリス、やっぱり駄目ですか?」

「ああ、駄目だな。やはり『魔力が回復しない』……予め器に用意された魔力は自分のものとして扱えるが、新たに魔力を生成することはできないようだ」

「あ~やっぱりですか、器にしていてもあくまで体は私のものってことですか……その辺が今後の課題ですね」


 どうやら、イリスさんはまだ完全に復活したとは言えないらしい。二人の話を聞く限り、イリスさんは魔力を作り出すことが出来ず、消費すれば消費するだけ魔力が減っていくらしく、その魔力が切れると体を維持できなくなるとのことだ。

 言ってみれば充電式の体みたいなものらしい。


「そうだな、やはり我としては循環させるのがいいと思うが……」

「でもそれだと、結局段階的に減ってはいきますよね……魔力変換効率を考えるとイマイチですし、それなら空気中の魔力粒子を疑似変換させた方が……」

「だがそれでは、変換消費と合わせると回復できるのは本当に微量であろう? いっそ併合させるか? しかしそれでは器に負担が大きいか……」

「ですねぇ、粒子置換……いや、上位生成を……」

「……」


 なに言ってるかさっぱり分からない。と、とりあえず、イリスさんが完全復活できるには、まだ少々時間がかかるってのは、なんとなく理解できた。


「というか、実際に頭いいんだろうけど……なんかアリスが賢い話してると、違和感あるなぁ」

「ちょっと、カイトさん!? 心の声になってねぇっすよ!?」


 どうやら、つい思ったことが口に出ていたらしく、アリスがもの凄い勢いで反応する。


「言っときますけどね、アリスちゃんはスーパー賢い、インテリ系なんすよ! 私が眼鏡かけるとヤバいですよ。もう知性が溢れて止まらねぇっすよ」

「……もうなんか、その発言が馬鹿っぽい」

「馬鹿っぽい!?」

「事実馬鹿であろう」

「黙れ、貧乳」

「貴様とて、似たようなものであろうが!?」


 相変わらずのアリスではあるが……イリスさんがいるからか、どこかいつもより楽しそうに見える。その辺りはやっぱり、なんだかんだ言っても長い付き合いの親友同士なんだろうな。


「……ところで、アリス。聞いておきたいことがある」

「うん? なんすか?」

「……なぜ、我のことをカイトに隠しておった?」

「あっ、それは俺も気になる」


 アリスは開催式で実験という言葉を口にしていたし、あの時点でイリスさんに実体を与えることは決定していたんだろう。

 だとしたら、事前に話しておいてくれれば、あんなに驚くこともなかったのに……。


「だって……その方が面白いじゃないですか! ぶっちゃけ『パンドラけしかけたのも私』ですしね~」

「……」

「……」

「いや~カイトさんの驚く顔は、最高でし――ふぎゃっ!?」


 なるほど、うん。やっぱりアリスはアリスだったか……ならば、説教だ。


「か、カイトさん。め、目が怖いですよ? ほ、ほら~可愛い恋人ですよ?」

「パンドラさんもお前が原因だったのか……」

「カイト、我も付き合おう……この馬鹿の性根、叩き直す必要がある」

「ありがとうございます。イリスさん」

「え? なんすかその連帯感……や、やだな~ほんの茶目っ気――みぎゃっ!?」


 イリスさんも説教に参戦し、アリスは分かりやすいほど冷や汗を流し始める。

 こうしてアリスへの説教という共通の目的を得た俺とイリスさんは、言いようのない友情を感じながら馬鹿へ説教を始めた。


 拝啓、母さん、父さん――いろいろ会ったけど、メギドさんへの挑戦権を無事に獲得することが出来た。メギドさんの目的はいまだ分からないけど、ここまで来たんだし、後は――全力で挑戦するだけだ。


 



???「さて、では正解の発表です。実は正解者が居ました! アリスちゃんの書籍版公式身長は『139cm』です! ちなみに数字はクロさんより少しだけ高身長だけど、殆ど同じって事で決めたみたいですよ。まぁ、変えようと思えば自在に変えれますけどね。ちなみにアリスちゃんの元いた世界での家族の身長は、父親(176cm)母親(165cm)妹(162cm)だったみたいですね……遺伝子仕事しろ……」

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