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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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『絆の力、神の思惑』



 地球神がアリスの実力を高く評価した事で、戦いは更に苛烈になっていく。
 地球神が羽から放つ光弾は先程までより遥かに早く、更なる威力を持って絶え間なく放たれているが、その攻撃は未だアリスには届かない。
 地球神は芸術的とすら言える体捌きで攻撃を掻い潜るアリスを見て、その分析を進めていた。

 飛びぬけて速い訳ではないのに、攻撃を回避し続ける。地球神の目から見て、アリスはこの世界でも最高格の力を持つ存在に見えた。
 普通これだけ圧倒的な力を持っているなら、戦い方は雑になるもの……だが、アリスの戦闘技術は、『弱者としての武器』を最大限まで磨き上げたものと言って良かった。

 アリスの強さの根底……それはあまりにも鋭敏な危機察知能力と対応力だった。
 己に迫る危機、己を害する攻撃、それを察知する速度が恐ろしいほど早く、そして膨大な手札を的確に切り対応していく。
 それは膨大な戦闘経験から得たであろう力であり、地球神は目の前の少女が遥か格上の相手と戦う事に慣れていると推測した。

 だが、そうなると疑問が残る……先にも述べた通り、地球神から見てアリスはこの世界でも最高格の力を有する存在の筈だが……なぜこんなにも格上と戦い慣れている?
 初めて見る攻撃、初めて放たれる角度、それにすら対応できる程圧倒的な経験があり、己より能力で上回る相手との戦い方を熟知している。
 それはつまり、アリスは地球神のように生まれついての強者では無く……『弱者から強者へと成った』存在であることの証明でもあった。

 だからこそ、地球神の心の中には賞賛の感情が溢れんばかり湧いている。
 果して己と戦える程に刃を磨き上げるには、どれ程気の遠くなる程の死地をくぐり抜けてきたのかと……

 だが、感心してばかりも居られない。地球神はまだ、今回の最大の目的を達成していない。
 快人を見定める事……表層から読みとれる情報では、単なる凡人としか認識できなかったが、地球神もそれが全てとは思っていない。
 ならば内面かと思い、そちらを見定めようとしたところで横槍が入り、こうして快人から遥か彼方まで引き離されてしまっている。

「早期、決着」

 アリスの戦い方が面白く、ここまで『手を抜いて』戦っていたが……これ以上時間をかける訳にもいかない。
 地球神はこの戦いが長引こうと問題無い。目の前の少女も問題無く対応してくるだろう……しかし、地球神の心には一抹の不安があった。

 我は問題無い、目の前の少女もそうだろう。しかし、あの人間はどうだ? 人間は自分と違って無尽蔵にエネルギーを生成する事は出来ない。この戦いが数日、数ヶ月、数年と続けばあの人間は死んでしまうのではないか……いや、仮に死ななかったとしても、あの人間が空腹で苦しめば……それはあの人間を害した事になるのではないか?
 もしそうだとすれば、そうなった時点であの神の半身が介入してくる。そうなれば最悪だ。あの人間の真価を見定める事も出来なくなる。

 そう考えながら地球神は……ついに『威力だけ』は全力で攻撃を開始した。
 新たに生み出した光弾は、一発のサイズが数メートル……それが何億発と、光に匹敵する速度で放たれる。
 空間を埋め尽くすほどの光の奔流は、一瞬でアリスの体を飲み込み、あまりにも巨大な爆発を引き起こした。

「決着……ッ!?」
「……ふ、ふふふ……ははは……」

 これで決まったかと、そう思った地球神の視線の先、爆煙の中から笑い声と共に『無傷』のアリスが姿を現す。

「『皆を失って』から、ずっとずっと、チグハグで部品が足りないみたいに、私はずっと不完全だった」
「……魔力、急激、上昇?」
「目の前には倒さなくちゃいけない敵が居て、私の後ろには守りたい大切な存在が居る……あぁ、これだ……これが、本当の私……やっと、やっと、私は『昔の自分に追いついた』……」
「ッ!?」
「ここが――この瞬間こそ――我が心の極地――限界を超え――今、世界を紡げ! ――ヘカトンケイル!!」

 力強い叫び声とともに、アリスが纏っていた数多の光が、全てアリスの体に吸い込まれていく。
 アリスの放つ圧力が増し、呼応するように魔力が跳ねあがっていく。
 目の前にいるのはアリス一人の筈なのに、まるで膨大な数の戦士達が軍を成しているかのような、そんな圧倒的な存在感と共に、アリスは口元に笑みを浮かべる。

「イリス、ノエル……皆、私に力を貸して。カイトさんを奪わせない、失わない……私は、誰にも負けない! さあ……始めよう! 二度目の神殺しを!」
「能力、上昇……脅威」







 無限に広がる空間の中で、閃光が幾度も爆ぜる。
 手加減をやめた地球神は、様々な攻撃を繰り出し、アリスに放った……しかし、アリスは健在である。
 光を巨大な剣状に造り薙ぎ払えば、霧のように姿を変えて回避する。四方を光の壁で覆って逃げ道をなくしてから内部に攻撃を放っても、また別の姿に変わったアリスは光の壁をすり抜けて回避する。

 ここまでの応酬で、地球神はアリスの能力についても認識できた。
 彼女がヘカトンケイルと呼ぶ力は、なんらかの条件を満たした相手に変身し、その力を行使する事が出来ると言うもの……そしてその使える力に関しても、一瞬しか使えない相手、解除しない限り変身し続けられる相手と二種類が存在する。
 中でも特に厄介なのは、そのずっと変身していられる方……巨大な杖を持った二色の髪の少女、光を放つ双剣を持つ金のストレートヘアの女性、燃え盛るような赤い髪の女槍騎士、法衣に身を包み経典を持つ男性……地球神がここまでで目にしたのはその4人だけだが、『武器を持っている』相手は、明らかに他の変身と比べて強力だった。

 無論地球神とて圧倒的な強者であり、攻撃のパターンを次々に変えながら戦闘を行ったが、アリスは膨大な手札から的確な能力を選び対処してみせた。

「……」

 現在地球神の背にある羽は『半数が切り落とされ』、体のあちこちにも切り傷があり、やや押されていると言って良い状態だった。
 無論窮地とは程遠い。その気になれば地球神は己の体を一度消滅させ、再創造する事も出来る。現在傷を修復していないのは、特に動きに支障が無い為放置しているだけ。

 しかし攻め手の方が手詰まりになりつつあった。
 アリスに対して最も有効な攻撃手段は、回避不可能な超広範囲攻撃だと推測できるが……それをするとカイトも巻き込まれてしまう可能性がある。
 後は肉弾戦だが……それも同様に、衝撃波でも発生してしまえば快人を巻き込んでしまうかもしれない。シャローヴァナルとの約束を違える気が無い地球神にとって、それらは選べない手段。

 さてどうやってこの厄介な相手を退けるか、そう考えながら地球神は迫ってくるアリスに向けて手を構える。

「ッ!? チィ……」

 すると、アリスはほんの一瞬だけ眉を動かし……先程までは回避していた筈のタイミングで、急激に踏み込んで接近してきた。
 明らかにこれまでなかった焦りが生まれたアリスの動き、それを地球神は見逃さず……『向けていた手を引き』、アリスの拳を受けて吹き飛ばされた。

「……え?」

 あまりにも綺麗に拳が入り、アリスは驚いたように目を見開き、動きを止めて少し考える表情を浮かべる。
 そして地球神が体勢を立て直したのを見てから、一瞬で長距離を移動し、快人の元へ戻ってきた。

「え? あ、アリス!? い、一体なにが……」

 人間である快人の目では、地球神とアリスの戦いを認識できる筈もなく、彼にとっては遥か遠方でなにかが光っているのが見えた程度で、状況は全く理解できていなかった。
 だからこそ突然現れたアリスに驚きながらも、なにが起きているのかと問いかける。

 しかしアリスはその質問には答えないまま、警戒は怠らずに口を開く。

「……カイトさん、どうも、アイツ……カイトさんを傷つける気はないみたいなんですよ」
「……え?」
「さっき、一瞬ですが私とカイトさんの居る場所が、アイツから見て直線状にピッタリ並びました……まぁ、そのまま撃たれても対処する算段はありましたけど……アイツにとっては、私が避けれない絶好の狙い目だった筈なんです。でも、アイツは攻撃を中断した」

 そう、先程アリスが眉を動かした場面は、地球神にとってアリスに攻撃を当てるチャンスだった。
 アリスは出来るだけ快人の居る方向に攻撃が向かないように立ち回っていたが、地球神程の実力者相手を完封は出来ず、それによって何度かダメージを受けるのは覚悟していた。
 しかし、地球神は撃たなかった。

「……たぶんアイツは、私が避けてカイトさんに攻撃が当たる事を避けた。それに、広範囲殲滅みたいな攻撃もしてきませんでした……どうも、アイツにはカイトさんを傷つけられない事情があるみたいです」
「……」
「なので、どうします? 穏便に終わらせられる可能性もあるみたいですよ?」
「……」

 地球神がカイトを傷つけない、傷つけられない可能性が高い。そう認識したアリスは、少しだけ血が上っていた頭が冷静になり、快人の判断を仰ぐことにした。
 突然アリスに問いかけられ、驚きもあって沈黙する快人……そんな二人の前に『傷の完治した』地球神が近付いてきた。



さ、砂糖が、足りない……もう駄目、つらい……次回で地球神を快人の毒牙に……

シリアス先輩「おい馬鹿、やめろ」
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