挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

322/524

バレンタイン番外編~アリス&フェイト~

本日三話目の更新です。


 木の月13日目……バレンタインを明日に控え、どこか浮足立つ街の中、大通りから外れた場所にある雑貨屋。

「というわけで、シャルたん! 私にチョコレートの作り方を教えて!」
「……え、ええ、私も丁度作るところでしたし、一緒に作りましょうか」

 忽然と現れたフェイトにやや気圧されながらも、アリスはそれ了承してフェイトを台所に案内する。
 アリスからエプロンを借り、それを身に付けたフェイトは用意された調理器具を眺めつつ呟く。

「アレだよね。チョコレートを買ってきて湯で溶かすんだよね」
「いえ、市販品は雑味があるのでイマイチです……ここに、私が『カカオ豆』から作ったチョコを用意してますので……」
「……凄いね。豆から作るなんて」
「いえ、正確には『豆そのもの』も作りました……最高の環境を用意したおかげで、素晴らしいカカオが作れましたよ」
「……そ、そこまでしたの?」
「当り前です。カイトさんに贈るものなんですから……リリウッドさんに協力してもらって、最高のものを用意しましたよ」

 そう、アリスはこの日の為に1年以上かけて準備を行ってきていた。最高のカカオ豆を作る為に、界王リリウッドの協力を、カカオ豆から作ったチョコレートを分けるという条件の上で取り付けた。
 そして世界樹の精霊であるリリウッド、その配下の木の精霊総動員で完成させた至高のカカオ豆、もちろんそれだけではなく、他の材料も、どれも異常なほどの拘りで用意されている。

 牛乳は世界中を巡り最高のものを用意し、調理器具類も料理に味が移ってはいけないと『全て自作』していた。

「……な、なるほど……これは完成が楽しみだね」
「ええ、それではフェイトさんは……そうですね。シンプルにいきましょう。材料を入れたこれを、しっかりかき混ぜてください」
「うん、まかせて!」

 アリスからチョコレートと材料の入ったボールを受け取り、フェイトはやる気に満ち溢れた表情でかき混ぜ始まる。
 一回、二回、三回ほど回したところで、フェイトは手を止めアリスの方を向く。

「……どうしました?」
「……シャルたん……『疲れた』……」
「早いですよ!? まだ三回混ぜただけでしょ!?」
「いや、私、頑張った。超頑張った……だから、もう完成で良いんじゃないかな?」
「駄目に決まってるでしょ! まだロクに混ざってないですよ!?」

 三回手を動かしただけで疲れたとのたまうフェイトに、アリスは呆れたような表情を浮かべる。
 そして、しばらく駄々をこねるフェイトを説得し、なんとかチョコレート作りを再開させる。







「……はぁ……はぁ……く、苦労したかいがあって、かなり良い出来だね!」
「いや、ほとんど私が作りましたからね。あと、やり遂げた顔してるところ悪いですけど、形を整えたり、飾り付けしたりが残ってますからね」
「えぇぇぇ!? そ、そんな大変なの……私、チョコ作りを舐めてたよ」
「私はフェイトさんのぐうたら具合を舐めてましたよ……」

 それは、もう隙あらばサボろうとするフェイトとの戦いだった。
 自分から教えてくれと言っておきながら、このだらけ具合には、流石に長い付き合いのアリスも呆れきった顔をしていた。

 そしてフェイトがしぶしぶ型にチョコレートを流しこみ、ソレが固まるのを待つ間、アリスは自分のチョコレート作りを進めていく。
 アリスの手が超高速で動き、チョコレートに飾る綺麗な形の飴細工を作りだしていく。

「……う~ん。ちょっと凝りすぎましたかね?」
「うん? おぉぉぉ……シャルたん、凄い! これって、アレだよね。カイちゃんとカイちゃんが飼ってるペットだよね!」
「ええ、ベルフリードとリンドブルムです。飴の色も場所によって変えてますので、中々の再現度だと思いますよ」

 アリスは中々と言っていたが、彼女の技術は世界最高峰であり、作りだされた飴細工はもはや芸術の域と言ってよかった。

「本当に凄いよ……って、そう言えば、シャルたんはどんなチョコ作るの?」
「え? ああ、ザッハトルテですよ。流石に普通に一ホールでは大きすぎるので、小さめに作りますが……」
「お、おぉ……なんか難しそうなのを……うん? 待てよ……」
「どうしました?」

 アリスの菓子作り技術を賞賛していたフェイトだが、途中でなにかを思い付いたのか思案顔になり、アリスは首を傾げてフェイトを見る。

「シャルたんは……例えばだけど、チョコでも同じように成形できるの?」
「え? ええ、大抵の形は作れますが……」
「じゃあさ、このチョコレートを『私の形』に出来る?」
「……出来ますけど、それどうするんですか?」
「ほら『私を食べて』みたいな感じで!」
「……ま、まぁ、フェイトさんがそれで良いなら……やりますけど……」
「やった!」

 フェイトの要望に微妙な顔を浮かべながら、いつの間にか魔法を使って固めてあるチョコレートを手に取る。

「……それで、一口にフェイトさんの姿っていっても、色々ありますけど」
「『裸体』で!」
「……は?」
「だから、裸体で!」
「……いや、残念ながら私はフェイトさんの裸体までは詳しくないので、ちょっと作れないかなぁと思うんすけど……」

 ドストレートに裸体の自分を作れと言ってくるフェイトに、アリスは今日何度目か分からない呆れた表情を浮かべる。
 フェイトの考えていそうなことは分かるが、そもそもアリスはフェイトの裸なんて凝視したことはない。服を着ている状態なら細部まで再現できるが、流石に見たことが無いものまでは作れない……というか、作りたくなかった。

「ああ、大丈夫。ちゃんとここに『モデル』が居るから」
「ちょっとぉっ!? フェイトさん、なに当り前のように脱ごうとしてるんすか!? ストップ!」
「え~でも、そうしないと『ドキッ、魅惑の女神様チョコ』が作れないじゃん」
「その頭の痛くなりそうなネーミングはおいておいて、私になに作らせようとしてるんですか! 却下です、却下!! 見せたって絶対作りませんからね!」
「ぶぅ~シャルたんのケチ」
「ケチとかそういう話じゃないでしょうがぁぁぁぁ!!」
「じゃ、じゃあ『触って』もいいから!」
「なにもよくないですよ!? なんでしたり顔なんですかあぁぁぁぁ!!」

 ……こうして、フェイトに振り回されながら二人のチョコレート作りは進んでいった。



キマシタワー
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ