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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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アリスと向かい合う事にする



 善は急げ、思い立ったが吉日……行動は早い方がいいという事で、俺はさっそく神界の上層までやってきていた。
 目的は勿論フェイトさんからアリスについての話を聞く事……だが、世の中そうそう上手くはいかないもので、フェイトさんの神殿を尋ねてみたが、生憎な事にフェイトさんは留守だった。

 こうなると困ったもので、フェイトさんが行きそうな場所が想像できないし、もし仕事をさぼって逃げたのだとしたら見つけるのは困難だろう。
 ハミングバードで連絡しようにも、フェイトさんはクロノアさん対策で特殊な結界を張っており、ハミングバードでの連絡を受け付けないようにしているらしく、何度飛ばしてもハミングバードは戻ってくる。
 なので俺は次に、フェイトさんの居所を知っていそうな方……クロノアさんの神殿を訪れた訳なんだが……そこで驚くべき言葉を聞いた。

「ああ、運命神なら『仕事を終わらせて』人界に出かけていったぞ」
「成程、そうですか……え? 仕事を……終わらせて?」

 なんだか今、クロノアさんの口から、フェイトさんに一番似合わない言葉が聞こえてきた気がする。
 いや、聞き間違いかもしれない。あのフェイトさんが仕事を終わらせるなんて……申し訳ないが信じられない。

「驚くのは無理もない。我も半信半疑だったが……確かに全て終わらせている」
「……い、一体なにが?」
「分からん。人界に用事があるようだったが、声が小さくて詳細までは聞き取れなんだ」

 クロノアさんは驚いている俺に、自分も驚いたと告げながらフェイトさんが何処に行ったか分からないと告げる。
 困った……本当にフェイトさんはどこに行ったんだろう? 仕事を終わらせてまで行く場所? 想像もできない。

「……なにか運命神に用だったのか?」
「え? あ、はい……実は……」

 尋ねてきたクロノアさんに対し、俺は少し思うところもあったので、今回フェイトさんを探している件についての事情を説明していった。






「……ふむ、成程な」
「はい。それで、クロノアさんはなにか、アリスの様子について心当たりはありませんか?」

 話を聞き終えたクロノアさんは、腕を組みながらなにやら難しい表情を浮かべる。
 そんなクロノアさんに、俺はアリスの様子についてなにか心当たりが無いかを聞いてみた。

「……なぜ、それを我に尋ねる?」
「えっと……クロノアさんは前に、幻王に対して注意してくれた時……アリスの事、喧しくて鬱陶しいって言ってましたよね? それって、鬱陶しいと感じるぐらいには、アリスと会話してるって事なんじゃないですか?」
「……ふむ。良い読みだ……が、恐らくお前の期待しているような答えは出せん。それでも良ければ、少し説明してやろう」
「お願いします」

 クロノアさんがアリスとそこそこ親しいのではないかと思って尋ねると、クロノアさんは感心した様子で一度頷き、アリスとの関係について少し説明をしてくれると言ってきた。

「……っと言っても話せる事は殆ど無い。ただ、幻王は、よく我の所に訪れておる」
「……」
「運命神に会うついでだったり、適当に理由をつけてはいたが……別になにか用件がある訳でもなく、他愛のない雑談……いや、奴が一方的に色々話してきておってな」

 う~ん。どういう事だろう? クロノアさんの口振りだと、別にアリスと仲が良い訳ではないみたいだが、アリスの方がクロノアさんに会いに来てるみたいだ。
 俺が知る限りでは、特に接点があるようには思えないんだけど……なんでアリスは……

「我も一度気になって、尋ねてみた事がある。なぜ貴様は我に頻繁に話しかけてくるんだ? っとな」
「……それで?」
「奴は呟くように『喋り方が、似てるんです』とだけ答えて、それ以上はなにも言わなんだ。故に、我も誰に似ておるのかまでは分からん。すまんな、あまり力にはなれそうにない」
「いえ、ありがとうございます。参考になりました。他にも色々聞いてみる事にします」

 少し気にかかる内容ではあったが、確かにクロノアさんのいう通り、現状の解決に繋がるとは思えない。
 他を当たってみる事にしよう。まだ、家族である六王の方々や、アインさんもいる訳だし、そっちにも話を聞いてみれば多少は情報が……

「……なぁ、ミヤマ?」
「はい、なんですか?」
「……『らしくない』のではないか?」
「……え?」

 フェイトさんが見つからない以上、他の手段をと考えていた俺に、クロノアさんが静かな声で……らしくないと告げてきた。
 クロノアさんの赤と青の瞳が静かに俺を映していて、その雰囲気に少し気圧されていると、クロノアさんは静かな口調で言葉を続ける。

「回りくどく周囲から情報を集め、外堀を埋めて……それは、お前らしくないやり方だと、我は思う」
「……」
「お前はいつも愚直で、真っ直ぐ真剣に向き合っていた……それがお前の美徳ではないか? 慣れぬ手段を講じれば、仕損じるだけだぞ」
「……クロノアさん」

 らしくない、それは今までのお前のやり方ではないだろう? そんな風に優しくも、鋭くクロノアさんの言葉が心に響く。

「恐ろしいのは分かる。奴との今の関係が心地良いからこそ、それが変わってしまうと思うと、中々思いきった行動をとれないのであろう? しかし、それは意味のない悩みだ」
「……」
「お前はもう、奴の心の奥底に踏み込むことを決めた筈……なれば、どちらにせよ、最終的にはそこに辿り着く。対峙する相手も、尋ねるべき内容も同じだ……これ以上は、言わずとも分かるな?」
「……はい」

 クロノアさんの言葉は、そのものズバリだった。
 アリスの事を知りたいなら、どうすればいいのか……そんなものは、アリスに聞くのが一番に決まっている。
 アリスが素直に応えてくれるかは分からない。だけど、こうして情報を集めたとしても、最終的にはアリスと対峙しなければ進む事は出来ない。

 他者があまり土足で踏み込んで良い内容では無いのかもしれない。アリスが話してくれるまで待つという手もある……でも、世の中には、待つだけでは変えられない。こちらから行動を起こさなければ、踏み込んでいかなければ見つけられないものもある。
 俺は、アリスの抱える秘密については……後者だと思っている。

 だとすれば、確かにクロノアさんのいう通り……こんなのは俺らしくないかもしれない。砕けるつもりはないが、当たってみなければ始まらない。
 俺が向かうべき場所は、最初から神界では無くアリスの元だった。

「……良い目だ。ささやかながら、我も上手くいくように応援しておく」
「はい! ありがとうございました!」

 心強いクロノアさんの応援の言葉を受け、俺はゆっくりと覚悟を決める。
 アリス自身から、彼女の抱えている秘密を聞きだす覚悟を……

 拝啓、母さん、父さん――俺は正直あまり賢くはないし、スマートなやり方なんてのは無理なのだろう。だったら、簡単な事だ。後は今まで通り、なにより俺らしく――アリスと向かい合う事にする。









 日が落ち始め、薄暗くなった雑貨屋の店内。暗い表情でカウンターに伏せるアリスの耳に、鍵をかけていた筈の扉が開く音が聞こえる。

「やっほ~シャルたん!」
「……フェイトさん?」

 聞こえてきた声に微かに顔を上げたアリスだが、訪ねてきたのがフェイトだと知ると、再び顔をカウンターに乗せた腕の中に戻す。
 そんなアリスを見ながら、フェイトはゆっくりした足どりでカウンターに近付いてくる。

「……すみません。今日はお茶とかする気分じゃ……」
「ああ、うん。問題無いよ~別にお茶しに来たわけじゃないし……」
「……え? あれ? フェイトさん、なんで『結界』を……てか、なんで目が金色に……」
「まぁ、とりあえず……よいしょっぉ!!」
「がふっ!?」

 ゆるい口調のままで突如店の中に結界を張りだしたフェイトに反応し、アリスがゆっくりと顔を上げると……フェイトの目は金色。彼女が本気を出す時の色に変わっていた。
 そしてその事を尋ねようとしたアリスの顔面に、掛け声とともに拳が叩き込まれる。

 最高神であるフェイトの一撃を受け、アリスはまるでピンボールのように弾き飛ばされ、店の壁に激突する。
 本来なら壁に穴が開いていただろうが、その辺りはしっかり結界で補強済みだった。

「……な……い……いきなりなにするんすか!?」
「う~ん。まぁ、ほらアレだよ。アレ……なにがあったかはある程度知ってるけどさ、もう、本当にくだんない事でウジウジ悩んで……乙女かお前は!」
「……乙女っすよ!! 花も恥じらう、可憐な乙女……」
「はんっ」
「出会いがしらに殴られた上に、鼻で笑われた!?」

 アリスの抗議もどこ吹く風といった様子で、フェイトは何度か拳を鳴らしながら、ゆっくりと足を引いて構えを取る。

「まぁ、体動かせば少しは頭も冷えるでしょ……という訳で、さっさと覚悟してね。シャルたん」
「ちょ、ちょっと待ってください! 一体なんで……」
「しゃらっぁぷ!! 質問、苦情は一切受け付けない! 言いたい事があるなら、拳で語れ!!」
「どこの暴君ですか貴女!? ちょっ、くっ……なんでこんな事に……」
「どっこいしょ~!」
「げほっ!? け、蹴りまでぇぇ!?」



○町式交渉術。
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