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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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奮発する事にしよう


 風の月24日目。六王祭への招待状を受け取り、その内容に衝撃を受けた翌日……とりあえず頭の痛くなる記念品については、もう考えない事にした。
 一応今度アイシスさんとかに会った時にでも、意図だけは聞いてみる事にするけど……

 そんな事を考えながら日課であるベルのブラッシングを終え、のんびりと広い庭を眺めていると、声が聞こえてきた。

「ご主人様、おはようございます!」
「おはよう、アニマ……今日も仕事かな?」

 いつも通りの黒い軍服風の衣装に身を包み、毛皮のマントを羽織ったアニマが綺麗な敬礼と共に挨拶をしてきた。
 アニマは一応……というか本人の強い希望により俺の従者という事になっているんだけど、特に俺が与えるような仕事も無いので、普段はリリアさんの屋敷の仕事を手伝ってもらっている。

 屋敷の警備を担当していたり、日によっては門番のような事をしている事もある。
 生来仕事に真面目な性格をしている事もあってか、正直俺はアニマが仕事や訓練をしていない姿を見た事が無い。

「いえ、今日は仕事はありませんので、訓練を行うつもりです!」
「……えっと、休んだりは?」
「……休む? ああ、休息の事ですね! はい、『日に4時間』ほど睡眠と食事の為に利用しております!」
「……」

 おかしい、今のアニマの発言は完全におかしい。
 だって今の台詞通りなら、アニマは日に20時間近く働くか訓練してる事になる……いや、どんなブラック企業だ?
 リリアさんは使用人達にもしっかり休暇や休憩時間を設けているし、勤務だってちゃんと交代制……そんな馬鹿げた時間働く事はあり得ない。

「……アニマ、休憩時間とかは何してるの?」
「はっ! 自己鍛錬に当てております!」
「その……休日も?」
「はい! 自分はご主人様の配下として恥ずかしくないよう、常に研鑽は怠っておりません!」
「……」

 いま、確信した……コイツ、リリアさん以上に休まない奴だ。寝る時と食事の時以外は、仕事か訓練って……い、いや、本人が好きでやってるなら良いのかな? 

「アニマは、訓練以外に趣味とか……ないの?」
「……趣味? いえ、自分はご主人様に全てを奉げた身、嗜好に使う時間等必要ではありません!」
「……」

 駄目だコイツ、真面目すぎる。う~ん、俺としてはもう少し肩の力を抜いて欲しいんだけど……難しいな。
 命令すれば従ってくれるだろうけど、この様子だと空いた時間は完全に持て余しちゃいそうだ。

「……アニマ、今日は仕事は無いんだよね?」
「はい!」
「じゃあ、俺これから街に行くから、付き合ってくれない?」
「はっ! 了解いたしました! 荷物持ち兼護衛の任、全霊で遂行いたします!」
「いや、任務とかじゃないから……はぁ」

 そもそも俺にはマジックボックスがあるんだから、荷物持ちとかは必要ないのに……まぁ、とりあえず出かける事にしよう。








 そうして街に出かけた俺とアニマだったが……

「……いや、アニマ。なんでそんな後ろを歩くの?」
「え? し、しかし、従者である自分がご主人様の隣に立つのは無礼で……」
「いや、無礼とかじゃないから……むしろ気になるから、横歩いてくれ」
「……わ、分かりました。ご主人様がそう仰られるなら……」

 本当に護衛というか従者みたいに、俺の後方を離れてついてきていたアニマに声をかけ隣を歩かせる事にする。
 そこでふと、アニマの服装……いつも通りの黒い軍服風の服を見る。

「なぁ、アニマ……その服以外の服って、持ってないの?」
「この服以外、ですか? 同様の服を6着所持しておりますが……」
「よし、ちょっと服を買いに行こうか!」
「え? は、はい! お供します!」

 本当にアニマは仕事と訓練以外は頭にないみたいで、服も同じものを複数所持しているだけらしい。
 偏見かもしれないが、いろんな意味で軍人みたいな奴だ……

「というか、その服しか持ってないって……寝る時とかはどうしてるんだ?」
「眠る時に服は着ていませんが?」

 なんだと……アニマって、全裸で寝てるの? い、いや、まぁ、そういう人が居るのは知ってるし、よくよく考えたら元ブラックベアーであるアニマにとっては、服を着ない方が自然……なのか?
 まぁ、その辺りは本人の希望次第だけど、寝巻を買っても良いかもしれない。

 そうこうしているうちに、服屋に辿り着く。
 別にアリスの雑貨屋に行っても良かったんだけど……最近アリス雑貨屋の服の品揃えは男物ばかり……というか、完全にターゲットを俺に絞って並べているので、女性物の服があまりない。
 作ってもらっても良いかもしれないが、六王祭の関係でアリスも忙しいみたいだし、今回は普通の店で買う事にする。

 そして店の前につくと、アニマは綺麗な動きで休めの姿勢になる。

「それでは、自分はご主人様のお買いものが終了するまで、こちらでお待ちしております」
「……え? いや、なに言ってるのアニマ? アニマの服を買いに来たんだからね。大丈夫、お金は俺が出すから」
「……へ?」

 俺の言葉が予想外だったのか、アニマはキョトンとした表情で固まる。
 そんなアニマを引っ張って店の中に入ると、硬直していたアニマはハッとした表情になり、慌てて首を横に振る。

「ご、ご主人様! 自分にはそのような物など不要です! ましてや、ご主人様にお金を出させるなど……」
「あっ、すみません。この子に似合う服を何着か見繕ってください」
「聞いてすらくれない!?」

 アニマの反応は予想通りだったので、俺は無視して店員に話しかけ服を見繕ってもらう事にした。
 流石はプロと言うべきか、素早く数着の服を選んできてくれて、それを試着してみてくれとアニマに告げるが、アニマは戸惑った表情で自分の手にある服を見つめる。

「……ご、ご主人様……自分に、このような服は……」
「良いからとりあえず試着してみて」
「……し、しかし、自分はお洒落など……」
「……命令」
「りょ、了解しました」

 埒が明かないので滅多に使わない命令を使って試着してもらう事にする。
 試着室の前で少し待っていると、ゆっくりとカーテンが開けられ、黒色を基調としたパンツスタイルの服に身を包んだアニマが現れる。
 上は綺麗な刺繍が施されたシャツで、アニマの黒い髪にマッチした色合いでとても美しい。

 そしてこうして薄手の服に身を包んでみるとよく分かるのだが、アニマは非常にスタイルが良い。
 鍛えられているからか体のラインが引き締まっており、特に足などはスラッと美しく、かと思えば大きな胸の膨らみが全体を際立たせ、熊の耳がアクセントみたいになっていて可愛らしい。

「うん。よく似合ってるし、可愛いよ」
「か、かわっ!? そそ、そんな、じじ、自分が可愛い等……」
「いや、本当に可愛いと思うよ。アニマは美人だしスタイルも良いからね」
「な、なぁ……」

 アニマは自分に女性らしさなど無いと思っている節があるので、こうして容姿を褒めると分かりやすいほど真っ赤になって動揺するので、なんだか愛らしい。
 そんな可愛らしいアニマの反応を楽しんでいると、服を選んでくれた店員さんが近付いて来て口を開く。

「とても素敵な彼女さんで、お客様はお幸せですね」
「なっ!? き、貴様! なにを無礼な――「ええ、ありがとうございます」――ご主人様っ!?」

 単なるセールストークみたいなものであり、下手に否定してもややこしいだけ……というか最悪の場合、俺を侮辱されたと思ったアニマが殴りかかる未来さえ見えたので、適当に合わせて話を切り上げる。
 そして真っ赤な顔でパクパクと声を出せずに口を開いたり閉じたりしているアニマを横目に、放心している隙をついて服を何着か購入してしまう。

 しばらく経ってアニマは放心状態から立ち直り、どこか慌てた様子で財布らしき袋を取り出す。

「ご、ご主人様に支払わせる訳には行きません! 服の代金は自分が……」
「あっ、もう買っちゃったから」
「えぇぇぇぇ!?」
「あっ、そうそう、その着てる服も買ったから、今日は一日その服装で居る事……じゃ、そういう事でさっきまで来てた服をマジックボックスにしまうね」
「え? あ? ご、ご主人様!?」

 完全に話についてこれていないアニマを無視し、手早く軍服風の衣装をしまってしまう。

「さて、次はなにか食べに行こうか!」
「え? こ、これで終わりなのでは……」
「まだまだ、さっ、行くよ」
「ご、ごご、ご主人様!? て、手を……ちょ、ちょっと待ってください! 自分の話を聞いてください!!」

 もうここまでの流れでアニマは強引に連れ回した方がいいとハッキリ分かっていたので、慌てるアニマの手を引いて店の外に出る。

 拝啓、母さん、父さん――アニマは日頃から凄く頑張ってくれてるし、前々から美味しいものでも食べに連れて行こうと思っていたから丁度良い。折角の機会だし、可愛い従者の為にも――奮発する事にしよう。



快人が振り回す側という珍しい構図。
流石にここでアニマの話が来るとは、予想していなかったでしょう……たぶん、きっと……ケモミミ軍服真面目従者可愛いです。

シリアス先輩「……また砂糖回か……」
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