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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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厄介事を引き寄せる様だ

 この1時間半の間に集まった人が減っているのを期待したが、残念ながら神殿の入り口は相変わらず大量の貴族と神官の姿があり、リリアさん達を探すのに少し苦労した。
 しかしそれでもやはり貴族という高い身分の者、神官という立場の者が集まっている人達の大半な事もあり、お祭りの様に騒がしく統率がとれていないという訳では無いので、動けない程では無い。
 ただ、あちこちに高価そうな服着た貴族が多いので、ぶつかったりしない様に移動に神経を使うので少々疲れた。

「すみません。お待たせしました」
「お疲れ様です。カイトさん」

 程なくして合流すると、リリアさんが穏やかな笑顔で迎えてくれる。
 やはりまだ集まる人は増えている様で、身動きが取れなくなる前に馬車まで移動しようという事になり、移動しながら会話を行う。

「あれ? 宮間先輩が手に持ってるのって、何ですか?」
「え? ああ、シロさ――女神様に貰った紅茶の葉だよ」

 合流を優先していた為、マジックボックスにしまわず手に持ったままだった小瓶に気付いた柚木さんが尋ねてきたので、歩きながら簡単に言葉を返す。
 すると何故か、前を歩いていたリリアさんとルナマリアさんの足が止まった。

「……カイトさん、えと、今何と?」
「え? この小瓶は女神様に貰いましたって……」
「……ミヤマ様、い、一体どのような手段を用いて初対面の女神様にそこまで気に入られたのです?」
「え、えと……お茶を頂いて雑談しただけですが……」
「「女神様とお茶!?」」

 俺が何気なく告げた言葉は、どうやらお二人にとっては信じられないものだったらしく、リリアさんとルナマリアさんは完全に移動を止め、目を大きく見開いてこちらを振り返る。
 あれ? 何かこれ、たぶんだけど、話し方を失敗したぞ……

「……ルナ……私達ここに何度訪れましたっけ? 私お茶はおろか、女神様とロクに会話した事も無いんですが……」
「お嬢様……どうか、お気を確かに……これはお嬢様に非があるのでは無く、ミヤマ様の社交力が高すぎるだけだと思われます」
「あ、えと……流石にそれは大袈裟すぎる気が……本当に少し話をしただけで」
「ミヤマ様、女神様と交流を持つと言うのは、即ち神界より一定の信頼を得る行為。特に横の繋がりを重要視する貴族社会で考えれば、もはや一種の権威ですらあります」
「……」

 えぇぇぇぇ!? な、何か物凄く大袈裟な事になってる!?
 い、いやいや、マジで誤解です。俺がシロさんと仲良くなれたのは、大体全部あの幼女魔族の力だし、なんか俺のコミュ力が凄いみたいな感じに話を持って行かれても……
 リリアさんに至っては、何か尊敬する様な目でこっち見てるし、これは早く誤解を解かないと……

「いや、リリアさん誤――「これはこれは、アルベルト公爵殿ではありませんか」――い?」

 絶妙なタイミングで何か来た!?

「奇遇ですね。ドゥーカス伯爵」
「昨日の夜会以来ですね。アルベルト公爵殿も祝福に?」
「ええ、先程終わった所です」

 どうやら嫌なタイミングで登場したのはドゥーカスという伯爵様らしい。
 かなりキラキラゴテゴテした衣装を身に纏ってるとこから見ても、いかにも貴族ですみたいな感じだ。後何か大きいな――横に。
 たぶんアレだろう、オークと人間の混血とかそんな感じなんだろう。

「ミヤマ様、考えてる事は何となく分かりますが……純血の人間です」

 そんな俺の考えを察したのかルナマリアさんが小声で話しかけてきた。
 どうやら混血とかではなくただ太ってるだけらしい。だとしたらちょっと……流石にこのサイズは健康的に良くないんじゃないかと思う。
 人の多さも相まって凄い圧迫感。初対面で言えることではないけど、油物は控えめにした方が良いと思う。

「異世界の姫達も一緒ですか、いや華があって良いですな」
「「ッ!?」」
「お美しいアルベルト公爵殿は勿論、異世界の姫方も、さぞ法衣もお似合いだったのでしょう。是非拝見したかったものですな」

 ドゥーカス伯爵はこちらを向くと、俺の事など眼中にないと言った感じで楠さんと柚木さんを見て、ニタァと肉付きの良い顔を歪めて笑う。
 うわぁ……笑うとまた一段と凄い。ガマガエルみたいというか何と言うか、楠さんと柚木さんが明らかに怯えてる感じがする。ここまで欲望に忠実な目線を向けられるってのは、ある意味凄い人だな。
 流石にそんな舐め回す様な視線に二人を晒したままというのは気が引けたので、俺は一歩足を勧めドゥーカス伯爵と二人の間に割って入る様に移動する。

「むっ?」

 まぁ予想された結果ではあるが、ドゥーカス伯爵は視界の前に出てきた俺を見て、明らかに顔を不機嫌そうなものに変化させる。何と言うか本当に欲望に忠実というか、分かりやすい人だ。
 かと言って相手は伯爵。睨みつけられたからと言って、こちらも睨み返してしまえばリリアさんにも迷惑がかかってしまうので、俺は作り笑顔を浮かべて一礼する。

「初めまして、伯爵様。異世界人の宮間快人と申します。お話の途中で失礼かと思いましたが、ご挨拶がまだでしたので」
「……ほぅ、それは失礼。あまりに地味なので、てっきり馬車の従者か何かかと思っておったわ」

 おおぅ、速攻でディスられた。この清々しいまでの対応の差は、ある意味感心する。
 しかし、生憎とそう言った「なにコイツ?」みたいな反応には慣れっこなのと、アハトとか見たおかげか睨まれても全然威圧感も感じないので、俺は笑顔のままで言葉を返す。

「みすぼらしい外見で申し訳ない。生憎と貴族社会とは無縁の世界から参りました若造でして、礼儀がなっていないのもご容赦いただければ幸いです」
「……ふんっ」

 位高ければ(ノブレス・)徳高きを要す(オブリージュ)って素敵な言葉はどこに行ってしまったのか、腹立つのは分かるけど、せめて挨拶ぐらい返してもらいたいものだ。
 まぁかと言って、表面上は笑顔で腰低く挨拶をしてきてる俺を、楠さんと柚木さんを背中に隠しているのが気に入らないという理由でどかす事も出来ず、ドゥーカス伯爵は忌々しげな視線を俺に送った後で視線を外す。
 そして結局俺に挨拶は返さないまま、リリアさんと一言二言言葉を交わしてから去っていった。本当に何というか、駄目な貴族のテンプレみたいな人だ。

「ミヤマ様、ご立派でした」
「……なんて言うか、分かりやすい人でしたね」
「御想像の通り、好色家で有名な伯爵でして……昨晩の夜会でもクスノキ様とユズキ様に何度も話しかけようとしていたそうです」
「そこまで自分の欲望に忠実なのは、ある意味尊敬しますね……っと、二人共大丈夫?」
「は、はい。ありがとうございます、宮間さん」
「うぅ、私あの人苦手です」

 どうやら二人にはあのガマガエル伯爵はトラウマレベルの相手らしく、明らかにホッとした様子で俺の後ろから出てくる。
 確かにあの笑みは凄かった。男の俺でさえ鳥肌が立ちそうだったし、女性にはしんどいものがあるだろう。冷静に対応していたリリアさんは流石貴族と言うべきだろう。

「まぁ、お嬢様によって来る男はあんなのばっかりです」
「言わないで下さい……ルナ」
「ここは、やはりミヤマ様の良縁を引き寄せる力にでも、頼った方がいいのでは?」
「うぅ、カイトさんが羨ましいです」

 そう言えば以前聞いた覚えがある。リリアさんは王族ではあるが、騎士団から公爵へなったのと、女性当主という事もあって所謂人脈作りにやや苦労しているらしい。
 貴族にとって横の繋がりは即ち力と言って良い。リリアさんは王家という特大のパイプは持っているが、騎士団員としてしばらく社交界から遠のいていた事もあって、それ以外であまり強い権威を持った相手との縁が少ないとの事だ。

「つまり、宮間先輩は招き猫って事ですね!」
「ヒナさん、招き猫というのは何ですか?」
「金運や人運――所謂福を招くという、私達の故郷にある開運の置き物ですね」
「成程! つまりカイトさんに祈れば……」
「何の御利益も無いですからね!?」

 柚木さんが余計な事を言ったおかげで、リリアさんが両手を重ねる様に祈りのポーズをとってこちらを見る。そんなことしても何の効果も無いですからね!?
 まぁ勿論リリアさんも本気でやっていた訳では無く、すぐに苦笑して再び歩きだし、俺は原因を作った柚木さんに一言文句でも言おうと思い――そこで気が付いた。

 いつの間にか摘む様に俺の服の袖を持っている柚木さんの指は、明るい笑顔とは対照的に小さく震えていた。
 そうか、つい忘れがちになってたけど、この子は俺達の中で一番年下なんだ。
 だとすれば笑顔の裏に抱えている不安も一番大きいんじゃないかな? 思い返してみれば初日の夜にもすすり泣く声が聞こえてたし……
 そう感じた俺は、震える指には気付かないふりをして小さな声で呟いておく事にした。

「今後ああいうのが出たら後ろに隠れてくれれば良いよ。頼り無いだろうけど……まぁ、何とかするから」
「ッ!?」

 それだけ告げて、少し服を握る力が強くなったのには気付かないふりを続けたまま、歩幅を柚木さんに合わせて歩きだす。
 俺が守ってやるとかカッコイイ事は言えないけど、ヘタレとはいえ俺も年長者で男な訳だし、たまには見栄の一つも張っとかないとね。
 それで、少しでもこの子の不安が軽くなるなら……多少は、柄でもない事も頑張ってみる事にしよう。

「……ありがとうございます……後、さっきの先輩……カッコ良かったです……」
























 多少のトラブルはあったものの、神殿から無事に離れ人も少なくなってきた辺りで、何やら急に周囲が騒がしくなった。

「来た! 時の女神様がいらっしゃったぞ!」

 そんな声が聞こえ、どんどんザワつきが大きくなっていく。
 何で――このタイミング? いや、本当に……

「お嬢様、さっそくミヤマ様の御利益があったみたいですよ」
「……いえ、流石に、こんなとんでもないのを求めていた訳では……」

 拝啓、母さん、父さん――女神にガマガエルに招き猫と着て、ここで再び女神の登場。どうも異世界に来てから俺は――厄介事を引き寄せる様だ。




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