番外編・エイプリルフール大作戦~先輩の誤算~
唐突に表れた……というか、いつも唐突に表れるシリアス先輩のやけに自信満々な作戦とやらによって、俺は早朝から温泉街に連れてこられた。
シリアス先輩が知り合いのヤバい神に作らせたという温泉街は、言ってみれば俺のイメージする通りの温泉街って感じで日本感ある風景は中々いい感じだった。
能動的にシリアスを追い求めるとはなんだったのかと聞きたくなるぐらい、シリアス先輩がシリアスを追い求める様子はなく、普通に一緒に温泉街を観光していた。
干物の専門店に行って、買った干物を店の脇に用意されている七輪で炙って食べたり、やけにレトロな感じのゲームセンターというか、アミューズコーナーというか、そんな場所で遊んだりと結構いろいろなことをした。
シリアス先輩は相変わらずテンションの乱高下が激しく、唐突にわけの分からないことを言い出したと思ったら、急にまともな正論を言い出したりと飽きない方で、なんだかんだで一緒に回るのは騒がしくも楽しかった。
強いて問題を上げるなら、店の店員とかが全部マネキンが動いてるような感じで、受け答えしたりはしてくれるんだが……変な世界に迷い込んだ雰囲気はあった。
なんというか、温泉街は言われた通り作ったけど、店員とかまでは約束してないから造詣には凝らずに適当にマネキンにしたとか、そんな感じがした。
まぁ、なにはともあれシリアス先輩とあちこち楽しく回った後は、温泉宿にやってきた。これもまたどこかレトロな雰囲気のある渋い宿であり、決して大きな旅館というような感じではなく民宿と旅館の中間のような感じではあったが、それがまたなんというかいい雰囲気だった。
部屋の窓からは温泉街が一望できるし、畳のやや古さを感じる和室も風情があってリラックスできる雰囲気だ。
温泉宿では刺身をメインとした美味しい食事をいただき、食後に少し休んでからいよいよメインともいえる温泉に入ることになった。
「な、なにぃぃぃ!? モ、モノローグからのダイジェスト……だと……しかもついに言い訳とか体裁とかもやめて、普通にエイプリルフール二日目にいきやがった!?」
「え? なんですかいきなり?」
「じ、時間が、吹き飛んでやがる……過程を吹き飛ばして……お、温泉に入るという結果にだけ辿り着く……そ、そんな馬鹿なぁぁぁぁぁ!?」
「いや、別に時間は飛んでませんが……」
また唐突になんか変なこと言いだした。
「これはとても悪意ある事態だぞ、快人。温泉街を時間かけて回るという、私の完璧な計画が崩された」
「……回りましたよね? 朝から夕方までたっぷり……」
「うん。回ったし、楽しかった……でも描写的には時間が飛んでるんだ!!」
「……温泉行きましょうか」
「無視する方向に舵切りやがった!?」
だってなんか、この話広げても延々と訳の分からないこと言われそうだし……シリアス先輩の話は七割スルーするというマインドの元、さっさと温泉に移動することにした。
シリアス先輩はブツブツと文句を言っていたのだが、とりあえず準備はして付いてきてくれたので、強引に話を進める手は有効かもしれない。
そして、案内に従って温泉に辿り着いたわけだが……。
『混浴のみ』
そう、でかでかと書かれた看板があった。
「こ、ここで、混浴王の固有スキル、絶対混浴を発動だと……くっ」
「い、いや、この看板に俺は関係ないのでは? あと誰が混浴王で、なにが固有スキルですか……もう一回ピコハンしますよ」
「くっ、そんなスキル使用手段があったとは……仕方ない。今回は負けを認めよう。よし、いくぞ!」
「……はい? あっ、ちょっ!?」
ひとりでなにか納得したように呟いたシリアス先輩は、そのまま俺の手を引っ張って暖簾をくぐる。いやいや、俺の方がまだ状況についていけてないんだけど!?
「ちょっと待ってください、先輩!」
「うん?」
「状況! なにがどうなって、先輩の中でどういう結論に達したのか分かりませんが……俺の気のせいじゃなければ、混浴する流れになってませんか!?」
「そうだけど?」
「えぇぇ……」
なんで「なに言ってんだコイツ?」みたいな顔されているのだろうか? 俺か? 俺の方がおかしいのか? ……いや、違うな。どう考えてもおかしいのはシリアス先輩の方だ。それは確信を持って言える。
あまりにも普通に肯定されたので次の言葉を続けれずに固まっていると、シリアス先輩はなにかを察したような表情を浮かべた……でも、この人の事だから、たぶんなにも察してない。
「……そういうことか」
「いや、違います」
「まだなにも言ってないけど!? ……ふっ、お前の考えは分った。さしもの混浴王も、私ほどのダイナマイトボディの美女と混浴となれば、気恥ずかしさを感じるわけだな!」
「……ダイナマ……えっと……そ、そうですね」
「気を使った肯定止めてくれる? そっちの方が傷つくから、凹凸ほぼねぇだろとか突っ込まれた方がマシだから!!」
まぁ、その美女であるか云々は……どちらかというと美少女という括りかもしれないが、分からなくはない。見た目だけに限定するなら美少女だろう……見た目だけに限定するなら……性格は考えずに……見た目だけに限定するなら、いちおう美少女である。
「……なんかいま、滅茶苦茶失礼なこと考えてない?」
「……」
「……いや、せめて否定はしろよ!」
ダイナマイトボディとかいうなんか死語っぽいけど、なんとなくの意味は響きから理解できる言葉もいまはいいとして……。
「いや、シリアス先輩は俺と混浴して問題ないんですか?」
「え? 全然問題ないけど、なんで?」
「えぇぇ……」
だから、なんで俺の方が「コイツ変なこと聞いてくるな」みたいな顔されなければならないのか、大変に理不尽である。
マキナ「シリアス先輩との混浴を行うためには、シリアス先輩からの好感度が96以上である必要があるよ。愛しい我が子の場合は、シリアス先輩からの好感度は5000兆だから、まったく問題ないね」




