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バレンタイン番外編~アリス&フェイト~

本日三話目の更新です。



 木の月13日目……バレンタインを明日に控え、どこか浮足立つ街の中、大通りから外れた場所にある雑貨屋。


「というわけで、シャルたん! 私にチョコレートの作り方を教えて!」

「……え、ええ、私も丁度作るところでしたし、一緒に作りましょうか」


 忽然と現れたフェイトにやや気圧されながらも、アリスはそれ了承してフェイトを台所に案内する。

 アリスからエプロンを借り、それを身に付けたフェイトは用意された調理器具を眺めつつ呟く。


「アレだよね。チョコレートを買ってきて湯で溶かすんだよね」

「いえ、市販品は雑味があるのでイマイチです……ここに、私が『カカオ豆』から作ったチョコを用意してますので……」

「……凄いね。豆から作るなんて」

「いえ、正確には『豆そのもの』も作りました……最高の環境を用意したおかげで、素晴らしいカカオが作れましたよ」

「……そ、そこまでしたの?」

「当り前です。カイトさんに贈るものなんですから……リリウッドさんに協力してもらって、最高のものを用意しましたよ」


 そう、アリスはこの日の為に1年以上かけて準備を行ってきていた。最高のカカオ豆を作る為に、界王リリウッドの協力を、カカオ豆から作ったチョコレートを分けるという条件の上で取り付けた。

 そして世界樹の精霊であるリリウッド、その配下の木の精霊総動員で完成させた至高のカカオ豆、もちろんそれだけではなく、他の材料も、どれも異常なほどの拘りで用意されている。


 牛乳は世界中を巡り最高のものを用意し、調理器具類も料理に味が移ってはいけないと『全て自作』していた。


「……な、なるほど……これは完成が楽しみだね」

「ええ、それではフェイトさんは……そうですね。シンプルにいきましょう。材料を入れたこれを、しっかりかき混ぜてください」

「うん、まかせて!」


 アリスからチョコレートと材料の入ったボールを受け取り、フェイトはやる気に満ち溢れた表情でかき混ぜ始まる。

 一回、二回、三回ほど回したところで、フェイトは手を止めアリスの方を向く。


「……どうしました?」

「……シャルたん……『疲れた』……」

「早いですよ!? まだ三回混ぜただけでしょ!?」

「いや、私、頑張った。超頑張った……だから、もう完成で良いんじゃないかな?」

「駄目に決まってるでしょ! まだロクに混ざってないですよ!?」


 三回手を動かしただけで疲れたとのたまうフェイトに、アリスは呆れたような表情を浮かべる。

 そして、しばらく駄々をこねるフェイトを説得し、なんとかチョコレート作りを再開させる。








「……はぁ……はぁ……く、苦労したかいがあって、かなり良い出来だね!」

「いや、ほとんど私が作りましたからね。あと、やり遂げた顔してるところ悪いですけど、形を整えたり、飾り付けしたりが残ってますからね」

「えぇぇぇ!? そ、そんな大変なの……私、チョコ作りを舐めてたよ」

「私はフェイトさんのぐうたら具合を舐めてましたよ……」


 それは、もう隙あらばサボろうとするフェイトとの戦いだった。

 自分から教えてくれと言っておきながら、このだらけ具合には、流石に長い付き合いのアリスも呆れきった顔をしていた。


 そしてフェイトがしぶしぶ型にチョコレートを流しこみ、ソレが固まるのを待つ間、アリスは自分のチョコレート作りを進めていく。

 アリスの手が超高速で動き、チョコレートに飾る綺麗な形の飴細工を作りだしていく。


「……う~ん。ちょっと凝りすぎましたかね?」

「うん? おぉぉぉ……シャルたん、凄い! これって、アレだよね。カイちゃんとカイちゃんが飼ってるペットだよね!」

「ええ、ベルフリードとリンドブルムです。飴の色も場所によって変えてますので、中々の再現度だと思いますよ」


 アリスは中々と言っていたが、彼女の技術は世界最高峰であり、作りだされた飴細工はもはや芸術の域と言ってよかった。


「本当に凄いよ……って、そう言えば、シャルたんはどんなチョコ作るの?」

「え? ああ、ザッハトルテですよ。流石に普通に一ホールでは大きすぎるので、小さめに作りますが……」

「お、おぉ……なんか難しそうなのを……うん? 待てよ……」

「どうしました?」


 アリスの菓子作り技術を賞賛していたフェイトだが、途中でなにかを思い付いたのか思案顔になり、アリスは首を傾げてフェイトを見る。


「シャルたんは……例えばだけど、チョコでも同じように成形できるの?」

「え? ええ、大抵の形は作れますが……」

「じゃあさ、このチョコレートを『私の形』に出来る?」

「……出来ますけど、それどうするんですか?」

「ほら『私を食べて』みたいな感じで!」

「……ま、まぁ、フェイトさんがそれで良いなら……やりますけど……」

「やった!」


 フェイトの要望に微妙な顔を浮かべながら、いつの間にか魔法を使って固めてあるチョコレートを手に取る。


「……それで、一口にフェイトさんの姿っていっても、色々ありますけど」

「『裸体』で!」

「……は?」

「だから、裸体で!」

「……いや、残念ながら私はフェイトさんの裸体までは詳しくないので、ちょっと作れないかなぁと思うんすけど……」


 ドストレートに裸体の自分を作れと言ってくるフェイトに、アリスは今日何度目か分からない呆れた表情を浮かべる。

 フェイトの考えていそうなことは分かるが、そもそもアリスはフェイトの裸なんて凝視したことはない。服を着ている状態なら細部まで再現できるが、流石に見たことが無いものまでは作れない……というか、作りたくなかった。


「ああ、大丈夫。ちゃんとここに『モデル』が居るから」

「ちょっとぉっ!? フェイトさん、なに当り前のように脱ごうとしてるんすか!? ストップ!」

「え~でも、そうしないと『ドキッ、魅惑の女神様チョコ』が作れないじゃん」

「その頭の痛くなりそうなネーミングはおいておいて、私になに作らせようとしてるんですか! 却下です、却下!! 見せたって絶対作りませんからね!」

「ぶぅ~シャルたんのケチ」

「ケチとかそういう話じゃないでしょうがぁぁぁぁ!!」

「じゃ、じゃあ『触って』もいいから!」

「なにもよくないですよ!? なんでしたり顔なんですかあぁぁぁぁ!!」


 ……こうして、フェイトに振り回されながら二人のチョコレート作りは進んでいった。



 


キマシタワー

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― 新着の感想 ―
フェイトは心を許した相手にみんなこうなのかw てか相変わらず本人の見てないところでアリシアの愛が重いw
[一言] ええ〜細かく細部まで作って欲しいなぁ…|*・ω・)チラッ 頂点部とか…フェイたん生えてるのかな?生えてたら1本1本ちゃんと再現して… 生えてなかったら、見事なツルリンとしたものを…(๑ ิ…
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